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【随想】大雪が降ったので、“雪”を感じる漫画を挙げてみる

      2014/08/03

蟲師(8) (アフタヌーンKC)シャーマンキング 19 (ジャンプコミックスDIGITAL)宙のまにまに(9) (アフタヌーンKC)金田一少年の事件簿 雪霊伝説殺人事件(上) (少年マガジンコミックス)


 昨日、関東に降った雪はすごいものでしたね。その日は交通機関など使わなかったものの、外出する用事があったので、普段とは違った街の様子がよく分かった次第です。

 十数年に一度の大雪だったことも受けて、今日は雪が印象的な漫画をずらずらとあげつらってみようと思います。
 一口に雪と云っても、ちょっとした冬の1シーンとしてなら枚挙にいとまがないほど出てきますね。その一方で、読者に強い印象を残す雪のシーンというのは、考えてみたらそれほど思い当たらなかったりします。

 そんな中、最初に思い浮かんだのは、藤子・F・不二雄『エスパー魔美』より「雪の降る街を の巻」。主人公の女子中学生、魔美が、画家の父親のヌードモデルになるシーンが多く描かれ、そこが話題になったりした作品ですが、この一篇では、そんな魔美のお父さんとお母さんの馴れ初めが、魔美の超能力を介す形で描かれます。重要な役割を果たしているのが、言葉通りの雪景色の街と、内村直也作詞、中田喜直作曲の歌「雪の降るまちを」。アニメでも再現されていましたが、切々とした歌と、若き日の両親の恋慕がしみじみとさせられる名編です。
 切々とした冬ならば、武井宏之『シャーマンキング』(第30夜)の中の一エピソード「恐山ル・ヴォワール」も忘れられません。まだ幼かった主人公の麻倉葉(あさくら・よう)と、その許嫁となる恐山アンナ(きょうやま・−−)の出会いを描く過去編ですが、舞台となる青森県の雪の情景と、同行する葉の持ち霊マタムネの詠う劇中詩としての「恐山ル・ヴォワール」の詩情が、少年漫画とは思えない切なさを掻き立ててくれます。
 さて、他に目を転じてみますと、漆原友紀に『蟲師』(第114夜)に描かれている雪の里の風景もまた素晴らしい。雪国だけでなく、海沿いや夏の景色なんかもよく描かれる作品ですが、山深い雪国の静けさが真骨頂と思われます。民俗学的な色合いの強い作品だけに、雪深い土地の囲炉裏で昔話を聞いている気持ちにさせられるものです。
 ロマンチックな雪という意味では、柏原麻実『宙のまにまに』(第42夜)あたりがいいですね。高校の天文部が題材の作品ですが、星をみるには冬の山が一番、というわけで、かなりガチンコな冬山観測を見せてくれます。自分も天文部だったので経験がありますが、雪も星も綺麗ですが下手したら死にますって! でも「死んでもいい」と思うほどに綺麗なんですよね(アブない)。
 ちょっと見方を変えて、閉鎖状況としての雪景色としても幾つか思い当たります。
 まずギャグですが、岡田あーみん『こいつら100%伝説』(第96夜)での耐寒訓練の話は印象深いです。訓練に行った冬山で遭難するなんて、シリアスに描いたら相当やばいエピソードですが、そこは岡田あーみん、見事なまでにドリフ的な展開なっています。
 シリアスな雪山だったら、『金田一少年の事件簿』でしょうか。警察の科学捜査が入らない状況を作り出す、俗にいう“嵐の山荘もの”の変形としての雪山ものは定番と云えば定番ですが、当然この漫画の中にも同様のシチュエーション下で起こる事件が出てきます。ここでは雪は、屋外にいれば凍死しかねない状況を作り出す装置として機能しています。
 閉鎖された状況なら花輪和一『刑務所の中』(第71夜)もそうですね。こちらは作者の刑務所生活を描いたもの。ですので雪は完全に脇役ですが、作者が収監されていたのが函館の刑務所なので、その寒さの表現として登場します。
 最後にバトルものとして2作ほど挙げましょう。藤田和日郎『うしおととら』(第64夜)と和月伸宏『るろうに剣心』(第35夜)です。どちらも雪景色を舞台とした赴き深い一篇があります。まず『うしとら』は作者が北海道出身ということもあって、札幌を舞台とした雪女の、切なくも暖かみのあるエピソードが。後者の今夏ふたたび映画化される『るろ剣』では、主人公、緋村剣心(ひむら・けんしん)の若かりし頃の消せない罪の発端となった出来事の、切なくも美しい舞台として、雪の降る森林地帯が設定されています。

 ばーっと挙げつらってみましたが、雪というのは、この世ならぬ美しさと、その冷たさゆえの死のイメージを併せ持つ要素なんだと思います。だから漫画としては、戦いにせよロマンスにせよ、ある一連の出来事の最終局面の場として用いられることが多い印象です。まぁその一方で、もちろん冬の風物詩として描かれることも(特に日常系の作品では)多いのですけど…。
 今回の東京の大雪でも、自分はちょっと感傷的になって普段あまり持ち出さないデジカメを構えて街の様子なんかを撮ったのですが、そういう気持ちを掻き立てる非日常性をもたらす力が、この純白の気象現象にはあるのでしょうね。

 というわけで、今夜はここまで。

 - 随意散漫

 

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