100夜100漫

漫画の感想やレビュー、随想などをつづる夜

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「 旅 」 一覧

第190夜 海を渡った会津者たちの夢の果て…『White Tiger〜白虎隊西部開拓譚〜』

「黄金を夢見た者も/故国で行き場をなくした者も/覚悟して海を渡りここに行きついた/ここで生きていくほかないのだ/異国で生きるとはそういう事だ」


White Tiger~白虎隊西部開拓譚~ 1 (ヤングジャンプコミックス)

White Tiger白虎隊西部開拓譚〜』夏目義徳 作、集英社『グランドジャンプ』→「GRAND JUMP WEB」掲載(2013年1月~2014年2月)

 1868(明治元)年、戊辰戦争の一局面である会津戦争において、会津藩は敗北した。幕府への忠節を守って戦った会津に対し、しかし戦後の仕打ちは苛烈なものとなる。
 略奪が繰り返される城下で、砲術(銃)の才能を持ちながらも戦えず、腹も切れなかったことに慚愧の念を抱く白虎士中二番隊隊士、白石鶴之助(しらいし・つるのすけ)は、同じ年頃の少年少女に出会う。白虎寄合二番隊隊士で剣に秀でる安藤英虎(あんどう・ひでとら)、そして鶴之助の恩師である会津藩軍事顧問である平松武兵衛(ひらまつ・ぶへい)ことヘンリー・シュネルの屋敷で子守りをしていた少女、おけいである。
 無残な姿となった会津に心を痛めたシュネルは、アメリカに会津の町をつくる事を提案、その移民団へと鶴之助たちを誘う。旧藩士の桜井松之助(さくらい・まつのすけ)、大工の増水国之助(ますみず・くにのすけ)、商人や農民たち、およそ20人での船出だった。
 船旅を終え、アメリカへと渡った一行だったが、そこでも困難の連続が彼らを襲う。多様な人種が入り混じる社会の中、それをめぐって巻き起こる事件を経て、鶴之助の銃の才は覚醒していく。
 しかし、ようやく建設された開拓地“若松コロニー”での暮らしは厳しく、追い込まれていく移民団。起死回生を狙った鶴之助と英虎の運命は、皮肉なものへと捻じれていくのだった。
 荒野をさまよう白き虎たちの夢の果ては、どこか――。

(さらに…)

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【一会】『ギガントマキア』……全存在を巻き込んだリングのただ中で、咆える

 『ベルセルク』があまりにも有名な、というか、それ以外の作品はこのところ手がけておられなかった三浦健太郎氏ですが、数えてみれば今作『ギガントマキア』が実に24年ぶりとのこと。武論尊氏の原作で書いた『ジャパン』以来ということになるんでしょうか。24年という年月を思え……

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第160夜 少女の帰還を導くのは、凄惨な楽園の幻視…『クーの世界』

「今日もまた/クーの世界で目覚めるんだろうなあ/どうせ夢がつづくなら/ずっとクーの村で暮らしたいなあ/家捜しの旅なんて無駄だよって/夢の中の私に言ってあげられたら……」 『クーの世界』小田ひで次 作、講談社『月刊アフタヌーン』掲載(1999年11月~2000年11月……

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第133夜 奇妙奇天烈な食べ物と変な色気で星3つ…『奇食ハンター』

「・・・・・・・・・・残していい?」「ヌ!?/逃げるな! 奇食ハンターとして恥ずかしくないのかッ!!」「な・・何? その奇食ハンターっていうのは?」 『奇食ハンター』山本マサユキ 作、講談社『週刊ヤングマガジン』掲載(2007年6月~2010年3月)  旧車漫画『……

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第115夜 江戸前の七兄弟、親を偲んで旅路かな…『虹色とうがらし』

「つまりなにか?/おれたちは一人の男があっちこっちの女に手をだして産ませた子どもってわけか?」「人ぎきが悪いな、それぞれみんな本気で愛しあった結果じゃ。/それが証拠に同じ年のやつは一人もおらん。」「ふざけるない!」 『虹色とうがらし』あだち充 作、小学館『週刊少年……

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第114夜 決して相容れず、けれどもかけがえのないもの達…『蟲師』

「蟲……?」「ああ/陰より生まれ/陰と陽の境にたむろするモノ共のことだ/それが見える者は少ないが/この世界の隅々にまで/それはいる」 『蟲師』漆原友紀 作、講談社『アフタヌーンシーズン増刊』→『月刊アフタヌーン』掲載(1999年1月(読切)~2008年8月)  蟲……

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第99夜 破滅に挑む、人の悲しみと儚さか…『百億の昼と千億の夜』

 2013/08/11  100夜100漫, , , ,

「神と戦うのか」「おお そうとも/わたしは相手がなに者であろうと戦ってやる/この わたしの住む世界を滅ぼそうとする者があるのなら/それが神であろうと戦ってやる!」 『百億の昼と千億の夜』光瀬龍 原作、萩尾望都 作、秋田書店『週刊少年チャンピオン』掲載(1977年7月……

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第86夜 旅人が迷い込む、叙情と禍福と幻想の万華鏡世界…『紅い花』

「あのみごとな紅い花はなんというのだろう」「知らん」 『紅い花』つげ義春 作、青林堂『ガロ』掲載(1967年10月[表題作])  林と川のある里にやってきた釣り人の主人公は、親の代わりに茶屋を切り盛りするキクチサヨコに出会う。彼女の元同級にあたるシンデンのマサジは……

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第83夜 縁(えにし)の物語は出雲に始まり出雲に果つ…『八雲立つ』

「“気”よ…!/大いなる気よ…!!/我に応えよ!/我に依り憑きてその力を貸せ!!」 『八雲立つ』樹なつみ 作、白泉社『LaLa』掲載(1992年5月~2002年7月)  東京の大学生、七地健生(ななち・たけお)は、先輩に押し付けられた劇団の舞台取材のアルバイトとし……

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第82夜 旅の最果てを目指し、少年と彼女は行く…『銀河鉄道999』

「あなたは機械の体をくれるという星へ行くのね/もし私をいっしょにつれていってくださるならパスをあげるわ/私と同じパスをあげるわ」「パス?」「そう/パスよ/無限期間有効の銀河鉄道の定期よ」 『銀河鉄道999』松本零士 作、少年画報社『少年キング』掲載(1977年1月~……

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