第126夜 ≠アニメ、もう1つの“反逆”に熱くなれ…『スクライド』 | 漫画のレビュー&随想 | 100夜100漫

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第126夜 ≠アニメ、もう1つの“反逆”に熱くなれ…『スクライド

      2014/01/04

「運命−−−−これほど反逆し甲斐のある相手もいねーーな/そう思うだろ? あんたも!!」


スクライド 1 (少年チャンピオン・コミックス)

『スクライド』黒田洋介(スタジオオルフェ) シナリオ、戸田泰成 漫画、秋田書店『週刊少年チャンピオン』掲載(2001年6月~2002年4月)

 21世紀初頭、神奈川県横浜を中心に原因不明のエネルギーによる大規模な隆起のため、半径約30kmにわたる地域が日本本土から隔絶された。文明が破壊され、無法地帯となったこの地域は「ロスト・グラウンド」と呼ばれ、ごく一部の市街ではかろうじて秩序が守られているものの、ロスト・グラウンド生まれの約2%の新生児に発現し出した「アルター能力」のために、大半の地域では暴力が支配していた。
 周囲の物質を、意志の力で原子レベルまで分解・再構成して自らを象徴する特殊能力を発揮するアルター能力。「反逆者(トリーズナー)」の通り名を持つアルター使いカズマは、「自らの弱い考えに反逆する」という独自の信念を貫き、弱者をいたぶるアルター使いを相手に、殴ることに特化した右腕のアルター、シェルブリットを叩き込む。
 本国は、カズマを含む「ネイティヴ・アルター」の暴威はロスト・グラウンドの秩序回復の妨げになると判断、ロスト・グラウンド内のモラル回復を目的としたアルター能力者による治安部隊「ホーリー」を設立し、これに対応した。
 自らの価値観と実力を頼りに、天涯孤独の少女、由詑かなみ(なた・——)を保護しながら暮らすカズマの前に、ホーリー隊員にして自律稼働型アルター絶影(ぜつえい)の使い手、劉鳳(りゅうほう)が立ち塞がる。目指すものが重なりながら、相反する信念のために激しくぶつかり合う2人。ネイティヴ・アルターによるホーリーへの抵抗組織「ロウレス」や、ホーリー内部で密かに動き出す野望、それぞれが抱く思い、過去、敵意、愛が、カズマの反逆に力を与える−−。

ジョジョ絵+萌え絵
 別メディアの漫画化(コミカライズ)作品については、100夜100漫では原則として言及しないこととしている。原作をただなぞるだけの漫画化では、漫画独自の要素が希薄となり、何を書こうとしてもそれは原作のアニメなりゲームなり小説なりに言及していることになってしまうため、というのがその理由だが、逆に云えば、漫画独自の要素があるのならば、それは言及の対象になるということだ。
 もって回った云い方をしてしまったが、本作はそんな、テレビアニメの企画が先行し漫画化された(発表自体は漫画版が先)作品である。そしてもちろん、アニメのトレースとして片付けられるべき作品ではない。漫画化当初の打ち合わせで、そうとう「自由にやっていい」という話があったようで、シナリオ担当、作画担当が持てる力を注ぎ込んだ濃度と密度を持った作品と云えるだろう。
 アニメも漫画も熱過ぎるほどに熱い作品だが、漫画の特徴としては、やはりまず作画がすごいと云いたい。キャラクターの個性や信条を象徴するかのような機能を発揮するアルターという能力自体、『ジョジョ』(第21夜第70夜)のスタンドを思わせる設定だが、作画的にもジョジョ立ちっぽい構図や擬音、表情の描き方などを見ることができる。単なるパクリではなく、カズマと劉鳳という2人の男の激突を中心とした熱い物語を描いてみせるために必然的に行き着いた表現と思える。反面、女性キャラクターは『ジョジョ』的な濃い表現とは対極的に、若干荒めながらもシンプルかつ“萌え”を含んだ絵柄で、ギャグシーンではカズマの作画もポップなデフォルメを見せてくれる。個々の要素を取り出すと、どうにも不調和な作画ということになりそうだが、逆にそれが良いメリハリと感じられるところに、作画担当の手腕が光っている。

“反逆”の効用
 ストーリー展開もアニメ版と大きくことなるため、アニメを観た人にも読んでもらいたい漫画であるが、ストーリー以上に、シナリオというか台本というか、随所での台詞回しが印象に残る。「イエス・アイ・ドゥー(はい、そのとおりです)」など、ここにも『ジョジョ』的な匂いを嗅ぎ取れるものの、それ以上に独特さを感じるシーンが多い。そうしたシーンの大半はカズマが敵と戦うさなかでのやり取りなのだが、信念をかけた男同士の対話なのに、それがどこかズレていて、思わず笑ってしまうのだ。『バクマン。』での表現を借りれば“シリアスな笑い”の範疇に入るのだろうが、この漫画のキーワードである「反逆」という言葉が、こうしたシーンに独特な味わいをもたらしていることは明らかだ。
 そんなシーンが相当数に上るため、総体としてギャグとして受け取られてしまう可能性もなきにしもあらずだが、自分はシリアスな作品として読了することができた。ひとえに「反逆」という言葉の効用ではないだろうか。カズマや劉鳳の言動は、理屈で考え出すと突っ込みどころは色々考えてしまえるのだが、それをさせない勢いが、この漫画にはある。カズマの云う「反逆」という言葉には、生きることに真摯であろうとする意志が溢れている。それは読者に避けようのない自省をもたらすだろうし、翻って読者自身の生に、時には運命に反逆する力を与える源にもなっているはずだ。

*書誌情報*
 絶版ではあるが、古書店ではそこそこ見かける。ブックオフの100円棚が狙い目か。
☆通常版…新書判(17.2 x 11.2cm)、全5巻。絶版。

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