「どーせ死ぬなら最後まで納得いくまで戦って死んでやる!!/自分の行動に後悔だけはしたくねー!!」 『スプリガン』たかしげ宙 原作、皆川亮二 作画、小学館『週刊少年サンデー』→『週刊少年サンデー増刊号』掲載(1989年2月~1996年1月) かつて地球上にはいくつ……
「 人間賛歌 」 一覧
第13夜 下衆な博士と幼女なロボの妙味…『無敵鉄姫スピンちゃん』
「まてよ…てことは…/エロボットのボディーが完成したら…/スピンがエッチな事するって事!?」
『無敵鉄姫スピンちゃん』大亜門 作、集英社『週刊少年ジャンプ』掲載(2004年3月~6月)
ロボットが社会に浸透しつつある21世紀。実家から離れたお嬢様女子高に進学する為、武井透瑠(ぶい・とおる)はレンタルロボット店を経営する祖父の家に同居するため訪れる。祖父の一緒(かずお)は、優秀なロボット研究者でありながらその才能を「どんなエッチな要求にも応えてくれる」エロボットの製作に注ぎ込むという大変残念な性格の持ち主だった。
そんな祖父が使った唯一の自律思考型AI搭載の幼女型ロボット、スピン。そんなスピンとともに、エロジジイの祖父、次々あらわれる変態とダメロボットにツッコミを入れ続ける、透瑠の苛酷な日々が続く。
ダメ人間讃歌
この作者としては今のところ最大のヒット作である次作『太臓もて王サーガ』(第87夜)と、基本的な雰囲気はほぼ同じである。スピンも透瑠も高校生として『サーガ』に登場することを考えると、むしろ『サーガ』を後日作品と考えることもできる。下ネタとパロディを織り混ぜ、ツッコミ役をフル稼働させる芸風はこの頃から洗練されている。眉をひそめる読者もいるかもしれないが、この種のギャグ漫画を嫌味なく描ける描き手は貴重だ。おそらく、対象を見下していないからだろう。作者自身をもネタとして扱う姿勢には、自分だけを棚上げしない誠実さを感じる。
作者を含め、本作の登場人物は透瑠を除いた誰もがおかしい。ダメ人間とまではいかないかもしれないが、周囲に引かれる言動が多いのは確かだ。作者はしかし、ギャグという形をとりながら彼らを自由に遊ばせているように思う。思ったことを正直に表明できない実生活に対して、人間の実態をさらけ出させるという意味において、確かに(ただし『ジョジョ』などとはまるで逆向きの、ダメな)人間讃歌なのだ。
幼女ロボの意味
それはそうと、スピンが幼女という年齢設定であるのはなぜなのだろうか。一緒のレンタルロボット屋には多数の女性型ロボットがあり、それらのボディに自律思考型AIを組み込めば、彼の望みを叶える近道になっただろう。
本作のような内容で更にスピンが大人の女性型だと、少年漫画としていささか不適切なことになるから(そういえば『Dr.スランプ』でも則巻アラレは13歳の設定だった)かもしれないが、意図はどうあれ、下ネタとパロディにまみれた本作では、スピンの幼女性は一服の清涼剤のような役割を果たしている。女子高生の透瑠からすれば歳の離れた妹のようでもあり、また一緒を含めた3人の日常生活は、擬似家族のようでもある。透瑠がスピンの心配をして一緒に相談する下りなどは、ギャグばかりの本作において素の3人を活写したように読めて赴き深い場面である。このスピンの幼女性が全体にほんわかとした雰囲気を作り出しており、『太臓もて王サーガ』のひたすら尖がった雰囲気とはまた違った面白さがあると云えよう。
*書誌情報*
☆通常版…B6判(17.8 x 11.4cm)、全1巻。あとがき漫画あり。電子書籍化済み(紙媒体は絶版)。
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第6夜 生者への冥い欲求と暗鬱の中で閃く生命の光刃…『武装錬金』
「死んでもやっちゃいけないコトと、死んでもやらなきゃいけないコトがあるんだ!!」 『武装錬金』和月伸宏 作、集英社『週刊少年ジャンプ』掲載(2003年6月~2005年4月) 高校2年の武藤(むとう)カズキは私立銀成(ぎんなり)学園の寄宿生。ある夜、怪物に襲われて……