「例えば明治期/日本人は何を旨いと思って喰っていたのか?/そこにどんなドラマがあったのか?/それは今どこで食えるのか?/それは今も旨いのか?/…とかね」 『文豪の食彩』五十子肇観→壬生篤 原作、本庄敬 作画、日本文芸社『別冊漫画ゴラク増刊 食漫』掲載(2009年12……
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第155夜 親愛と憎悪、その全てで向き合おう…『含羞(はじらひ)−−我が友 中原中也−−』
「小林ィ」「はっ はい」「おまえ“幸福”ってやつを知ってるかい」「“幸福”……ですか」「ああ そうだ/おまえが文章を書くのも/おれが詩をうたうのも/心の底で幸福をさがしているからなんだよ/あくせく働くのも/旅に出るのも/悩んだり/笑ったり/人生について考えたり/悲しみにうちひしがれるのも/心の奥で幸福を求めているからなんだ」
『含羞−−我が友 中原中也−−』曽根富美子 作、講談社『コミックモーニング』掲載(1989年7月~1990年7月)
大正14年4月。18歳の中原中也(なかはら・ちゅうや)は、杉並の馬橋に23歳の帝大生、小林秀雄(こばやし・ひでお)を訪ねた。会うなり議論をふっかけられ、目を白黒させる秀雄。しかし同時に、詩作にかける中也の鬼気迫る姿勢に触れ、強く心惹かれるのだった。
批評と詩。正反対の資質に恵まれた2人の関係は、ともに酒を飲むことと、挑発する中也に精神を削られる秀雄という形で続いていく。
中也と同棲するやす子をめぐる波乱、戦争の足音、それぞれの結婚。時は移り行き、秀雄は気鋭の評論家として認められ、中也は詩と生活のただ中に疲弊していく。既に中也に残されたものは、あまりに乏しかった。万感をもって中也に対する秀雄の心に、いま去来するものは何か−−。