漫画のレビュー&随想 | 100夜100漫

――夜毎、お話ししましょう。貴方が私を縊(くび)らぬ限りは。

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「 仕事 」 一覧

【一会】『プリンセスメゾン 4』……真摯さに、祝福あれ

プリンセスメゾン(4) (ビッグコミックス)

 26歳、年収250万円ちょっとの沼越幸(ぬまごえ・さち)のマンション購入を主軸に、色々な人物の住まいと暮らしと孤独を描いた『プリンセスメゾン』。昨秋はNHKでドラマ化などもされた本作の、第4巻が6月に刊行されました。例によっていささか遅いのですが、内容と感想を書いていきたいと思います。

 前巻でついに納得のいく物件を見つけ、これを購入した幸。彼女の今後が気になるところですが、今巻の冒頭では、彼女とは別のエピソードがまず2人分続きます。
 1人目は、グラフィックデザイナー(?)の恩納さん。パソコン・ネット環境・電話・ファックスがあれば、どこでも仕事ができてしまう彼女は、定期的に住まいを移ります。しかも賃貸ではなく、その都度ローンを組み購入して住んでいるのは、「人間が苦手なもんで」と語る彼女の性格によるのでしょう。
 最近は政府も云っているテレワークには、通勤しないで済むなどのメリットがありますし、自分も割と賛成なのですが、一方で“どこにでも行けてしまえる”ということは、孤独を引き受けるということかもしれません。しかし、それが自由の代償なのだとも思います。
 2人目は、バリキャリの竜野さん。年上で社歴も上の部下、沖との微妙なやり取りをしつつ、実家の両親の世話を結婚した姉に押しつけられがちなのが最近の悩みです。親と自分の人生は全く別物ですが、帰るとやっぱり落ち着いたりもする、自分が十分に大人になってからの実家というのは、考えようによっては奇妙なものです。ところで彼女はとてもお利口な「ヤンソン」という猫を飼っています。村上春樹氏が何かで書いていた“旅行好きの猫”の話を思い出します。

(さらに…)

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【一会】『コトノバドライブ 4(完)』……その5分間は、きっと誰にでも

 海の見える土地で、店長と2人で営む小さなスパゲティ屋「ランプ」で働くすーちゃん。ふとした瞬間に彼女が垣間見る、ちょっと不思議で怖くもあり、それでいて有り難さも漂う不思議な時空間と不思議な出会いを描いた『コトノバドライブ』が、3月刊行の4巻で完結となりました。  作中は……

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【一会】『アルテ 6』……まずは自分の場所で

 ルネサンス末期の16世紀。その古典文化復興の中心地となったイタリアの、男社会な絵画界に、ひとり飛び込んだ貴族の娘アルテを描く絵画修行漫画『アルテ』。1月に6巻が刊行となりました。読んで思ったことを書きたいと思います。  師匠レオのアトリエに住み込んで研鑽を積んでい……

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【一会】『プリンセスメゾン 3』……ロマンティック重要事項説明

 居酒屋「じんちゃん」で働く、年収250万円ちょっとの沼越幸(ぬまごえ・さち)の“運命の物件”探しをメインストーリーに、女性たちの“住まいと孤独”を描く『プリンセスメゾン』。昨年の話になってしまいましたが、10月末に3巻が刊行されました。遅きに失するのもいいところですが、……

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【一会】『アルテ 5』……“違い”なんて、無いからこそ

 16世紀初頭イタリア。女性の社会進出が難しかったこの時代を舞台に、貴族の出ながら画家を目指して奮闘する少女アルテの修行の日々と、当時の人々の生活をつぶさに描く『アルテ』。6月下旬に5巻が出ましたが、このほど読みましたので書きたいと思います。  前巻で、生まれ育った……

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【一会】『白暮のクロニクル 8』……1600歳超えの純情

 不老不死に近い吸血鬼っぽい種族“オキナガ(息長)”が存在する世界。見た目は少年ながら88歳の“オキナガ”雪村魁(ゆきむら・かい)と、彼らを管理する厚生労働省夜間衛生管理課(通称やえいかん)の新人・伏木あかり(ふせぎ・――)が、12年に1度、未年ごとに若い女性を殺す「羊殺……

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【一会】『白暮のクロニクル 7』……迫る未年の終わり、まだ視えない真相

 非常な長命と不死性を有する“オキナガ”と、それを管理する厚生労働省夜間衛生管理課(通称やえいかん)が存在する世界。夜衛管の新人・伏木あかり(ふせぎ・――)と、88歳にして外見は少年な“オキナガ”雪村魁(ゆきむら・かい)の2人が、未年ごとに若い女性を殺害する連続殺人者“羊……

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第205夜 ディスプレイに躍る意地と愛と魂と…『大東京トイボックス

「…それは/直さずにすめばその方が効率がいいからに決まって…」「もうやめろ/効率? プロ? まるでガキだな」「…なんだと?」「そんなのは大人じゃねえ/ただの聞き分けのいい子供だ」 『大東京トイボックス』うめ(小沢高広…企画・シナリオ・演出担当/妹尾朝子…作画・演出担……

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【一会】『アルテ 4』……想いを残し、新天地へ

 16世紀初頭のフィレンツェを舞台に、貴族出身ながら画家を志望する元気少女アルテの修行の様子と、師匠であるレオへの淡い恋心、当時の人々の生活描写がそれぞれに興味深い『アルテ』。先ごろ4巻が発刊されましたので、書き留めておきましょう。  前巻では重労働のフレスコ画の助……

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【一会】『いちえふ 福島第一原子力発電所労働記 3(完)』……原子炉建屋へ。そして一旦の中締め

 2月発刊の2巻から8か月。この10月に『いちえふ 福島第一原子力発電所労働記』のとりあえずの最終巻となる3巻が刊行となりました。前巻について書いた時は、発刊予告があまりアテにならないかも、と書きましたが、思いがけず予告通りのリリースでした。  作中の内容が現実に追……

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