【探訪】『シャーリー』2巻発売記念 森薫 原画展…紅茶の香りと心にくい本の匂い
2018/07/20
このほど実に11年ぶりで2巻が刊行された森薫『シャーリー』。この機会に合わせ、森先生による『シャーリー』の原画展が催されていると聞き、開催期間もそろそろ大詰めながら見に行ってみた。
(なお、『シャーリー 2』自体についての記事は以下の通り。
【一会】『シャーリー 2』……きっと沢山ある日々のうちの8片)
やってきたのは19~20世紀初頭の欧州に次いでメイドの数が多いとされている(?)秋葉原。最近では企業が進出してきたためか飲食店も充実し、趣味の街という側面だけではなくなってきているようだ。
中央通り沿いのコミック・同人誌ショップCOMIC ZINでは、ウインドウに大きなシャーリーが。といっても、原画展はここではない。更に中央通りを北へ進む。
やってきたのは、秋葉原カルチャーカフェ私設図書館schatzkiste(シャッツキステ)。この館内で原画展が開催されており、30分につき500円の施設利用料のみで閲覧することができる。
同館ではメイドさんが淹れてくれる紅茶(セイロンティー)を自由に飲め、食事メニューもあるが、普通のメイド喫茶と一味違うのは、メイドさん達がセレクトした書籍を蒐集している点。書籍に限らず秋葉カルチャーを幅広くフォローしている由。
というわけでお茶で一服した後、さっそく原画を閲覧開始。
まずは、『シャーリー』1巻の表紙として描かれただろう1枚。既に書き込みがすごい。
左右に眼をやれば、1巻の併録作品「僕とネリーとある日の午後」「メアリ・バンクス」の登場人物たちも顔を覗かせている。
続いて2巻表紙の遠景となった1枚。赤を基調とした豪奢な味わい。書き込みも1巻時に比べると増加しているか。
2巻表紙の近景となったシャーリー。表紙では腰から下がトリミングされている。
1巻より、メイド服を着て感動するシャーリーのくだり。裾の翻りが鮮やかな名シーンかと。
2巻より、出がけで慌ただしいベネットのシーンと、ハイヒールに憧れるシャーリーのシーン。反射で見にくい点、平にご勘弁を。
紅茶に加えて、『シャーリー』ゆかりの特別メニューをオーダー。マッシュルーム入り鳩のパテとティプシーケーキセット400円(ティプシーケーキのみで400円のメニューもあり)。いずれもベネットの好物として、シャーリーの面接のシーンで登場する。
ティプシー(tipsy=ほろ酔い)ケーキはその名の通りウイスキーをふんだんに使ったもの。もちろん美味だけど、苦手な方のために酒精抜きも可能とのこと。
書棚には様々な本が。定期的に本が入れ替わる中央暖炉の上は、今回の原画展を受けてメイド関連書籍が展示されていた。そういえば『小公女セーラ』の主人公セーラは、しばらく学院のメイド待遇だったか。。
それ以外の本棚も、ファンタジーの資料として定番の新紀元社Truth In Fantasyシリーズや、斬新な説明文で「新解さん」と親しまれている新明解国語辞典、古典SFの名著に流行の漫画まで、いわゆる“わかってる”セレクションで一杯だった。
同人誌にまで目配りされているのは、さすが秋葉原の図書館といったところ。
原画も店内も、紅茶に料理も堪能し、1時間で退出。レジで森先生書下ろしの記念ペーパーを頂けた(1来館につき1人1枚)。原画展終了後も9月末まで配布されるとのこと。
美麗な原画の魅力はもちろんのこと、開催場所のシャッツキステ自体の居心地がよく、立ち去り難かった。『シャーリー』そのままに紅茶の香りを楽しめる館内は、作品の中と外が曖昧になるような不思議な感覚を味わえるし、それでなくとも本棚の品揃えがいちいち気が利いていて、本好きなら間違いなく愉しめる空間だろう。
原画展は今月21日までなので今週末が最後の機会。興味のある方はイベント詳細(シャッツキステイベント一覧内http://blog.livedoor.jp/schatz_kiste/archives/8508805.html)を確認の上、お見逃しなく。