漫画のレビュー&随想 | 100夜100漫

――夜毎、お話ししましょう。貴方が私を縊(くび)らぬ限りは。

*

「 人生 」 一覧

第159夜 ともあれ、二人、生きていくのだ…『娚(おとこ)の一生

「……私は……昔…」「もうええわ/君の過去のなんのは/つまらん/幸せの話をすると君は下を向くんや/過去には戻れへんのに/どうして目の前のぼくを見いひんのや?」


娚の一生 1 (フラワーコミックスアルファ)

『娚の一生』西炯子 作、小学館『月刊フラワーズ』→『フラワーズ増刊 凛花』(スピンオフ)掲載(2008年7月~2012年6月)

 東京の大手電機メーカー、四つ葉電機で原子力事業部プロジェクト管理課の課長を勤める堂薗つぐみ(どうぞの・−−)は、30代も半ばを迎えた独りもの。初めて取得した長期休暇を田舎の角島(かどしま)県鶴水市にある祖母の家で過ごしていたが、入院していた祖母、下屋敷十和(しもやしき・とわ)は間もなく他界。葬儀が営まれることとなる。
 その翌日、葬儀を終えて弛緩したつぐみの目の前に、見知らぬ壮年の男性が現れた。下屋敷の家の離れに居付き、我が家のように振る舞う男に困惑するつぐみ。
 50代前半、関西弁を話し、東京の女子大の教授として哲学を教えていたと自己紹介する彼の名は海江田醇(かいえだ・じゅん)。エッセイ執筆や講演もこなす著名人にして、かつて大学で教鞭を取っていた祖母の元教え子だという。
 祖母から離れの鍵をもらっていたと語る彼と、祖母の間には一体何があったのか。肝心なところを語らず、しばらく友人の代打で角島大学で教えるという海江田と、つぐみの行き掛かり上の同居生活が始まるのだった。
 休暇は終わるも、つぐみは仕事を在宅勤務に切り替え、温泉の湧く鶴水に地熱発電のプロジェクトをぶち上げつつ、そのまま祖母の家で暮らすことにする。そんなつぐみに群がる田舎の男たち、置き去りにされた親戚の子ども、海江田の秘書で学長の御令嬢、西園寺真保(さいおんじ・まほ)も登場し、田舎の事情と仕事と、揺れる女心の日々は続く。

(さらに…)

広告

広告
thumbnail

第154夜 状況の千変万化に踊らず信念を貫け…『絶園のテンペスト

「愛花が殺されたのは不合理だ/魔法も不合理だ/なら二つをぶつければ辻褄が合う/愛花を殺したやつを/この手で殺してやれる」 『絶園のテンペスト』城平京 原作、左有秀 構成、彩崎廉 作画、スクウェア・エニックス『月刊少年ガンガン』掲載(2009年7月~2013年3月) ……

thumbnail

第153夜 全ては、街の中で過ぎていく…『今日も渋谷のはじっこで

「わたしはちょっと東京に染まりすぎたのかな/戻れないんだよ/わたしはもう/きっと/地元の習慣は合わない/……/いいね/きみにはまだ/帰れるところがある/夏休みが終われば帰れるんでしょ/わたしには/終わりなんてないけど」 『今日も渋谷のはじっこで』平尾アウリ 作、祥伝……

thumbnail

第152夜 その追憶は、貴方を縛るものではなくて…『マイガール

「コ…コハル…/ママを大好きな人と一緒にいたい…」「ぼ…僕には/陽子さんと離れて生きていける方法なんて…/分かりません…/けど…/君がこれから送ろうとしている日々を…/僕は知ってる…/同じ気持ちを持ってるなら…/探す手伝いが出来るかもしれない…/じ…自信はないけど…/い…一緒に………

thumbnail

第149夜 中学教師と生徒達、全身全霊でぶつかります…『鈴木先生

「問題児にも/カミサマにも/手のかからないいい子にも囲まれて−−−−/回想モードは終了だ!!/今日も/こいつらに/全力で教えよう/めいっぱい クールに…/せいいっぱい 真摯に-−−−」 『鈴木先生』武富健治 作、双葉社『漫画アクション』掲載(2005年5月~2011……

thumbnail

第143夜 直し治される、仏心の導きか…『壊れた仏像直しマス。

「ここを守りたいのは―/お前だけじゃないってことさ……潰させねぇよ/この工房も/お前の夢も」 『壊れた仏像直しマス。』芳家圭三 作、芳文社『週刊漫画TIMES』掲載(2011年7月~2013年8月)  仏師、英道吉(はなぶさ・どうきち)。仏像の製作と修復に抜きん出……

thumbnail

第138夜 2人の日々は、あのスイングとともに…『坂道のアポロン

「んふっ/相棒?/いやですよこんなの」「最高じゃないか/一緒にバカやれる友達なんて/大事にしろよ/恋愛と違って/友情ってのは一生もんだからな」 『坂道のアポロン』小玉ユキ 作、小学館『flowers』掲載(2007年9月~2012年7月)  船乗りである父の仕事の……

thumbnail

第137夜 波乱の刻を咲き誇った、幾つもの魂…『ベルサイユのばら

「神の愛にむくいる術ももたないほど小さな存在ではあるけれど…/自己の真実のみにしたがい/一瞬たりとも悔いなくあたえられた生をいきた/人間としてそれ以上のよろこびがあるだろうか」 『ベルサイユのばら』池田理代子 作、集英社『週刊マーガレット』掲載(1972年4月~19……

thumbnail

第135夜 白い囲いの中で、我慢の日々…『失踪日記2 アル中病棟

「恐ろしい/なんか恐ろしいね/恐ろしいと頭で考える自分の声すらも恐ろしいんだよね」 『失踪日記2 アル中病棟』吾妻ひでお 作、イースト・プレス刊行、書き下ろし(2013年10月)  1998年12月28日、かつて失踪した漫画家は、今度は家族の手によって病院に担ぎ込……

thumbnail

第131夜 ままならない日々と自分を嗤う強靱さ…『ゲゲゲの家計簿

「今日の出費は……/本とコーヒーで八百円…/義姉さんに三千円借りて……/家内に生活費を渡すと…/ゼロだっ!?」 『ゲゲゲの家計簿』水木しげる 作、小学館『ビッグコミック』掲載(2011年5月~2012年10月)  昭和26年6月。武良茂(むら・しげる)は神戸でアパ……

広告

広告