漫画のレビュー&随想 | 100夜100漫

――夜毎、お話ししましょう。貴方が私を縊(くび)らぬ限りは。

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「 青春 」 一覧

第163夜 菌と人間、遠いけれども楽しい学びの道…『もやしもん

「この学校はスゴいよ/いろんな人がいろんな意志で支えあってみんなで遊んでるんだね」


もやしもん(13)限定版 (講談社キャラクターズA)

『もやしもん』石川雅之 作、講談社『イブニング』→同『月刊モーニングtwo』掲載(2004年7月~2014年1月)

 この春、晴れて東京の某農業大学(これが正式名称)に入学した沢木惣右衛門直保(さわき・そうえもん・ただやす)は、味噌や醤油などの醸造食品の製造に用いられる種麹(たねこうじ)を扱う種麹屋の次男坊。彼は、普通は顕微鏡でなければ見ることのできない菌やウィルスを、デフォルメされた人の指ほどのキャラクターとして認識し、会話もできれば指で摘むこともできるという超能力を持っていた。
 一緒に入学した幼馴染で造り酒屋の息子、結城蛍(ゆうき・けい)とともに、直保はまず、祖父の旧友にして某農大教授の樹慶蔵(いつき・けいぞう)の研究室を訪ねることにする。2人を待っていたのは、菌類によるテラフォーミング(惑星環境改変)を提唱し、農を語り出すと止まらない、ちょっとヘンな樹教授だった。樹が新たに構える発酵蔵(はっこうぐら)を拠点に、直保と蛍、院生の長谷川遥(はせがわ・はるか)と、ただ1人の樹ゼミ生の3年生、武藤葵(むとう・あおい)、直保の能力でぼろ儲けを企んでは失敗する学部2年の美里薫(みさと・かおる)と川浜拓馬(かわはま・たくま) 、除菌大好きな1年の及川葉月(おいかわ・はづき)たちの、菌と「かもし」の日々が始まるのだった。
 キビヤックにホンオフェ、シュールストレミングなどオリンピック級の臭いを誇る食べ物。味噌に醤油、味醂に酢などの調味料。そして焼酎、ワイン、ビールに日本酒といったアルコール類。食べ物以外にもパンデミカルな感染症まで、時には世界を巡って菌たちによる多種多様な活躍ぶりに触れつつも、自由でお祭り好きな某農大の学風もあって常にお祭り騒ぎ、時には海外にまで飛び出して、少しばかりは将来を思ったりもしつつ、彼らの1年間は過ぎゆく――。

(さらに…)

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【一会】『銀の匙 11』……年度終わりと、愛すべきシビアさ

 長いようでやっぱり長かった、エゾノーでの1年が終わろうとしています。  思えばハチも随分たくましくなりましたねー。自分のご飯は自分で守る、が染み付いているあたり、連載開始当初とは一味違う、強い生命力を感じます。  バレンタイン投下作戦とか闇鍋とか、楽しいエピソードを……

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第157夜 芸術も友情も、無条件だからいい…『ぼくらのフンカ祭

「なあ…/オレ多分、一生忘れねーわ。/この光景。/ありがとな桜島。/オレをさそってくれて。」 『ぼくらのフンカ祭』真造圭伍 作、小学館『週刊ビッグコミックスピリッツ』掲載(2012年3月~同7月)  地元の東金松(かねまつ)高校に入学した富山剛士(とやま・たけし)……

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第151夜 「楽しさ」を原動力に、痛くっても、進め…『ハックス!

「「もうね/この人/頭おかしいんじゃないかってくらい」/「楽しいことだけ考えたらいいんですよ」「大変ですけど/それでアニメはうんと楽しくなります」」「やりましょう/こうしてう…/お/いる場合ではないですよ私たち!」 『ハックス!』今井哲也 作、講談社『月刊アフタヌー……

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第150夜 京言葉が語るボケとツッコミ、小さな絆…『京洛れぎおん

「奴らと戦う力を持っていても小学生だよ/本気の力をモロに受ければ壊れてしまう/体もまだ未熟なのに/使命だから行くんだ/えらい子なんだよね」「別のイミで俺がえらいんですけど!?」 『京洛れぎおん』浅野りん 作、マッグガーデン『コミックブレイドBROWNIE』→『月刊コ……

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第149夜 中学教師と生徒達、全身全霊でぶつかります…『鈴木先生

「問題児にも/カミサマにも/手のかからないいい子にも囲まれて−−−−/回想モードは終了だ!!/今日も/こいつらに/全力で教えよう/めいっぱい クールに…/せいいっぱい 真摯に-−−−」 『鈴木先生』武富健治 作、双葉社『漫画アクション』掲載(2005年5月~2011……

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【一会】『夜とコンクリート』……自然と人工物を並べる美しさ

 標題作。不眠気味の建築士の、少し疲れてやがて眠れる一夜。  「夏休みの町」。暇暇な大学生たちと、丘の上の戦闘機とお爺さん。からの、反転。  「青いサイダー」。つんけんした母親に色々言われながらも、空想に遊ぶ僕少女。と、屋上のおじさん。  「発泡酒」。その時の“本当……

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第147夜 ぐちゃぐちゃな、自意識と外界の間で…『空が灰色だから

「物心も付いてない頃/家族で出かけた遠い町 太陽光を浴び黄金色に燃えていた麦畑に今度は私が連れていくから/火が鎮まるまでお話しよう/その後は一緒に流れ星を探そう/古旅館の頼りない窓を優しく開けてせーので見上げた夜空には/星なんてひとつもなくて」 『空が灰色だから』阿……

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【一会】『まるせい 1』……成年漫画描きの青春と苦闘

 刊行から少し経ってしまいましたが、面白かったので書きます。  タイトルの「まるせい」とは、「○」に「成」と書く、いわゆる成年向け漫画、ようするにエロ漫画のこと。『100夜100漫』は中高生くらいから上の人が読むだろうな、と思って書いていますので、基本的に成年漫画は……

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第144夜 死は炙り出す。誰もが“誰かの為の誰か”と…『潔く柔く

「あの人のことを/とてもよくわかっていますか?/あの人を……/…とてもよく………わかりたいです」「そりゃあ無理だ/とてもよくわかるなんて/他人の傲りだ/そんなこと言う奴は信用できない」 『潔く柔く』いくえみ綾 作、集英社『Cookie』掲載(2004年1月~2010……

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