漫画のレビュー&随想 | 100夜100漫

――夜毎、お話ししましょう。貴方が私を縊(くび)らぬ限りは。

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第83夜 縁(えにし)の物語は出雲に始まり出雲に果つ…『八雲立つ

「“気”よ…!/大いなる気よ…!!/我に応えよ!/我に依り憑きてその力を貸せ!!」


八雲立つ 第7巻 (白泉社文庫 い 1-24)

『八雲立つ』樹なつみ 作、白泉社『LaLa』掲載(1992年5月~2002年7月)

 東京の大学生、七地健生(ななち・たけお)は、先輩に押し付けられた劇団の舞台取材のアルバイトとして島根県の維鈇谷(いふや)村を訪れる。たまたま親に持っていくよう頼まれた飾太刀を奉納しようと訪れた道返(ちがえし)神社では、土地の名家である布椎(ふづち)本家長男の高校生にして居合術の達人、布椎闇己(ふづち・くらき)が新たな宗主となるための秘祭、神和(かんなぎ)祭が催されていた。
 余所者は禁制とされる闇己の宗主襲名の儀式を、健生はふとしたことから覗いてしまう。布椎家は1700年も昔から、この地で巫覡(ふげき)として古代出雲族の怨念を鎮めながら、神剣を用いてこれを昇華させる時が来るのを待っていた一族だったのだ。闇己は前宗主である父から神剣・迦具土(カグツチ)を託され、道返神社より盗まれた残り6本の神剣を集め、出雲族の怨念を昇華させるよう言い渡される。
 健生と闇己、神代の時代からの因縁に結ばれた二人の波乱に充ちた探索行が始まる。

鍛冶師の末裔
 実はいま出雲に来ている。大学で民俗学を少しだけかじったこともあり、旅先に選ぶ時もそうした興味で決めることが多い。従って、そうした領域をモチーフにした作品も自分の好物の1つである。
 逆に言えば、単に上面だけを掠め取ったような作品には厳しい眼差しを向けることもないではないのだが、本作は根幹部分を緻密に調べており、更にそれを独自の設定とシームレスに繋げている。あとがき漫画のへっぽこ取材ぶりは、恐らく作者の謙遜と考えるべきであろう。
 その産物として、巫者とともに鍛冶師という職業を中心に据えたことが挙げられる。鍛冶師は、ミルチャ・エリアーデという宗教学者が重要視した概念だそうだ(本作中にも引用がある)が、これを漫画に取り入れるとなると、その説明を重視するあまり展開的に地味になってしまうリスクが高い。これを健生と闇己の“役割”に落とし込み、物語をすっきりと展開させる手腕は巧みである。

友愛の情
 とはいえ、上のような創作上の成り行きには頓着せずとも支障はない。本作で素晴らしいのは、何をおいても健生と闇己の関係性だと思う。2人の間には5歳の年の差があり、この年代の関係(高校生と大学生)として“熱い友情で結ばれる”というには少し違う。といって、腐女子各位が喜ぶような関係性では勿論ない。本編では、ときおり2人の祖先とも前世ともつかない2人を描いた挿話があるのだが、兄弟というわけでもなさそうである。
 それらを思うに、友愛ではないだろうか(某政党のお陰で、特にネット上ではこの言葉はイメージが悪いのだが、字面通りに理解して欲しい)。お互いを大切に思い、それでも1つに交わることはない。しかし、それゆえに時を超えてなお絆が強まる。少女漫画という制約の中、この清々しい物語が描かれたことは驚きである(それとも、少女漫画という枠組み故に、成立したものだったろうか)。
 シャーマニズム、民俗学といった事項に興味があれば、いっそう面白く読めるだろうが、青年2人の友情を描いた普遍性は、読者を選ばないだろう。

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第64夜 人と妖(バケモノ)とが綾なす陰陽の絵巻…『うしおととら

「行っくぞーっ、とらーっ!」「うるっせーんだよ、うしおーっ!!」 『うしおととら』藤田和日郎 作、小学館『週刊少年サンデー』掲載(1990年1月~1996年10月)  寺に住む少年、蒼月潮(あおつき・うしお)は、住職の父に虫干しを命じられた蔵の地下で、古びた槍に張……

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第43夜 視線の先の異形達は、己の異形の合わせ鏡…『ホムンクルス

「波は落ぢづぐなあ……/波は俺(わぁ)を映(うづ)さねえ。」 『ホムンクルス』山本英夫 作、小学館『ビッグコミックスピリッツ』掲載(2003年4月~2011年3月)  新宿西口から程近い場所に建つ一流ホテル。道路を挟んだ向かいの公園には、ホームレスの暮らすテント村……

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第39夜 化物と人の野蛮な高貴さに酔いしれろ…『HELLSING

「私にとって日の光は大敵ではない/大嫌いなだけだ」 『HELLSING』平野耕太 作、少年画報社)『ヤングキングアワーズ』掲載(1997年5月~2008年9月)  大英帝国王立国教騎士団。通称ヘルシング機関は、永くイギリスと王室を怪物――ことに吸血鬼――から守護し……

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第30夜 霊とも敵とも共に歩む姿こそが強さ…『シャーマンキング

「そのなんでも知ってる“精霊の王”って奴と友達になれば!!/なんの苦労もしないで毎日のんびり楽に暮らせるんだろ…!!」「ドバカモン」 『シャーマンキング』武井宏之 作、集英社『週刊少年ジャンプ』掲載(1998年7月~2004年10月)→完全版にて完結(2009年4月) ……

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第27夜 宵闇に燦然と燃えさかる“人間の姿”…『からくりサーカス

「何かあったら心で考えろ…/今はどうするべきか…ってな。/そうして…笑うべきだとわかった時は…/泣くべきじゃないぜ。」 『からくりサーカス』藤田和日郎 作、小学館『週刊少年サンデー』掲載(1997年7月~2006年5月)  両親の都合で中国で暮らしていた青年、加藤……

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第20夜 闘いに臨む覚悟と、その果ての慈悲…『怪奇警察サイポリス

「汝の魂に、幸いあれ…!」 『怪奇警察サイポリス』上山道郎 作、小学館『月刊コロコロコミック』掲載(1991年12月~1995年6月)  新聞部の部長を務める中学2年生、鬼塚勇気(おにづか・ゆうき)。同級生の新聞部員、三原千夏(みはら・ちなつ)に押されつつも部を取……

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第10夜 超古代遺跡を護る闘いに見い出す人の偉大さ…『スプリガン

「どーせ死ぬなら最後まで納得いくまで戦って死んでやる!!/自分の行動に後悔だけはしたくねー!!」 『スプリガン』たかしげ宙 原作、皆川亮二 作画、小学館『週刊少年サンデー』→『週刊少年サンデー増刊号』掲載(1989年2月~1996年1月)  かつて地球上にはいくつ……

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第6夜 生者への冥い欲求と暗鬱の中で閃く生命の光刃…『武装錬金

「死んでもやっちゃいけないコトと、死んでもやらなきゃいけないコトがあるんだ!!」 『武装錬金』和月伸宏 作、集英社『週刊少年ジャンプ』掲載(2003年6月~2005年4月)  高校2年の武藤(むとう)カズキは私立銀成(ぎんなり)学園の寄宿生。ある夜、怪物に襲われて……

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