100夜100漫

漫画の感想やレビュー、随想などをつづる夜

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「 エロス 」 一覧

第158夜 狂わざれば、その時代を生きること能わず…『シグルイ』

「士(さむらい)の命は/士の命ならず/主君のもの/なれば/主君のために死場所を得ることこそ/武門の誉れ/封建社会の完成形は/少数のサディストと多数のマゾヒストによって構成されるのだ」


シグルイ 1 (チャンピオンREDコミックス)

シグルイ南條範夫 原作、山口貴由 作画、秋田書店『月刊チャンピオンRED』掲載(2003年6月~2010年7月)

 寛永6年9月24日。駿府城内で行われた御前試合は、酸鼻を極めるものだったという。
 普通、木剣を使用するところ、駿河大納言である徳川忠長(とくがわ・ただなが)は周囲の諫言も意に介さず真剣での立ち合いを所望。かくして、剣士達による凄惨な殺し合いが幕を開けるのだった。
 その第一試合に、諸大名の誰もが息を呑んだ。試合場に入ってきたのは、左手を欠いた剣士と、盲目にして片足を引きずる跛足の剣士だったのだ。
 その隻腕の剣士、藤木源之助(ふじき・げんのすけ)と、盲目跛足の剣士、伊良子清玄(いらこ・せいげん)は、もとは「濃尾無双」と謳われた剣豪、岩本虎眼(いわもと・こがん)の開いた虎眼流(こがんりゅう)で「双龍」と云われた同門同士だった。
 もともと虎眼流への道場破りながら、卓越した剣才と容貌で虎眼の一人娘、三重(みえ)を魅了し、道場の跡目へと野心を燃やす伊良子。百姓の子だったところを虎眼に拾われ、以来異常なまでの愚直さで剣の腕を磨いてきた藤木。
 いま、伊良子はその盲目跛足ゆえに編み出した秘剣「無明逆流れ」の構えをとり、藤木は憎悪と憧憬あい半ばする感情をもって一本腕で刀を構えた。他流者、門徒、師匠すらも飲み込んだ血飛沫と臓物と死。そして狂気すら湛えた士道。ここに至る因縁が、対峙する2人の間に翻る――。

(さらに…)

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【一会】『せっかち伯爵と時間どろぼう 1』……変わらぬ安定感と、既にある不穏

 帯には「待望した!」と大書されている、『さよなら絶望先生』(100夜100漫第36夜)で知られた久米田康治先生の最新作『せっかち伯爵と時間どろぼう』の1巻を読みましたので、思うところを書きとめようと思います。  先に作風の話をすると、「不労腐死」とか「9金以下の純度の……

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【一会】『まるせい 1』……成年漫画描きの青春と苦闘

 刊行から少し経ってしまいましたが、花見沢Q太郎『まるせい』1巻が面白かったので書きます。  タイトルの「まるせい」とは、「○」に「成」と書く、いわゆる成年向け漫画、ようするにエロ漫画のこと。『100夜100漫』は中高生くらいから上の人が読むだろうな、と思って書いて……

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第145夜 非現実への色欲に隠した、承認への欲望…『ルサンチマン』

「まだ現実に未練があるのか?」「あっ、あたりまえだ。/大体、そんな話/信じられっかよ。」「お前が、/現実の何に期待してるかわからんが、/あきらめろ。現実に期待するな。」「ぐっ、よ、余計なお世話だ。」「30年生きて、お前もわかっているはずだ。現実世界でおれ達に勝利はない!/おれ達は……

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第134夜 願いよ、せめて彼女の前で真実となれ…『純潔のマリア』

「何で邪魔すんのよ!/あたし悪いコトしてないじゃん/お前達は卑怯だ!/地上では皆あちこちで救いを求めているぞ/なのに祈っても祈ってもお前達は全然人を救わない/だからあたしがやっただけだろ」 『純潔のマリア』石川雅之 作、講談社『good!アフタヌーン』掲載(2008……

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第133夜 奇妙奇天烈な食べ物と変な色気で星3つ…『奇食ハンター』

「・・・・・・・・・・残していい?」「ヌ!?/逃げるな! 奇食ハンターとして恥ずかしくないのかッ!!」「な・・何? その奇食ハンターっていうのは?」 『奇食ハンター』山本マサユキ 作、講談社『週刊ヤングマガジン』掲載(2007年6月~2010年3月)  旧車漫画『……

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第122夜 血まみれの少女が焦がれた明日は…『キリエ 吸血聖女』

「神様…どうして私なんかを生かされたのですか…/私なんかを…/私は/あの子達の為に泣いてあげる事もできないのに…」 『キリエ 吸血聖女』杉村麦太 作、秋田書店『週刊少年チャンピオン』掲載(2000年8月~2002年8月)  1870年、アメリカ西部。そこでは狂血病……

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第98夜 モノの言葉を知るための魔法…『まじかる☆タルるートくん』

「そうか/タルが魔法をかけなくても…/グローブにも魂があって/火にも心があって…/風や水や土………/みんな生きているって…/生きて…」 『まじかる☆タルるートくん』江川達也 作、集英社『週刊少年ジャンプ』掲載(1988年8月~1992年9月)  江戸城本丸(えどじ……

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第66夜 裏世界に咲き誇る、逸脱者たちの毒花…『職業・殺し屋。』

「ああ…なんて卑しい仕事なんだ…」 『職業・殺し屋。』西川秀明 作、白泉社『ヤングアニマル嵐』→『ヤングアニマル』掲載(2001年8月~2010年1月)  インターネットの奥底に存在するアングラサイト「職業・殺し屋。」。そこでは、依頼者が提示した金額から値段を下げ……

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第4夜 歌舞伎町に垣間見える虚無と、極限の暴力…『殺し屋1』

「思う存分ブッかけてこい!/この歌舞伎町に!」 『殺し屋1』山本英夫 作、『週刊ヤングサンデー』掲載(1998年2月~2001年4月)  新宿歌舞伎町。この街には欲望が渦巻いている。  得体の知れない通称“ジジイ”が率いる3人は、組にも所属できない半端もの揃い。……

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