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【随想】卒業シーズンに、“卒業”を描いた漫画を想う

      2014/08/03

黄色い本 (アフタヌーンKCデラックス (1488))スプリガン 1 (My First WIDE)ハチミツとクローバー 10 (クイーンズコミックスDIGITAL)神戸在住(10)  (アフタヌーンKC)

 3月も25日を過ぎて、そろそろ卒業式シーズンも終わろうかというところですかね。
 自分もそれなりの数の卒業式を経験してきましたが、どうにもあの雰囲気には弱いです。つい涙腺が緩んでしまう、といいますか。それはともかく、そんな季節に合わせて今回は“卒業”のある漫画について語ってみようかと思います。

 “卒業”と云えば、やっぱり卒業式ですよね。学園コメディorラブコメなら、イコール最終話になることも多い王道パターンです。そんな中で自分の印象に残っている卒業式として、まず挙がるのは『あずまんが大王』(100夜100漫第46夜)でしょう。女子高生の日常(と一部ふしぎな幻想)を連作4コマという形式で綴った日常系漫画の源流のような作品ですが、主人公たちの高校卒業ですっぱりと終了したことも印象的です。そんな彼女たちの卒業式は、やっぱりちょっと笑ってしまうファニーさを含みつつも、しみじみと感動的でもあります。
 感動的な女子高生の卒業としてはもう一作、『黄色い本 ジャック・チボーという名の友人』(100夜100漫第25夜)も印象的。ただひたすらフランス文学の大作『チボー家の人々』を読む女子高生と、彼女の脳内での『チボー家』作中人物との交流を描いた漫画ですが、彼女が卒業する朝の、作中人物たちのやり取りがじわりと涙腺を刺激してきます。考えようによってはヘンな漫画ですが、こういう卒業の在り方もいいなー、と思います。
 他にも『宙のまにまに』(100夜100漫第42夜)とか、綺麗な感じの卒業を描いた漫画は色々ありますが、逆に闘う男子高校生の卒業はどうでしょう。『スプリガン』(100夜100漫第10夜)の主人公は、現役高校生ながら遺跡を護るエージェントをやってますが、急な任務が多いのでどうしても高校は休みがち。ゆえに単位取得(ひいては卒業)が危ぶまれるわけなんですが、作中で無事卒業できた事が描かれています。少し誇らしげに示された卒業証書が、殺伐&ファンタジックな作風の中で逆に活きていると思います。

 高校ばかりではなんなので、それ以外の“卒業”もみてみましょうか。
 『まじかる☆タルるートくん』(100夜100漫第98夜)の終盤では、主人公たちの小学校の卒業式が描かれます。まあ、それまでの展開からしておよそ小学生らしくない彼らの卒業ではありますが、それだけに小学生だったんだなー、と不思議な感慨を抱きます。ストレートに感動的な場面でもありますけれどね。
 大学なら『げんしけん』(100夜100漫第3夜)の卒業式がまず思い浮かびます。ヌルいヲタクだった学生たちが、社会に漕ぎ出していく様子が軽妙と少しの切なさをもって描かれていて、ちょっと自分の大学卒業の頃を思い出しながら読みました。
 大学からの卒業といえば『ハチミツとクローバー』(100夜100漫第85夜)も外せませんね。美大というだけでもナイーブな印象なのに、そこに真摯な恋情の結末と、皆が離ればなれになるという“卒業”という舞台が相まって凄い破壊力になっています。何となく、朝まだきの時間に独りで楽しんで頂くと非常に感情移入できるのではないかと思います。
 同じ芸術系の学生の卒業でも『神戸在住』(100夜100漫第55夜)はまた一味違います。大恋愛や大イベントはなかったけれども、毎日通った学び舎や、大好きな友達、働くことになった事務所の同僚、そして神戸という街への想い。それらが東京の友人へと宛てた手紙という形でもって描かれる主人公の卒業前後のエピソードは、穏やかさの中にも主人公らしい、しなやかな強さが垣間見れて、まことに素敵です。

 ここまで比較的現実に近い世界を舞台とした漫画の“卒業”ばかりでしたが、ラストにファンタジー世界での“卒業”を1つだけ書き加えておきたいです。それは、黄金期の『少年ジャンプ』の一角を担ったドラクエ漫画『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』(100夜100漫第90夜)より、「勇者の家庭教師」(実際は勇者以外も指導してます)ことアバン=デ=ジニュアール3世が、弟子である主人公たちに卒業の証として「アバンのしるし」を贈る場面。
 現実世界での卒業式と違って、ここでの“卒業”の儀式は戦いの最中で慌ただしく行われます。安全のため防御呪文で動けなくした主人公たちに対しアバン先生が卒業の証を与えつつ一方的に語りかけるというものですが、これからの死闘を予期した彼の言葉は、それだけに弟子たちと読者の心に響きます。

 数多の漫画で、まだまだ沢山の“卒業”が描かれていますが、今回はこの辺りにしておきます(来年もやるかもしれませんし)。
 当然ながら“卒業”は物語のラストに持ってこられることが多いようですが、一方で大きな区切りとして描かれる場合も、ままあるようです。いずれにせよ、今の場所を巣立って新しい風に乗る主人公たちに、読者は「おめでとう」を云うと同時に、自らの気持ちも新たにするんだろうなー、と、この時期に諸作を読み返して思ったのでした。
 最後になりましたが、この春なんらかの“卒業”を迎えられた方、おめでとうございます。新しい場所での活躍をお祈りします。

 - 随意散漫

 

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