【一会】『七つの大罪 23』……健気に自堕落に傲慢に、抗う者たち | 漫画のレビュー&随想 | 100夜100漫

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【一会】『七つの大罪 23』……健気に自堕落に傲慢に、抗う者たち

      2016/11/25

七つの大罪(23) (講談社コミックス)

 人間・聖騎士・そして〈七つの大罪〉と、魔神族および〈十戒〉という二大陣営の戦いを中心に、ドルイド・妖精・巨人・女神族といった各種族の関わりが物語を深みに与える、鈴木央的アーサー王物語『七つの大罪』。最新の23巻が先月刊行となりました。ちなみに今巻の限定版付録は特製クリアダイス&ボードゲーム。単純な双六を想像してましたが、七つの大罪 ゲームブック 迷いの森の冒険と同じ藤浪智之氏のゲームデザインによる、30ページ近いルールブックが付いた本格的なものでした。これから人が集まる季節ですし、遊んでみようと思います。

 付録の話はその辺りにしまして。遅くなりましたが、絶望的な戦況となった前巻からどのようにストーリーは変転していくのか、概要と感想を綴りたいと思います。

 前巻での〈憤怒の罪(ドラゴン・シン)〉メリオダスの敗北(死?)により、〈十戒〉たちは世界の覇権を手にしました。人間たちの社会は、暗く沈み荒んでいきます。
 メリオダスの遺した〈豚の帽子〉亭も、さぞ沈痛な雰囲気だろうと思いきや、切り盛りするエリザベスの表情は意外と明るかったり。かつて敵対していた〈不気味な牙(ウィアード・ファング)〉のゴルギウスという珍客にもスープを振る舞うなど、優しい心もそのままです。「どんな状況だろうとハラは減るし酒は飲みてえだろ?」という看板豚(?)ホークの言葉もごもっとも。今や〈豚の帽子〉亭は、魔神族に屈服するのをよしとしない(といって正面切って戦うだけの力はない)人間たちのオアシスになっているようです。
 これまで、魔神族に対して「従う/反撃する」という二択のいずれかを採った人間たちが描かれてきましたが、ここにいる人々が採ったのは単純に「嫌だから従わない」という選択肢。そういうしたたかさもまた、人間らしいと思います。

 そんな彼女たちのもとを訪れた次なる客は、なんと元聖騎士長のザラトラスでした。この人、物語時間で云えばずっと前に死んで(殺されて)いるはずなのですが、〈十戒〉の魔力の影響で蘇ったとか。だとすれば、〈十戒〉の台頭にも少しばかり良い面があったということでしょうか。
 それにしても、心・技・体を兼ね備えた聖騎士の模範のような印象だったザラトラスですが、実際にはかなり軽い性格をしている模様。まぁそれでも実力は本物でしょうし、本当に凄い人というのは、力みや気構えのないリラックスした言動をするものなのかもしれません。
 エリザベスの強力な治癒力で癒やされたとはいえ傷跡を残して横たわるメリオダスに、ザラトラスは向き合います。明らかに死を迎えたように見えるメリオダスですが、ザラトラスは彼は死んでいないと考えている様子。ザラトラスの術によって、画面は再びメリオダス達の過去へと転換します。
 過去を見ることで分かったことは2つ。〈七つの大罪〉は、そもそも〈十戒〉に対抗することを目的に結成されたということ。そして、確かに、メリオダスは簡単には死なないということです。

 というか、メリオダスは「死なない」というよりも「死ねない」と表現した方が正確かもしれません。そんな彼の意識は煉獄にありました。姿の見えない謎の存在――それはメリオダスを「息子」と呼びます――の呪いによって、彼は感情を食われることで不死性を保っている、という解釈ができそうですが、まだ厳密なところは解りかねます。
 それにしても、“姿の見えぬ何者かと死ねない者”というモチーフは、『銀河鉄道999』(100夜100漫第82夜)のメーテルを思い起こさせます。メリオダスを「息子」と呼ぶ彼の者の正体は、物語の根幹に関連が深いと考えますが、どうでしょうか。

 一方、ギルサンダーら一部の聖騎士たちによる、勝ち目の見えない戦いが続いています。今巻の表紙でメインを張っている〈十戒〉の一角、無精ひげが印象的なエスタロッサの戒言(特殊能力)は「慈愛」。自身に対して憎悪を持って立ち向かう者を無力化する、というものです。
 この力によって無敵と思われたエスタロッサですが、〈七つの大罪〉最強の男の呼び声も高い〈傲慢の罪(ライオン・シン)〉エスカノールが、またも傲慢に活躍してくれています。同じく〈十戒〉の一角、「敬神」のゼルドリスの戒言によって、背を向ける者が強制的に服従させられ、人間たちはさらなる不利へと追いやられていきますが、そんな中でのエスカノールの傲慢ぶりには、勇気づけられますね。
 基本的に人間を下に見ているエスタロッサと、自分の力がほぼ最大となる正午をひかえ、エスタロッサを「自分より弱い者」と言い放つエスカノールの“傲慢合戦”は、今巻の見所かと思います。武技も魔力も並外れた両者の戦いの決着はまだ不明ですが、とりあえず今は、この人の強さが頼もしい限りです。
 しかし、〈十戒〉の面々から見ても脅威と映るエスカノールとは、何者なのでしょうか。一応、“ただの人間”ということになっていますが、本当にそれだけの存在なのか。秘密が隠されているような気がします。

 エスカノールが傲慢絶頂な頃、リオネス城前では〈十戒〉のモンスピートとデリエリがギルサンダーたちに迫っていました。ここで現れたのは、リオネス国王バルトラの実弟にして聖騎士団〈蒼天の六連星〉を率いるデンゼル。モンスピートも云っていますが、正直なところ〈十戒〉に対抗できるほどの実力は無いのでは、と思っていたら、彼は奥の手を出してきます。
 それは、自らの命をかけて女神族〈神兵長〉ネロバスタをその身に顕現させるというものでした。女神族と云えば、エリザベスもそうでしたが、その力は魔神族に対する大きな戦力となります。が、顕現したネロバスタは、別に人間の味方でもない感じ。さらに、何やら因縁のありそうなデリエリが激高し、圧倒されてしまいます。「女神族」という字面からは清らかな(存在的にも政治的にも)種族のような先入観を持ちますが、どうも後ろ暗いところがありそうです。

 そんなこんなで、エスカノールの奮戦はあったものの依然として、ドレファスの身体を乗っ取ったままのフラウドリン、〈十戒〉では最も術巧者っぽいグレイロード、そしてモンスピートとデリエリといった〈十戒〉の面々に攻められ、未だリオネス城のピンチは去らずといったところかと。そんな王都へ、エリザベスはホーク、ザラトラスを伴い、ホークママを駆って急行します。
 ホークが魔神の肉を食べて変になったりもしてますが(そういえばそういう魔力を持ってましたね)、さっそく一行はモンスピートとデリエリに見つかり、ピンチに陥ります。デリエリがエリザベスを見て云った台詞や、そのデリエリに対してエリザベスが使った魔力など、気になることが幾つかありますが、それはさておき。絶妙なタイミングで復活したメリオダスに、エリザベスが再会の涙を流したところで今巻はお開き。次巻へと続きます。

 巻末には「番外編/祭壇の王」の前振りと思われるエピソードが収められています。11年前のドルイドの里での、〈七つの大罪〉と女神族ジェンナたちの出会いを描いたエピソードのようですが、コミカルな導入の続きは次巻に収録されるのでしょうか。そんな引きもありつつ、予告からはヘンドリクセンとマーリンの活躍が予想される第24巻が待たれます。
 次巻刊行は、12月16日。残りの〈十戒〉の数を数えつつ、楽しみにします。

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