漫画のレビュー&随想 | 100夜100漫

――夜毎、お話ししましょう。貴方が私を縊(くび)らぬ限りは。

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「 悲壮 」 一覧

第170夜 千々に乱れる世界にその死を想え…『さよならもいわずに』

「昨日現像に出した写真を取りに行く/いつもの道/いつもの駅前/何故……/一体 何故/何故キホが!?/何故 あなたではなく………」


さよならもいわずに (ビームコミックス)

さよならもいわずに上野顕太郎 作、エンターブレイン『月刊コミックビーム』掲載(2009年7月~2010年4月)

 「ヒマだからな!」をキャッチフレーズに、ナンセンス&シュールな作風のギャグ漫画家として歩んできた作者、上野顕太郎(うえの・けんたろう)。一部の作品から透けて見えるように、プライベートの彼は、少女時代から鬱傾向があり喘息持ちでもある妻の希穂(キホ)と、小学4年生の一人娘、華凛(カリン)を愛する家庭人だった。
 しかし、2004年12月、日付が10日に変わった直後に、途方もない喪失が彼を襲った。キホが呼吸をしていない。
 自分が自分でないような感覚の中、しかし現実は確実に妻の死を突きつける。家族や知人への報告、仕事の調整、葬儀の準備、矢継ぎ早に訪れるそれらのさなか、あるいはその後で、彼に去来したものは何だったのか。
 妻の言葉、姿、声、物腰、記録――。それらを求めてやまず、それ故に深まる喪失感と絶望。ただそのままに、日々は過ぎ行く。

(さらに…)

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第165夜 かつてこの国が経験した、凄絶な季節に…『夏のあらし!』

「それでも/夏の間だけでも/生きて再びこの世界に居られることを感謝したいわ/だから精一杯/楽しく生きるわ/命短し/恋せよ乙女/紅き唇/褪せぬ間に…ってね/生きてるあなたは/恋をしなよ!」 『夏のあらし!』小林尽 作、スクウェア・エニックス『月刊ガンガンウイング』→『……

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第158夜 狂わざれば、その時代を生きること能わず…『シグルイ』

「士(さむらい)の命は/士の命ならず/主君のもの/なれば/主君のために死場所を得ることこそ/武門の誉れ/封建社会の完成形は/少数のサディストと多数のマゾヒストによって構成されるのだ」 『シグルイ』南條範夫 原作、山口貴由 作画、秋田書店『月刊チャンピオンRED』掲載……

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第155夜 親愛と憎悪、その全てで向き合おう…『含羞(はじらひ)−−我が友 中原中也−−』

「小林ィ」「はっ はい」「おまえ“幸福”ってやつを知ってるかい」「“幸福”……ですか」「ああ そうだ/おまえが文章を書くのも/おれが詩をうたうのも/心の底で幸福をさがしているからなんだよ/あくせく働くのも/旅に出るのも/悩んだり/笑ったり/人生について考えたり/悲しみにうちひしが……

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第137夜 波乱の刻を咲き誇った、幾つもの魂…『ベルサイユのばら』

「神の愛にむくいる術ももたないほど小さな存在ではあるけれど…/自己の真実のみにしたがい/一瞬たりとも悔いなくあたえられた生をいきた/人間としてそれ以上のよろこびがあるだろうか」 『ベルサイユのばら』池田理代子 作、集英社『週刊マーガレット』掲載(1972年4月~19……

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第134夜 願いよ、せめて彼女の前で真実となれ…『純潔のマリア』

「何で邪魔すんのよ!/あたし悪いコトしてないじゃん/お前達は卑怯だ!/地上では皆あちこちで救いを求めているぞ/なのに祈っても祈ってもお前達は全然人を救わない/だからあたしがやっただけだろ」 『純潔のマリア』石川雅之 作、講談社『good!アフタヌーン』掲載(2008……

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第130夜 路地裏の泥臭き死闘と不良達の純粋さ…『ホーリーランド』

「はっきり言う/今のままじゃあオマエはもう通用しねえ!!!」「それでも…/それでも僕は街にいたい!/今戻ったら−−−/今戻ったら僕は一生−−−−/あそこから出られない気がする」 『ホーリーランド』森恒二 作、白泉社『ヤングアニマル』掲載(2000年10月~2008年……

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第128夜 流れる涙は、狂おしい郷愁のゆえか…『地球(テラ)へ…』

 2013/12/06  100夜100漫, , ,

「みんな聞け/ミュウは弱い!/傷つくとショックを受け/仲間たちの死に気をとられる/だがこれは戦闘だ!!/勝つことだけを考えろ!!/我々はただひとつのことだけを考えるんだ!/この戦いに勝って地球(テラ)へ…/地球へ行くと!」 『地球へ…』竹宮恵子 作、朝日ソノラマ『月……

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第122夜 血まみれの少女が焦がれた明日は…『キリエ 吸血聖女』

「神様…どうして私なんかを生かされたのですか…/私なんかを…/私は/あの子達の為に泣いてあげる事もできないのに…」 『キリエ 吸血聖女』杉村麦太 作、秋田書店『週刊少年チャンピオン』掲載(2000年8月~2002年8月)  1870年、アメリカ西部。そこでは狂血病……

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第99夜 破滅に挑む、人の悲しみと儚さか…『百億の昼と千億の夜』

 2013/08/11  100夜100漫, , , ,

「神と戦うのか」「おお そうとも/わたしは相手がなに者であろうと戦ってやる/この わたしの住む世界を滅ぼそうとする者があるのなら/それが神であろうと戦ってやる!」 『百億の昼と千億の夜』光瀬龍 原作、萩尾望都 作、秋田書店『週刊少年チャンピオン』掲載(1977年7月……

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