漫画のレビュー&随想 | 100夜100漫

――夜毎、お話ししましょう。貴方が私を縊(くび)らぬ限りは。

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「 勝負 」 一覧

第80夜 目指せ最強…『陣内流柔術武闘伝 真島クンすっとばす!!

「世界最強の格闘家(オトコ)の夢はどうした――!?」


真島クンすっとばす!! 01―陣内流柔術武闘伝 愛蔵版 (ニチブンコミックス)

『陣内流柔術武闘伝 真島クンすっとばす!!』にわのまこと 作、集英社『週刊少年ジャンプ』掲載(1995年2月~1998年1月月)

 戦国時代に発祥し、仙台藩御留流(せんだいはんおとめりゅう;門外不出はもちろん、藩外にも不出の流派)とされた古流柔術、陣内流(じんないりゅう)。11代目宗家である望月土武郎(もちづき・どぶろう)の押しかけ弟子の高校生、真島零(まじま・れい)は、陣内流の技の数々で現代の格闘技界に殴り込んでいく。目指すは世界最強の格闘家(オトコ)。それは、零の敬愛する歴代最強と云われる8代目宗家・城之内将士(じょうのうち・まさし)を超えるための闘いでもあった。
 空手、柔道、テコンドー、プロレス、ムエタイ…。師や友人に支えられ、零は幾つもの異種格闘技戦を制し、その潔い戦いぶりは現代の武士(もののふ)として人気を博す。やがて、格闘技界を牛耳る不穏な影を感じた零は、これを叩き潰し最強となるため、更なる激闘に身を投じていく――。

それぞれの美学
 自分が古流武術を少しばかり修行したのは、先にも『チャンバラ』(第68夜)で書いたようにひと昔前だ。現代武道にあまり魅力を感じず、そこに折からの格闘ゲーム・格闘技ブームもあって古流に入門するに至ったわけだが、そうした自分の行動原理は本作の考えと通底しているように思う。煎じ詰めればそれは「半ばスポーツ化した今の格闘技って本当に強いのか?」という疑念だ。その問いに答えるべく、作者は、最強を求めて古流柔術を修めた零と、現代格闘技の使い手達とを対決させる。そうした意味での構図は『チャンバラ』、ひいては『セスタス』(第59夜)に似ている。
 零はもちろん強いが、激突する面々もただの噛ませ犬ではない。どの人物も己が流儀と美学をもって立ちはだかる。空手には空手の、プロレスにはプロレスの、ムエタイにはムエタイの強さと格好よさがあるのだ。異種格闘技というのは、ある意味で異なる美学の激突であって、決着後の清々しさも含め、本作の闘いはさながら戦国時代の一騎打ちを思わせる。

日本文化で闘う
 自分も含め、読者は真剣勝負というものを知らない人が大多数だろう。本物を知らない読み手に対し、本作のような本物志向の格闘漫画はどうやってリアリティを引き出してみせるのか。『グラップラー刃牙』(第14夜)では作者の異常ともいえる闘争への(解剖学や栄養学の範疇まで踏み込んだ)興味でそのハードルをクリアしていると思うが、本作はただ、戦国時代に端を発する古流柔術の技術体系を細密に述べることで補おうとしている。それだけでリアルさを感じさせるのは普通のセンスではないだろう。
 陣内流が擁する技の数々には「鉄菱(てつびし)」「鬼会(おにだまり)」「百枝刺(ももえざし)」など由来を想起させる名が付けられ、技の強力さ、正統性を示す上に、大袈裟に言えば武技にさえ情緒溢れる命名をする日本文化の豊饒さを薫らせてくれる。その鮮やかさは本作独特のものである。時に漫画的過ぎる部分も(それに作者がプロレス好きだからでもあろう、コミカル過ぎて笑ってしまう場面も)あるが、こうした技を駆使しての闘いは、スタイリッシュな作画も相まって華々しい。この点も、『刃牙』シリーズで主人公が「トータルファイティング」という無国籍な流儀で闘う点と好対照をなす。いわば、真島零は日本文化で闘っているのだ。
 終盤は惜しくも打ち切り気味で終わってしまった本作だが、現在、続編に当たる『真島、爆ぜる!!―陣内流柔術流浪伝』が日本文芸社『週刊漫画ゴラク』で連載中である。引き続いて読んで、溜飲を下げるのもよいだろう。

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第78夜 戦後復興期の日本が牌に映る…『哲也-雀聖と呼ばれた男-

「…そうさ/俺達は汚ねえ世界にいるんだ/だけど俺達 玄人は/ここでしか生きられねえのさ…/なァ…/房州さん…」 『哲也-雀聖と呼ばれた男-』さいふうめい 原案、星野泰視 作、講談社『週刊少年マガジン』掲載(1997年33号月~2004年12月)  太平洋戦争での日……

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第76夜 サッカーごしに見える、少年達の心の形…『ホイッスル!

「ボールをけってるだけで幸せなのに/どうして勝ちたいんだろうね?/それぞれいろんな熱(きもち)をボールに託して試合をする/負けたらそこで途絶える/勝てば先につながる熱(きもち)/途絶えさせてしまった熱(きもち)に勝った側が返せることは/次もまたその次も途絶える時がくるまでは/自分……

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第73夜 みせろ昭和魂! 全力のケンカ大活劇…『あまいぞ!男吾

「質問!/巴男吾にとって奥田姫子とはなんですか?」「ライバルってとこかな…。」「アリガト、男吾くん!」 『あまいぞ! 男吾』Moo.念平 作、小学館『月刊コロコロコミック』掲載(1986年4月~1992年7月)  巴男吾(ともえ・だんご)は元気とケンカの強さが自慢……

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第68夜 古流VS剣道にみる“強さ”…『チャンバラ 一撃小僧隼十

「…なにをビビッちょるんかオレは…/戦を挑むんやったら怖いのは当たり前やろ…/それでも戦った男がそこにおる!!/…ふるえなんち…/噛み砕け!!/オレも“鷹津”やろうが!!!」 『チャンバラ 一撃小僧隼十』山田恵庸 作、講談社『週刊少年マガジン』掲載(2002年10月……

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第59夜 真の自由を問いかける、古代の拳闘…『拳闘暗黒伝セスタス

「アップライトのベタ足/右拳は槍/左拳は盾/古代拳闘には体重(ウエイト)制も回戦(ラウンド)制も存在しない/採点(ポイント)制の判定など概念さえ無かった/時間無制限・完全(K・O)決着が唯一の掟(ルール)だ」 『拳闘暗黒伝セスタス』技来静也 作、白泉社『ヤングアニマ……

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第58夜 剣をクラブに持ち替え闘う騎士達…『ライジングインパクト

「お前は なんでゴルフやってんだよ?」「おもしーがら」「じゃあ/世界一の飛ばし屋に なりたいっていうのは?」「そりゃおめえ/誰よりも球かっとばしたら気持ちいーべ?」 『ライジングインパクト』鈴木央 作、集英社『週刊少年ジャンプ』掲載(1998年12月~2002年2月……

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第41夜 豪華で特濃。中華をめぐる仁義なき戦い…『鉄鍋のジャン!

「料理は勝負だ! 勝てばいいんだ!! 」 『鉄鍋のジャン!』西条真二 作、秋田書店『週刊少年チャンピオン』掲載(1994年12月~2000年3月)  国内最高峰といわれる東京銀座の五番町飯店に、謎の挑戦者がやってきた。飯店のものよりも美味しい炒飯を手際よく作った、……

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