【一会】『まるせい 2』……真摯にエロスを追い求めるということ | 漫画のレビュー&随想 | 100夜100漫

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【一会】『まるせい 2』……真摯にエロスを追い求めるということ

      2014/09/06

まるせい (2) (ヤングキングコミックス)

 成年漫画に青春をかける、作者の経験(色々な意味で)と創作を混濁させて生み出された青年、花比野Q一朗(はなびの・キューいちろう)の物語も、無事2巻の刊行を迎えました。前巻の最終盤で大変かわいそうなことになったQ一朗ですが、どうにか持ち直して仕事(成年漫画の執筆)を進めつつ、やっぱりあの女性この女性と桃色なことになったりしております。桃色なだけでなく、とある電撃的な生活の変化とその余りにも短い終結もあったりして、妙に疾走感のある作風に仕上がっているのも、なにやら魅力的だったり。
 元アシスタントの下丸子まるこ(しもまるこ・――)、元彼女で現アシスタントの麻生朋絵(あそう・ともえ)、編集者の吉永櫻子(よしなが・さくらこ)に新担当の市岡愛未(いちおか・あいみ)といったQ一朗の周囲の女性たち(およびQ一朗氏との関係)が創作なのかノンフィクションなのか、幻惑された自分は1巻について書いた時に思わず取り乱したものですが、今巻のあとがき漫画によれば創作とのこと。ただし、やっぱりモデルは存在するようで、現実に存在する人を元にしたキャラクターを脱がせたりカラませていいのか、という辺りに、先生もそれなりに困惑というか呻吟というか、されているのが新鮮に思えます。

 自分が世の中に成年漫画すなわちエロ漫画なるものが存在することを知ったのは多分中学1年生くらいの頃だったかと思います(遅い?)。で、その時ほぼ自動的に思い至ったのが「こういう漫画を描いている人(たぶん男性)は、やっぱり人よりもエロい人なんだろうか」とか「本の出版社には女性もいるだろうし、そういう人たちはエロ漫画家をどう思ってどう付き合っているのだろうか」といった疑問なわけですが、自分個人にとっては、この漫画はそういう青臭い問いへの一定の答えに思えたりもします。
 もちろん創作されている部分も極めて多いと思いますけれど(さすがに女性の担当がヌードデッサンのモデルなんかはしないですよね、多分)、真剣に表現としての「エロさ」を追い求める姿勢は、現実と概ね変わらないのではないでしょうか。それは、「格好よさ」とか「可愛さ」とか「面白さ」、「怖さ」といったものを追い求めて日夜頭をひねり議論を戦わせる表現者や編集者たちと、そう大きくは違わないでしょう。

 その意味での今巻のハイライトは、一般誌で描くことになったQ一朗が自分でやりたい表現と規制の狭間でひとしきり苦しむところや、「コミテュア」なる同人誌即売会で自分の本の売れ行きが芳しくなく、今更ながら自分の作風を顧みて「ところでエロいって…/何でしょう…」と編集者に問うところではないでしょうか。そこには、社会一般で考えられているような「一般漫画>エロ漫画」という地位の不等式など入り込む余地もありません。「エロの神よ…エロースよ!!/アフロディーテよ!!/どうか…/私に…性なる翼を…!!」と念じつつも畢生のネームを切るQ一朗の姿は、もちろんギャグでもありますが、その一方で創作者の真摯な祈りにも見えて、自分にとっては印象的でした。
 そんな真面目にピンクなQ一朗先生の漫画もそろそろ波に乗り、一般雑誌『ネオタイプ』から食べ物漫画コラムの依頼が来たり、本業でも前途が開けてきた辺りで今巻はおしまい。相変わらずのノリでエロ漫画道を進んで行って頂きたいと思います。

 - 一画一会, 随意散漫 , , ,

 

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