漫画のレビュー&随想 | 100夜100漫

――夜毎、お話ししましょう。貴方が私を縊(くび)らぬ限りは。

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「 SF 」 一覧

【一会】『少女終末旅行 2』……希望が潰えた時に浮かぶもの

少女終末旅行 2 (BUNCH COMICS)

 先日、話題の『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(公式サイト)を観てきました(高性能サブウーファーを新規導入した立川シネマシティの「極上爆音上映」は確かにすごかったです)。過激に恰好いい世界観と、人間の誇りを謳うストーリーがとても面白かったのですが、あの映画が描く遠未来に勝るとも劣らない世界を現出していると自分が思う漫画『少女終末旅行』の2巻が刊行されていましたので、書きます。

 とはいえ、『マッドマックス』のように人々が争い合うような“爆音”な物語ではありません。むしろ支配しているのは、主に静寂です。
 登場する人物もごく僅かです。黒髪黒瞳、本好きだけどツッコミは意外と容赦ない運転担当のちーちゃん(チト)と、金髪碧眼、食べたり寝たりが好きでマイペースな銃器担当のユー(ユーリ)。基本的にはこの2人の女の子だけです。その他、1巻では地図を描いているカナザワが、今巻ではイシイという人物がゲスト的に登場します。
 彼女たちがドイツ製の履帯式牽引車両ケッテンクラート(キャタピラと荷台のある大型バイクのようなもの)で行くのは、未来的ではあるものの生物がほぼ存在しない廃墟。恐らくは、過去に食糧か土地かあるいはそれ以外の何らかの事情で始まった戦争は、物語の始まるずっと以前に、戦闘を遂行する人員が誰もいなくなったことで自然に消滅したものと思われます。

参考:1/32 Sd.Kfz.2 Kettenkrad (ケッテンクラート)
参考:造形村SWS 1/32 Sd.Kfz.2 Kettenkrad (ケッテンクラート)

(さらに…)

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【一会】『いぬやしき 3』……完全なるか、勧善懲悪

 ふとしたきっかけから超強力な戦闘能力を有する改造人間(というよりほぼロボット?)となってしまった初老男性の犬屋敷壱郎(いぬやしき・いちろう)と男子高校生の獅子神晧(ししがみ・ひろ)。そんな2人それぞれの「生きてる感じ」を味わうための行動を対比して描く、奥浩哉先生の『いぬ……

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【一会】『アップルシードα 1』……ヘタった世界、の2人、の交錯と乖離

 刊行から2週間ほど空きましたが、ようやく読めたので書きます。  『攻殻機動隊』と並ぶ士郎正宗の代表作で、未完で凍結されている『アップルシード』のリブート(新たに一から語られ直し)版を、『茄子』(100夜100漫第1夜)の黒田硫黄が描くという離れ業な漫画の第1巻です。原……

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第196夜 世界を憂う躁状態に、笑って唖然…『エクセル・サーガ

「出たな権力の手先!」「……いいけどよ」「ええと!/とりあえず名を名乗れっ」「個人情報は答えられないわ/市役所の方から来た者よ」「ほんに胡散臭いな/わしら」 『エクセル・サーガ』六道神士 作、少年画報社『ヤングキング アワーズ』掲載(1996年6月~2011年7月)……

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【一会】『新世紀エヴァンゲリオン 14(完)』……たなごころを、きみに

 超が付くメジャー作品の漫画版で、自分がここで語ることなどもはや無いようにも思うけれど、やっぱり直撃世代として、語りたいので語ります。  ちなみに通常版の発売はまだちょっと先(26日)です。自分は限定版(20日発売)を入手して読みました。  時に西暦2014年。か……

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【一会】『いぬやしき 2』……孤独と恍惚を抱え、戦う機能をイメージする

 刊行からはや1か月弱ということで、かなり出遅れた感がしますが、一くさり語ります。  会社でも家庭でも肩身の狭い、歳よりもかなり老けて見られる犬屋敷壱郎(いぬやしき・いちろう)58歳が、ふとしたアクシデントによって、自分の記憶や意識を保ったまま強力な武装を持ったアンドロ……

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第185夜 責任=自覚×選択…『時坂さんは僕と地球に厳しすぎる。

「空木宗也、キミは知らないようだから言っておくが――/人に使命感を抱かせしめるものは主義などではない。/誰かの期待だ。」 『時坂さんは僕と地球に厳しすぎる。』田中ほさな 作、小学館『ゲッサン』掲載(2011年9月~2014年1月)  何事においても「ちゃんとしたい……

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【一会】『ギガントマキア』……全存在を巻き込んだリングのただ中で、咆える

 『ベルセルク』があまりにも有名な、というか、それ以外の作品はこのところ手がけておられなかった三浦健太郎氏ですが、数えてみれば今作が実に24年ぶりとのこと。武論尊氏の原作で書いた『ジャパン』以来ということになるんでしょうか。24年という年月を思えば、そりゃ自分(1……

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第180夜 “内”で“外”で、立ち尽くす…『ハツカネズミの時間

 2014/06/16  100夜100漫, ,

「感情ってさ/経験しないとよくわからないものだよね/小説や物語を読んで頭ではわかっていても/やっぱり よくわからないや」「……/例えばどんな?」「人を好きだと思う事とか……/同じ好きでもイロイロあるみたいだけど/どう違うのか俺には今ひとつ理解できないよ」 『ハツカネ……

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【一会】『いぬやしき 1』……最終兵器っぽくなった初老の男性の行く先は?

 気が付けば『GANTZ』の終了からはや1年近くが過ぎた先月下旬に、奥浩哉先生の新作である本巻が刊行となりました。  事前情報ではお爺さんが主人公ということだけが明かされていたので、前作から一転して日常を描いたものになるのかなー、と何となく思っておりましたが、冒頭こそそ……

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