漫画のレビュー&随想 | 100夜100漫

――夜毎、お話ししましょう。貴方が私を縊(くび)らぬ限りは。

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「 大人 」 一覧

第198夜 笑いあって手を繋いで、それなのに零れる涙…『西荻夫婦

「明日が来なくても/まあ もう充分ってカンジかな―――」「えーッ/もう充分なの?」「うまく言えないけどね」「けっこうあっさりした境地へ/行っちゃうんですね/夫婦って」「なにわかったふうな」「恋愛じゃないからね」


西荻夫婦 (フィールコミックスGOLD)

『西荻夫婦』やまだないと 作、祥伝社『フィール・ヤング』掲載(2000年5月~2001年2月)

 漫画家のナイトーと、会社員のミーちゃん(ミノワ)。結婚して7年目の2人は、東京の西荻窪で暮らしている。
 健康的な生活を心がけながらも、だいたい締切直前にはアシスタントのオクヤやコマダ、担当編集に迷惑をかける夫。同僚女性のノミヤや後輩のゆとり男子シンドーらと、しっかり仕事をしている妻。
 そんな対照的な2人だが、夫婦仲は良い方だ。朝、2人して大家の飼い犬を散歩させたり、アシスタントたちも交えてお喋べりしたり、結婚記念日に漫画の仕事をすっぽかして旅行したり――。
 転がる会話と共に、そんな平穏な日々を過ごしながらも、ふと漂う空気は不穏。妻を大切に思うと同時にそこからの逃走を図るナイトーと、夫の愛情を解りつつも、なぜか終わりを意識するミノワの平らかな暮らしは続いていく。奈落めいた安寧の中で、ナイトーは、ミノワは、どこへ行こうというのか。

(さらに…)

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【一会】『乙嫁語り 7』……湯気の中に見つけた無二の人

 6巻から1年と1か月という時間をおいて発刊された『乙嫁語り』7巻。今巻では前巻の「あとがきちゃんちゃらマンガ」での予告通り、フィールドワーカーのスミスさんとその案内人アリが登場します。  とは云っても、冒頭で出てくるのは、まだあどけなさが残る、さっぱり美人アニス。……

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【一会】『アップルシードα 1』……ヘタった世界、の2人、の交錯と乖離

 刊行から2週間ほど空きましたが、ようやく読めたので書きます。  『攻殻機動隊』と並ぶ士郎正宗の代表作で、未完で凍結されている『アップルシード』のリブート(新たに一から語られ直し)版を、『茄子』(100夜100漫第1夜)の黒田硫黄が描くという離れ業な漫画の第1巻です。原……

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【一会】『白暮のクロニクル 4』……反逆者の来歴、カインと吸血鬼、彼の嫌悪の意味

 3巻から少し間があいて、5か月ぶりの新刊となった『白暮のクロニクル』。その辺の事情は巻末のおまけ漫画に詳しく描かれていますが(いやまあ、ゆうき氏まさかのBL漫画漫画(誤記にあらず)『でぃす×こみ』との同時進行のせいなんですが)、まあそれはそれとして。  今まで深く……

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【一会】『純潔のマリア exhibition』……魔女マリアをめぐる、彼女や彼のイイハナシ

 イギリスとフランスによる百年戦争を背景に、平和を願う魔女にして純潔の乙女マリアが、小生意気な使い魔たち、戦に迎合する魔女たち、兵士ジョセフ、天の御使い達と奮闘したり対立したりしつつ2013年夏に本編完結を迎えた『純潔のマリア』(100夜100漫第134夜)。その後に発表……

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【一会】『3月のライオン 10』……今ばかりは、“読み”は不要だ

 17歳の少年プロ棋士、桐山零(きりやま・れい)と、彼が独り暮らしをしている「六月町」(東京月島あたりがモデルと思われる)の対岸「三月町」に住むあかり・ひなた・モモの川本家3姉妹との交流を中心に、それぞれの家族の事情とか、個性的なプロ棋士たちの描写が興味深い本作。前巻から……

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第191夜 逆巻く風雪は、ふたりのために…『千年万年りんごの子

「留まる力と/変わる力/それでも/すべてのものは無慈悲に終わる/小さな切欠によって/朝日/君だけが確かだ」 『千年万年りんごの子』田中相 作、講談社『ITAN』掲載(2011年12月~2014年2月)  1970(昭和45)年。一組の夫婦が誕生した。  東京の大……

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【一会】『いぬやしき 2』……孤独と恍惚を抱え、戦う機能をイメージする

 刊行からはや1か月弱ということで、かなり出遅れた感がしますが、一くさり語ります。  会社でも家庭でも肩身の狭い、歳よりもかなり老けて見られる犬屋敷壱郎(いぬやしき・いちろう)58歳が、ふとしたアクシデントによって、自分の記憶や意識を保ったまま強力な武装を持ったアンドロ……

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【一会】『謎のあの店 2』……追憶を、苦味と旨味にのせて

 作者が日常生活から掘り出した“入ってみたかったけど勇気とか縁とかがなくて入れなかったお店”に思い切って入店し、ごく主観的な記憶を交えつつ紹介するこの漫画。作者さんを知ったのは実は旅行雑誌の『旅の手帖』の1ページ漫画「今月のかけ湯くん」だったりするんですが、それはともかく……

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【一会】『シャーリー 2』……きっと沢山ある日々のうちの8片

 2003年に、まだ「1巻」という明記すらなく、初期作品集の趣きに近い1冊として刊行された『シャーリー』を、実は『エマ』(100夜100漫第60夜)よりも先に読んだ自分ですが、11年の時を経て2巻の刊行が成るとは想像していませんでした。もっとも『Fellows!』(のちに……

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