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【一会】『プリンセスメゾン 2』……シャンソン人形とヘドバンと

      2016/03/03

プリンセスメゾン 2 (ビッグ コミックス)

 居酒屋「じんちゃん」に勤める年収250万円ちょっとの沼越幸(ぬまごえ・さち)。彼女の“運命の物件”探しを中心に置きつつ、それ以外の女性の“住まいと孤独”についてのエピソードも散りばめた『プリンセスメゾン』の2巻が、先ごろ発刊されました。物件探しの実際的なポイントを押さえつつも、いわゆる業界紹介漫画とは一線を画した、抒情と余韻が感じられる漫画です。

 1巻では都内のマンションを検討しつつ、要さん、亜久津さんといった持井不動産で働く派遣社員の2人と仲良くなって「沼ちゃん」と呼ばれるようになった幸。今巻ではさらに条件を絞った(=現実的な)物件を見ていきます。色々とサポートしてくれる持井不動産のチーフ格の男性・伊達さんは、幸を「ちょっといいな」と思っているようですが、なかなかもう一歩が踏み込めない様子。今巻の帯にもなっていますが、結婚について「夢のまた夢でしょうけど」と語る幸に何も云えないのは、スワンボートに乗れないこと以上に、冷静で理性的過ぎる彼のウイークポイントだと感じました。

 そんな淡い恋心が描かれたり、1人でマンションを買おうとする幸の過去が少し明かされたりもする今巻ですが、やはり、それぞれの女性の“住まいと孤独”の描かれ方に目が行きます。
 派遣社員であっても、キャリアウーマンであっても、主婦であっても、芸術家であっても、それぞれの形でそれらは彼女たちの前に横たわっています。ただ、それらを過度に暗いものとして扱わず、誰にでもあるものとして描くところが、この漫画の味でしょう。「また不動産屋で現実見ちゃ」った亜久津さんが口ずさむセルジュ・ゲンスブール作詞・作曲「夢見るシャンソン人形(Poupée de cire, poupée de son)」が、そうした女性の現実というものを自嘲しながら飄々と渡っていこうとする態度の表れならば、要さんがダウンロードし幸とヘドバンするTHE BLUE HEARTSの「終わらない歌」は、正攻法で乗り越えようとする意思表示と云えるのかもしれません。
 (↓いずれも動画がありましたので、資料として載せておきます。)


 幸や持井不動産の人々の物語はさて置いて、それ以外で今巻の印象的な人物を挙げたいと思います。フードコーディネーターの笠沢さんや、旅先の温泉で溺れていた豊田さんも捨てがたいですが、1人挙げるとすれば、ここはやはり偏屈な染色アーティスト藤堂紅さんでしょうか。
 おとぎ話の魔女のような見た目のインパクトも凄いですが、孤独であることを意に介さず(むしろ楽しんで?)暮らし、仕事をする様が力強いです。1巻に出てきた老漫画家の井川流先生もそうでしたが、老いるとは、自らの孤独と上手に付き合えるようになること、とも思えます。

 予算と物件のレベルが見合ったことで、幸の“運命の物件”探しは一歩前進といったところ。このまま候補を幾つか当たり、絞り込んで成約となるのか、あるいは何か別の展開が待っているのか。単純計算では今秋遅めの刊行と思われる次巻に続きます。「女子」と「住」がもっと近づくwebサイト『モチイエ女子web』に掲載されているプリンセスメゾン モチイエ女子web限定秘話もチェックしつつ、楽しみに待ちたいと思います。

 - 一画一会, 随意散漫 , ,

 

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