【一会】『月光条例 26巻』……それぞれができるコト | 漫画のレビュー&随想 | 100夜100漫

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【一会】『月光条例 26巻』……それぞれができるコト

      2014/08/03

月光条例 26 (少年サンデーコミックス)

 「随意散漫」カテゴリでは継続中の漫画についても言及する、というわけで、先日発売の『月光条例』26巻について書いてみようと思います。(←後日追記:単行本1巻ごとの記事については、ひとまず「随意~」のサブカテゴリとして「一画一会(いちがいちえ)」を設定しました。)
 一応ネタバレになるので、以下ストーリーの説明は隠しておきます。

  前巻では『うしおととら』や『からくりサーカス』といった物語すら消し去ってしまった月よりの使者たち。単身で月光は「月の客」の精鋭ナナツルギたちと戦うが、苦戦気味。そこへ北極からやってきたハチカヅキが合流、鉄棒となることでナナツルギの1人ガンドウを下す。しかし、ハチカヅキが来たことにより、おとぎ話の登場人物たちが北極にいることが知られてしまい、「月の客」の大艦隊が北極へと向かう。
 深海に匿われているエンゲキブ=カグヤと、そのお目付の天童とトショイインの3人も、北へと向かう月の者たちを見て、助けにいくことを画策、天童が持ってきていた『うらしまたろう』の本から浦島太郎の世界へ入り、そこで乙姫の軍船、竜宮丸(りゅうぐうまる)を入手、これで月の者たちを追撃すべく現実世界へと帰還する。「月の客」たちと交戦しつつ、現実界の海を目指す3人だが、敵の数に押され窮地に陥ってしまう。そのピンチを助けたのは、かつて月光やエンゲキブたちに救われた月打キャラクター、シンデレラと赤ずきんだった。2人は月光の真意を悟り、打ち出の小槌で人間となることで北極に封印されずに済んでいたのだ。
 一方、北極では打ち出の小槌の力で雪に変えられ身動きのとれないおとぎ話の登場人物たちが絶望しかけるが、一寸法師の檄により立ち直り、願いを叶える品を持つ登場人物とその周囲の者たちによって、ある願いを叶えるべく行動を開始する。北極に降り注ぐ「月の客」たちの攻撃。間一髪で願いを叶えることに成功した登場人物たちだったが、長老であるはだかの王様が指示した願いごととは、この北極を夜にして欲しい、というものだった。
 果たして願いは叶えられ、宵闇に包まれる北極。そこに表れたのは、「月の客」たちがやってくるために通路が開かれた状態の月だった。そこからの青い光は、登場人物たちすべてを月打するに十分だった。月打された登場人物たちは常識外の存在となるため、打ち出の小槌の力を破って元の姿へと戻り、「月の客」との交戦を開始する。月打された事により、登場人物たちの攻撃は「月の客」に通用し、戦況は好転するに思われたが、「月の客」は更なる援軍を要請し、主砲カグライの一斉射撃準備に入った−−。

 大まかなストーリーだけ追えば、流れに沿った展開と云える今巻ですが、やはり藤田和日郎作品の熱さは、要所要所の台詞回しにあります。まず月光がハチカヅキを褒めて(武器としてだけど)の台詞、オールドファッションな不良の啖呵という感じでいつもながら壮快です。
 そしておとぎ話の登場人物たちを助けようと北極へ赴こうとするエンゲキブへの天童の激白。恋愛的にはエンゲキブへの思いは叶わないことがほぼ確定していることを受け入れながらも「オレがおめーを死なせたくない」と云い切る開け広げな優しさが沁みます。それに対するエンゲキブの「「あたしは全力で生きた」って思わせて」も、自分が死ねないからこその覚悟で、胸がつまります。やっぱり“永劫を歩く女”のイメージは、藤田作品に不可欠な要素でしょう。
 しかし、今回いちばんいいところを取っていったのは、「男も女も「死なない」だけが幸せじゃない」という名言を残した潜水艦クルーのスティーブンスさん。と、彼の回想中に出てくるお母さん。「できるコトをみつけたら、全力でやりなさい」とは、当然といえば当然過ぎることですが、意外と大人になると色々なものが邪魔をして全力を出し辛くなるものです。そういう状況への喝だと、自分は読みました。『ダイの大冒険』(100夜100漫第90夜)でもアバンの書の中で先生が「それぞれができることをやった時、たとえ絶望の縁でも光が見えるでしょう(細部うろ覚え)」と云っていますが、それと同じですね。
 実際に本巻でも月光、わらしべ(!)、ハチカヅキ、天童、エンゲキブ、トショイイン、シンデレラ、赤ずきん、一寸法師と、それぞれができることをやったからこその事態の好転です。こういう大人数の活躍を割愛せずに描くところもまた、藤田作品の魅力と思います。
 風雲急を告げる本編ですが、まだ最後のどんでん返しがあるんじゃないかと自分は思っています。ともあれ楽しみに続刊を待ちます。

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