漫画のレビュー&随想 | 100夜100漫

――夜毎、お話ししましょう。貴方が私を縊(くび)らぬ限りは。

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「 悲壮 」 一覧

第130夜 路地裏の泥臭き死闘と不良達の純粋さ…『ホーリーランド

「はっきり言う/今のままじゃあオマエはもう通用しねえ!!!」「それでも…/それでも僕は街にいたい!/今戻ったら−−−/今戻ったら僕は一生−−−−/あそこから出られない気がする」


ホーリーランド 1 (ジェッツコミックス)

『ホーリーランド』森恒二 作、白泉社『ヤングアニマル』掲載(2000年10月~2008年6月)

 東京、下北沢(しもきたざわ)界隈。この盛り場を闊歩する不良たちの間で、とある噂話が囁かれていた。“不良(ヤンキー)狩り”。このところ、ボクシングのワン・ツーを駆使し、喧嘩自慢の不良たちを血祭りに上げていく存在がいるというのだ。色めき立つ路上の不良たちは、“不良狩り”を探し始める。
 高校1年生の神代ユウ(かみしろ・――)は、華奢な体つきと気弱な性格から、中学時代はいじめを受けて不登校だった。高校生になった今も、街を歩けば不良に絡まれる。ただ違うのは、今は彼が無力ではないことだ。
 連れ込まれたトイレで左右の拳を一閃し、ユウは相手を這いつくばらせる。追いつめられた彼が、逃避行動として反復した孤独な修練。それはユウの格闘センスを目覚めさせ、結果として“不良狩り”の噂を生みだすこととなったのだ。
 ジムにも道場にも通ったことのないユウのいびつな格闘術は、それでも腕に憶えのある男たちを路上の戦いへと掻き立てる。そんなユウに、ボクシングを基本とした格闘スタイルで“路上のカリスマ”と呼ばれる伊沢マサキ(いざわ・――)は接近する。それは、挫折に苦悩し、路上の戦いに何かを見出そうと足掻いた、かつてのマサキを、ユウの中に見た故のことだったのかもしれない。
 ボクシング、レスリング、柔道、空手、剣道、我流喧嘩術、キックボクシング、拳法、総合格闘技――。不良たちの怨恨により、あるいは相手の個人的興味から、さまざまな使い手と路上での闘いを繰り広げるユウ。多くの傷を負い、自らも暴力の魔力に心を軋ませながらも、彼は街に居ることを止そうとしない。なぜならば、学校にも家庭にも居場所の無かった彼にとって、そこでの闘いこそが、仲間を、敵を、自らが生きている実感を感じられる、唯一無二の聖域なのだから――。

(さらに…)

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第128夜 流れる涙は、狂おしい郷愁のゆえか…『地球(テラ)へ…

 2013/12/06  100夜100漫, , ,

「みんな聞け/ミュウは弱い!/傷つくとショックを受け/仲間たちの死に気をとられる/だがこれは戦闘だ!!/勝つことだけを考えろ!!/我々はただひとつのことだけを考えるんだ!/この戦いに勝って地球(テラ)へ…/地球へ行くと!」 『地球(テラ)へ…』竹宮恵子 作、朝日ソノ……

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第122夜 血まみれの少女が焦がれた明日は…『キリエ 吸血聖女

「神様…どうして私なんかを生かされたのですか…/私なんかを…/私は/あの子達の為に泣いてあげる事もできないのに…」 『キリエ 吸血聖女』杉村麦太 作、秋田書店『週刊少年チャンピオン』掲載(2000年8月~2002年8月)  1870年、アメリカ西部。そこでは狂血病……

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第99夜 破滅に挑む、人の悲しみと儚さか…『百億の昼と千億の夜

 2013/08/11  100夜100漫, , , ,

「神と戦うのか」「おお そうとも/わたしは相手がなに者であろうと戦ってやる/この わたしの住む世界を滅ぼそうとする者があるのなら/それが神であろうと戦ってやる!」 『百億の昼と千億の夜』光瀬龍 原作、萩尾望都 作、秋田書店『週刊少年チャンピオン』掲載(1977年7月……

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第92夜 優しさ、ゆえに精神を壊す…『MIND ASSASSIN

「この平和な時代で/ボクの力が本来の意味で使われることは もうないと思ってた……/でも それは…自分が勝手にそう望んでいただけなのかもしれない…」 『MIND ASSASSIN』かずはじめ 作、集英社『週刊少年ジャンプ』→『週刊少年ジャンプ増刊号』→『月刊少年ジャン……

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第88夜 少女達の絶望と、公権力の暗部…『ブラッドハーレーの馬車

「自分の肉体(からだ)がどんな事になってるのかよく判らない……/ああ……ただ ひどく苦しいの/こんな苦しみが まさかこの世にあったなんて……/あら…駄目よ/もっと楽しい事を考えなきゃ……」 『ブラッドハーレーの馬車』沙村広明 作、太田出版『マンガ・エロティクス・エフ……

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第8夜 弟が愛し憎悪する姉は血と鋼に身を固める…『シリウスの痕

 2013/05/12  100夜100漫, ,

「さて最後のお別れをしなさい/自分の生身の肉体に」 『シリウスの痕(きずあと)』高田慎一郎 作、角川書店『月刊少年エース』掲載(1999年5月~2001年10月)  脳以外を機械化した人間を殺し合わせる闘犬(ドッグファイト)。犬たちには既に闘争本能しか残されていな……

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