100夜100漫

漫画の感想やレビュー、随想などをつづる夜

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「 人間賛歌 」 一覧

第199夜 決意も、後悔も、伝えなくちゃいけない…『花もて語れ』

「朗読にとって大事なのは聴き手の人数じゃない。/たとえ聴き手がたったひとりでも、それは読み手にとって大切な大切なお客さんだ。/舞台は、別に本物の舞台でなくたって構わない。/聴き手は友達だっていい。家族だっていい。/本当に聴いてほしかったら、舞台は他人に用意してもらうものじゃなく、自分自身でつかみとろうとするものなんだ。」


花もて語れ 1 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

花もて語れ片山ユキヲ 作、朗読協力・朗読原案 東百道、小学館『月刊!スピリッツ』→『週刊ビッグコミックスピリッツ』掲載(2010年1月~2014年7月)

 両親と死別し、地方で暮らす伯母に引き取られた佐倉ハナ(さくら・――)。小学1年生の彼女は、もともとの引っ込み思案のうえ周囲との言葉の違いもあって、友達と遊ぶよりも雲を見ながら空想するのが好きな女の子だった。
 ある日ハナは、しぶしぶ教育実習にやってきた折口柊二(おりぐち・しゅうじ)と出会う。柊二に才能を見いだされたハナは、学芸会のナレーション役をこなすため、朗読の手ほどきを受けることに。それは空想の世界に半ば逃げ込んでいたハナに、自分を見つめ現実へと向き合う力を与えるものでもあった。
 それから10数年。22歳になったハナは就職先のムーンリバーコーヒーで働くため、上京する。
 その性格ゆえに、会社の新人研修でも失敗続きで落ち込むハナ。しかし、ふとしたきっかけで藤色きなり(ふじいろ・――)の主催する朗読教室を訪れたことから再び朗読に触れ、それは引きこもりだった佐左木満里子(ささき・まりこ)という知己を得ることへと繋がっていく。
 宮沢賢治の「やまなし」、芥川龍之介の「トロッコ」、新見南吉の「ごん狐」、太宰治の「黄金風景」、坂口安吾の「風博士」――。劇団員の山吹(やまぶき)、病院事務の若竹(わかたけ)、夜の商売人アカネ、謎の多い朽葉(くちば)といった朗読教室の受講生たち、会社の先輩、同じ小学校だった谷村直樹(たにむら・なおき)、そして再会した柊二。多くの人の助力を得てハナの朗読は続いていく。
 それは、かつて家族を喪い、恋心と友情に惑うハナの、精一杯の気持ちを伝えることを意味していた。全身全霊をもって語るハナの言葉に、想いの花は咲いていく。

(さらに…)

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【一会】『新世紀エヴァンゲリオン 14(完)』……たなごころを、きみに

 超が付くメジャー作品の漫画版で、自分がここで語ることなどもはや無いようにも思うけれど、やっぱり直撃世代として、語りたいので語ります。『新世紀エヴァンゲリオン』、その漫画版の最終巻となる14巻です。  ちなみに通常版の発売はまだちょっと先(26日)です。自分は限定版(2……

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第165夜 かつてこの国が経験した、凄絶な季節に…『夏のあらし!』

「それでも/夏の間だけでも/生きて再びこの世界に居られることを感謝したいわ/だから精一杯/楽しく生きるわ/命短し/恋せよ乙女/紅き唇/褪せぬ間に…ってね/生きてるあなたは/恋をしなよ!」 『夏のあらし!』小林尽 作、スクウェア・エニックス『月刊ガンガンウイング』→『……

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第137夜 波乱の刻を咲き誇った、幾つもの魂…『ベルサイユのばら』

「神の愛にむくいる術ももたないほど小さな存在ではあるけれど…/自己の真実のみにしたがい/一瞬たりとも悔いなくあたえられた生をいきた/人間としてそれ以上のよろこびがあるだろうか」 『ベルサイユのばら』池田理代子 作、集英社『週刊マーガレット』掲載(1972年4月~19……

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第132夜 謎と人を愛す、食いしん坊ふたり…『魔人探偵脳噛ネウロ』

「…………ねぇネウロ」「何だ」「難しいね/人間って」「フハハハハ/何を突然我が輩のようなセリフを」 『魔人探偵脳噛ネウロ』松井優征 作、集英社『週刊少年ジャンプ』掲載(2005年2月~2009年4月)  女子高生、桂木弥子(かつらぎ・やこ)の日常は突如壊された。父……

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第125夜 大人の夢は大きいのだ…『俺はまだ本気だしてないだけ』

「親父よ…イヤ、お父さん…/七転び八起きって知ってる?」「起きれてねーよ!」 『俺はまだ本気だしてないだけ』青野春秋 作、小学館『月刊IKKI』掲載(2006年1月~2012年7月、番外編2013年1〜5月)  なりゆきで就職し、なんとなく15年勤めてきたバツイチ……

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第100夜 手を携え共に歩もう…『3×3EYES(サザンアイズ)』

「ヤクモ!! …大丈夫ナノ?」「へへっ/行こう香港!!/必ず君を人間にしてあげるよ」 『3×3EYES(サザンアイズ)』高田裕三 作、講談社『『ヤングマガジン増刊海賊版』→『ヤングマガジン』掲載(1987年12月~2002年9月)  東京新宿。親の都合で一人暮らし……

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第97夜 不埒な欲望全開で悪霊退治…『GS美神 極楽大作戦!!』

「美神さんっ!!/ぼかあっ…ぼかあもうっ!!」「いーかげんにしなさいっ!!」 『GS美神 極楽大作戦!!』椎名高志 作、小学館『週刊少年サンデー』掲載(1991年4月~1999年9月)  悪霊を除霊し、霊的被害を未然に食い止める国家資格ゴーストスィーパー。そんな彼……

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第90夜 勇者は誰か…『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』

「なんでもできる反面なんにもできないのが勇者って人種さ…/だが…勇者にも一つだけほかの奴には真似できない最強の武器がある…」「えっ!? な…なにそれ!?」「決まってんだろ/勇者の武器は/“勇気”だよ!」 『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』堀井雄二 監修、……

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第82夜 旅の最果てを目指し、少年と彼女は行く…『銀河鉄道999』

「あなたは機械の体をくれるという星へ行くのね/もし私をいっしょにつれていってくださるならパスをあげるわ/私と同じパスをあげるわ」「パス?」「そう/パスよ/無限期間有効の銀河鉄道の定期よ」 『銀河鉄道999』松本零士 作、少年画報社『少年キング』掲載(1977年1月~……

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