漫画のレビュー&随想 | 100夜100漫

――夜毎、お話ししましょう。貴方が私を縊(くび)らぬ限りは。

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【随想】扉の向こうの、もう一つの扉――活字本に繋がる漫画たち

惡の華(3) (週刊少年マガジンコミックス)悪の華 (新潮文庫)

 暑かった今年の夏も終わり、そろそろ読書の秋。ホームである『100夜100漫』から出張して、読書人の牙城『シミルボン』に自分がお邪魔するようになって、1年になりました。
 『シミルボン』は読書全般についてのレビュー&コラムのプラットホームですが、そこで自分が書いているのは、やはり「漫画と自分とその周辺」についてです。ただ主題は漫画でも、関連しそうだったり、連想したりした活字本については、ちょこちょこと言及したりもしています。まぁそれは『100夜100漫』でも同じで、世に根強い「漫画|活字」という区別を無くしたい、という密かな野望が背後にあったりするのですが。

 その野望の一環として、今回は“漫画と活字”なる切り口で考えてみたいと思います。
 直ちに思い浮かぶのは、漫画がノベライズされたり、逆に小説がコミカライズされたりという動きです。前者は例えば『ジャンプ』系の漫画を小説化し続けている集英社のJUMP j-BOOKS、後者は光瀬龍氏の小説を萩尾望都氏が漫画化した『百億の昼と千億の夜』や、宮澤賢治の原作から登場人物を猫に置き換えて漫画化した、ますむらひろし氏の『銀河鉄道の夜』などが有名でしょうか。

 あるいは、このところ目立ってきた、活字本の紹介を主眼に置いた漫画も思い浮かびます。本の世界に親しむ中学生・草子が書く感想文に揺さぶられる、玉川重機氏の『草子ブックガイド』や、図書室に集う面々のギャグタッチなやり取りに触れるうち読書欲も喚起される施川ユウキ氏の『バーナード嬢曰く。』、社会人1年生の主人公・佐倉ハナの朗読を通じた成長とともに、名作の息づかいを味わえる片山ユキヲ氏の『花もて語れ』あたりが私的に一推しな“読書案内漫画”です。

 勿論これらの漫画も素晴らしいのですが、定番かつ直球なので、今回は敢えて外します。代わりに挙げるのは、独立した物語でありながら、その伴奏として活字本が小さからぬ役割を果たしている漫画たち。読むことで活字本の入り口となり、先に活字本を知っていれば、より楽しめるような漫画たちです。

その世界を支えるもの

「黄色い本――ジャック・チボーという名の友人」と『チボー家の人々』

 いの一番にご紹介したいのは、高野文子氏の「黄色い本――ジャック・チボーという名の友人」です。1作ごとに独特なコンセプトを見せる高野氏の漫画ですが、この中篇ではフランス文学の大作、ロジェ・マルタン・デュ・ガールの『チボー家の人々』とがっぷり四つに組み合って読み耽る、地方在住の女子高生を描いています。

(さらに…)

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【一会】『3月のライオン 12』……竜の奮迅、死神の親愛

 15歳でプロ棋士になり、どうにか無事に高校を卒業した桐山零(きりやま・れい)と棋士たちによる戦いの日常と、あかり・ひなた・モモの3姉妹を中心とした川本家の日々を織り交ぜて、人々の人生の悲喜を描く『3月のライオン』。ちょうど1年ぶりの9月末に新刊の刊行となりました。アニメ……

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第205夜 ディスプレイに躍る意地と愛と魂と…『大東京トイボックス

「…それは/直さずにすめばその方が効率がいいからに決まって…」「もうやめろ/効率? プロ? まるでガキだな」「…なんだと?」「そんなのは大人じゃねえ/ただの聞き分けのいい子供だ」 『大東京トイボックス』うめ(小沢高広…企画・シナリオ・演出担当/妹尾朝子…作画・演出担……

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【一会】『3月のライオン 11』……対峙の果てと残された者の虚脱

 17歳の少年プロ棋士、桐山零(きりやま・れい)の孤独な戦いと棋士の世界、そして、そんな零を家族のように受け入れる、あかり・ひなた・モモの3姉妹を中心とする川本家のドラマを描く『3月のライオン』。前巻から9か月ほどで新刊の刊行となりました。刊行からひと月ほど経ってしまいま……

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第199夜 決意も、後悔も、伝えなくちゃいけない…『花もて語れ

「朗読にとって大事なのは聴き手の人数じゃない。/たとえ聴き手がたったひとりでも、それは読み手にとって大切な大切なお客さんだ。/舞台は、別に本物の舞台でなくたって構わない。/聴き手は友達だっていい。家族だっていい。/本当に聴いてほしかったら、舞台は他人に用意してもらうものじゃなく、……

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【一会】『3月のライオン 10』……今ばかりは、“読み”は不要だ

 17歳の少年プロ棋士、桐山零(きりやま・れい)と、彼が独り暮らしをしている「六月町」(東京月島あたりがモデルと思われる)の対岸「三月町」に住むあかり・ひなた・モモの川本家3姉妹との交流を中心に、それぞれの家族の事情とか、個性的なプロ棋士たちの描写が興味深い本作。前巻から……

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第171夜 思い出になる日々を、呑気さで奏でよう…『けいおん!

「梓 さっき何で私が外バン組まないのか聞いたよね/やっぱり私はこのメンバーとバンドするのが楽しいんだと思う/お茶飲んだり/だらだらすることもあるけど/それも必要な時間なんだよ」「……本当に?」「多分…」 『けいおん!』かきふらい 作、芳文社『まんがタイムきらら』……

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第157夜 芸術も友情も、無条件だからいい…『ぼくらのフンカ祭

「なあ…/オレ多分、一生忘れねーわ。/この光景。/ありがとな桜島。/オレをさそってくれて。」 『ぼくらのフンカ祭』真造圭伍 作、小学館『週刊ビッグコミックスピリッツ』掲載(2012年3月~同7月)  地元の東金松(かねまつ)高校に入学した富山剛士(とやま・たけし)……

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第155夜 親愛と憎悪、その全てで向き合おう…『含羞(はじらひ)−−我が友 中原中也−−

「小林ィ」「はっ はい」「おまえ“幸福”ってやつを知ってるかい」「“幸福”……ですか」「ああ そうだ/おまえが文章を書くのも/おれが詩をうたうのも/心の底で幸福をさがしているからなんだよ/あくせく働くのも/旅に出るのも/悩んだり/笑ったり/人生について考えたり/悲しみにうちひしが……

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第151夜 「楽しさ」を原動力に、痛くっても、進め…『ハックス!

「「もうね/この人/頭おかしいんじゃないかってくらい」/「楽しいことだけ考えたらいいんですよ」「大変ですけど/それでアニメはうんと楽しくなります」」「やりましょう/こうしてう…/お/いる場合ではないですよ私たち!」 『ハックス!』今井哲也 作、講談社『月刊アフタヌー……

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