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【一会】『七つの大罪 19』……“傲慢”かまして、おやりなさい

      2016/03/13

七つの大罪(19) (講談社コミックス)

 中世イングランドを思わせるブリタニアを舞台に、騎士団〈七つの大罪〉や聖騎士達と、〈十戒〉なる魔神たちを筆頭とする魔神族との戦いが繰り広げられている『七つの大罪』。予告通り先月17日に19巻が刊行されました。今巻の限定版付録は手帳型スマホケース。スマホはあれどケースは使わないので今回の限定版は見送ったのですが、入手した方の感想はいかがでしょうか。

 それはそうと、今巻では最後の〈七つの大罪〉メンバーである〈傲慢の罪(ライオン・シン)〉エスカノールも登場し、物語が佳境に入ってきた様子。エレイン、ジェリコを伴った〈強欲の罪(フォックス・シン)〉バンと、〈十戒〉を構成する「真実」のガランと「信仰」のメラスキュラとの戦いからエスカノールの登場が1場、かつての女戦士長マトローナと再会したディアンヌによる2場、魔神が憑いているドレファスと〈蒼天の六連星〉団長にして国王バルトラの実弟デンゼルによる3場という3場構成の今巻を、順に振り返ってみたいと思います。

 まず最も紙面が割かれているバンたちの戦いから。前巻では形勢有利と思われたバンですが、やはり〈十戒〉は一筋縄ではいかず、メラスキュラの能力によってピンチに陥ります。バンにとっては悲しい別れとなる、とある人物の尽力によってその場は切り抜けますが、それは同時に、戦闘力を喪失したバンとエレインを抱えたジェリコの逃避行が始まりでもありました。実力的には〈十戒〉にまず敵わないジェリコですが、その彼女の頑張りが熱いです。そんなジェリコを、遊び半分に追い詰めていくガランとメラスキュラ――なんですが、なんだか鈴木先生の初期作品『ライジングインパクト』(100夜100漫第58夜)を彷彿とする追い詰め方で、シリアスなシーンなのに不思議と愉快な感じを覚えたりもします。
 そもそもガランとメラスキュラは〈十戒〉の中でも割と享楽的な性格をしているようで、その後もジェリコを追って訪れたとある酒場でエールをがぶ飲みするなど、やりたい放題やってくれます。もちろん恐ろしい魔神たちですが、酔っ払う様子は少しばかり親近感を覚えますね。
 そんな魔神に追い詰められたバンたちを救うのが、〈七つの大罪〉最後のメンバー、エスカノールというわけです。この漫画の元ネタであるアーサー王伝説にも記述があるようですが、ある条件下で飛躍的に力を増すという彼の闘級は、メリオダスすら上回るという強者ぶり。戴いた異名の通り、魔神たちを極めて傲慢な言動で圧倒する様は、それまでジェリコに感情移入して読んでいたために一層カタルシスを感じさせてくれます。
 彼の魔力「太陽(サンシャイン)」の詳細はまだ不明ですが、「全ての種族の頂点に立つ者」としての人間であると自らを表現する彼には、“万物の霊長”としての人間観が想起されます。人間には大いなる力が秘められているという考え方は、洋の東西を問わず散見される思想のようですが、それを“傲慢の罪”を冠する人物に当てるのが、なんとも皮肉で良いと思います。

 バンたちのパートがひと段落し、次に描かれるのは、16年間の記憶を失った〈嫉妬の罪(サーペント・シン)〉ディアンヌのエピソード。以前は戦士長として厳しくディアンヌに当たったマトローナですが、再会した彼女は家族を得て、すっかり柔和な女性になっていました。
 そんなマトローナから、巨人族の長のみに受け継がれる「ドロールの舞踊」を伝授されることになったディアンヌは練習するのですが、なかなか難しいようです。そういえば、この踊りの描写に今度は『ブリザードアクセル』を思い出したりもします。
 ドロールというのは巨人族の祖先にして大地の神のようですが、どうもそれだけではない様子。家族のために再び戦場に立とうとするマトローナとディアンヌの行く手には、暗雲が立ち込めていそうです。

 そして、今巻ラストの1話で描かれるのは、いまだに魔神フラウドリンが入ったままのドレファス(というか、フラウドリンが主体と云っていいのかもしれません)と、〈蒼天の六連星〉団長にして国王バルトラの実弟デンゼルの対峙です。「証明したいのは/人間の手でも古の魔神を討つことが可能であること」と云い放つデンゼルは、人間としての気迫に満ち満ちています。ジェリコといいエスカノールといい、今巻は“人間の強さ”というものがテーマなのかもしれません。
 部下のデスピアスとともに、闘いを有利に進めるデンゼルですが、ここでフラウドリンから衝撃的な事実が告げられます。それは、〈七つの大罪〉と〈十戒〉の両方に関わることですが、当の“本人”はまったく自覚がない模様。

 ともあれ、ディアンヌたちともども、物語は〈十戒〉の仕掛けた「バイゼル大喧嘩祭り」に収斂していくようで――といったところで、今巻はお開きとなります。不穏に満ちた「大喧嘩祭り」を描く次巻20巻は4月15日刊行予定。「おすわりホーク」のフィギュアが付いた限定版もチェックしつつ、楽しみに待ちたいと思います。

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