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第15夜 日本の工場を担う“蟻んこ”の誇りに笑って咽け…『工場虫

「オレたちの手で今の世の中ひっくり返してやるんだよ!」


工場虫

『工場虫』見ル野栄司 作、e Book Japan『KATANA』掲載(2009年4月~10月)

 株式会社アリンコハイテック横浜工場(といっても山の中)に勤める原成守(はらなり・まもる)は、製造部での仕事の傍ら新製品の開発に余念がない。しかし、試作する機械はどれもピント外れで実用化には程遠かった。工場には機械加工45年のベテラン、南部(なんぶ)さんや、高度経済成長期に不眠不休で会社を支えた“鉄人”課長がいたが、パートのおばさん達の量産ものの組み立てで何とかなっているという状況だった。
 やがて本社では横浜工場のリストラを決定。その横暴に激怒した原成は、後輩の北下(きたした)、小宮(こみや)、さらに工場から本社へ行った千葉も巻き込んで、報復を誓う――。
 作者自身のエンジニア経験に取材した、熱くリアルな工場ドラマ。

男たちの工場
 『シブすぎ技術に男泣き!』というルポ漫画シリーズが一世を風靡したのは2010年である。メカトロニクスエンジニアとして実際に工場に10年勤務した経験を持つ漫画家が、毎回珍しい技術を持っている会社を訪ね、そのこだわりと男気に熱くなる、という作品だった。本作は、その番外として同じ作者が書いたものである。本家が実録ものであるのに対し、こちらは作者の経験を元にしているという点では同じだが、あくまで「ノンフィクションに近いフィクション」としている。
 本家もそうだが、本作も男臭い作品である。『ファミ通のアレ(仮)』を書いていた羽生生純(はにゅにゅう・じゅん)のようなくにゃくにゃした線の画風ながら、可愛い女性キャラクターも登場はする。しかし、話の中心は完全に男、しかも主人公達に何かと背中で語ってくれる熟練工や課長といったおっさん勢がいい味を出しているのである。おっさんがカッコいい作品は、名作だ。

革命の日はまだ遠く
 主人公は専制的な本社に対して怒り、「革命から報復」と云って行動を起こす。この主人公は事あるごとに「革命」を口にし、管理職である課長に対しても敵意を燃やす場面もある。
 タイトルといい、本社と工場との格差の描写といい、作者は労働問題的なことをやりたかったのか、とも思える。ネットカフェ難民がマスコミに取り上げられ、小林多喜二の『蟹工船』がブームになったのは2007~2008年あたりのことで、本作の少し前になる。従って、この推測はそんなに不自然な話ではないが、『シブすぎ技術~』のように技術の素晴らしさを描くことが優先されているため、本作において労働問題は裏テーマ的な感覚を受ける。
 とはいえ、ものづくり大国の原点を思い出させてくれる物語に仕上がっていることは確かである。変にすっきりするラストまで、一息に読んだあとの爽快感は他の作品にあまりないように思う。

*書誌情報*
☆通常版…A5判(20.8 x 14.8cm)、全1巻。



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