100夜100漫

漫画の感想やレビュー、随想などをつづる夜

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「 民俗 」 一覧

【一会】『蟲師 外譚集』……近く遠く、たゆたう話が五つ

蟲師 外譚集

 2度目のアニメ化もおおむね好評だった『蟲師』。漆原友紀先生による、虫のような植物のような原初的な生命のかたちをもった蟲と、人の営みを描いた漫画です。
 この漫画に関連した作品集が先ごろ(4月下旬)出版されました。その名も『蟲師 外譚集』。漆原先生ではなく、『蟲師』の世界観をベースに異なる5人の作者によるオリジナル読切作品を収録した単行本です。こういうのをトリビュートと云うのでしょうか。昨年の『蟲師 特別篇』(【一会】『蟲師 特別編 日蝕む翳』……再会と、満ち欠けへの祈り)もそうでしたが、緑が濃くなっていくこの時期の刊行というのが、何だか「らしい」なと思います。
 時代や人物など、割とバラバラな5編ですが、唯一の共通点としては、本来の主人公であるギンコが(ほぼ)登場しない、ということでしょうか。ちょうどいい数ですので、以下、1編ずつ個別に述べていこうと思います(作者の敬称略にて失礼します)。

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【一会】『猫瞽女―ネコゴゼ― 1』……猫耳による哀愁の唄と寂びた言葉

 実は最近、猫を飼い始めたのだけど、家の環境に慣れてくれるまでなかなかに大変でした。そんな折この漫画が刊行されたので個人的なタイムリー感を抱いたりしております。『朝霧の巫女』(100夜100漫第56夜)の宇河弘樹先生による新作『猫瞽女―ネコゴゼ―』です。  現実とパ……

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【一会】『乙嫁語り 7』……湯気の中に見つけた無二の人

 6巻から1年と1か月という時間をおいて発刊された『乙嫁語り』7巻。今巻では前巻の「あとがきちゃんちゃらマンガ」での予告通り、フィールドワーカーのスミスさんとその案内人アリが登場します。  とは云っても、冒頭で出てくるのは、まだあどけなさが残る、さっぱり美人アニス。……

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第191夜 逆巻く風雪は、ふたりのために…『千年万年りんごの子』

「留まる力と/変わる力/それでも/すべてのものは無慈悲に終わる/小さな切欠によって/朝日/君だけが確かだ」 『千年万年りんごの子』田中相 作、講談社『ITAN』掲載(2011年12月~2014年2月)  1970(昭和45)年。一組の夫婦が誕生した。  東京の大……

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【一会】『おるたな 宇河弘樹短編集Ⅱ』……三味線と、硝子の靴と、ピー○君

 作者の代表作『朝霧の巫女』(100夜100漫第56夜)の外伝(というか自己パロディ?)が収録されている、というのが恐らく一番の話題であろう短編集『おるたな 宇河弘樹短編集Ⅱ』が発売されました。「~短編集Ⅱ」とされているのは、2000年に出た『妖の寄る家』が短編集……

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【一会】『蟲師 特別編 日蝕む翳』……再会と、満ち欠けへの祈り

 桜も終わって、そろそろ緑が眩しい季節になりました。  この季節に合わせたかのような濃緑が目に染みる表紙で現れた本書『蟲師 特別篇 日蝕む翳』。以前100夜100漫で扱った『蟲師』(第114夜)の続編、というか新エピソードが描かれています。昨年末に『アフタヌーン』で……

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第117夜 地に澱む神代の穢れに抗うは、筋肉質な純情か…『天顕祭』

「木島/戻って来いよ/たった1年だけどよ/お前のいねェ足場はさみしいもンだ」 『天顕祭』白井弓子 作、同人誌発表(2006年2月~2007年8月)→サンクチュアリ出版より単行本  かつて、この国は「汚い戦争」を経験し、フカシとよばれる毒物に汚染された。そこかしこが……

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第114夜 決して相容れず、けれどもかけがえのないもの達…『蟲師』

「蟲……?」「ああ/陰より生まれ/陰と陽の境にたむろするモノ共のことだ/それが見える者は少ないが/この世界の隅々にまで/それはいる」 『蟲師』漆原友紀 作、講談社『アフタヌーンシーズン増刊』→『月刊アフタヌーン』掲載(1999年1月(読切)~2008年8月)  蟲……

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第83夜 縁(えにし)の物語は出雲に始まり出雲に果つ…『八雲立つ』

「“気”よ…!/大いなる気よ…!!/我に応えよ!/我に依り憑きてその力を貸せ!!」 『八雲立つ』樹なつみ 作、白泉社『LaLa』掲載(1992年5月~2002年7月)  東京の大学生、七地健生(ななち・たけお)は、先輩に押し付けられた劇団の舞台取材のアルバイトとし……

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第64夜 人と妖(バケモノ)とが綾なす陰陽の絵巻…『うしおととら』

「行っくぞーっ、とらーっ!」「うるっせーんだよ、うしおーっ!!」 『うしおととら』藤田和日郎 作、小学館『週刊少年サンデー』掲載(1990年1月~1996年10月)  寺に住む少年、蒼月潮(あおつき・うしお)は、住職の父に虫干しを命じられた蔵の地下で、古びた槍に張……

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