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【一会】『白暮のクロニクル 2』……“オキナガ”たちの日常的な悔恨

      2014/08/03

白暮のクロニクル 2 (ビッグコミックス)

 早いものでもう2巻が出ました(出たのはGW前の4/30ですが)。とはいえ1巻から3か月経ってますので、週刊連載としては普通のペースですかね。
 さて、今巻で描かれた要素は、羊殺しの犯人は誰か…という話は置いておいて、大きく云うと2つかと。不死である“オキナガ”な人々の日常と、その1人である主人公格の雪村魁(ゆきむら・かい)の過去です。
 物語は過去と現在を行き来する形で展開しますが、過去編は終戦間際の戦地から始まり、終戦を経て今に連なる切ない幕切れ。これまでのままじゃいられなくなった人間の、決別の物語と云えるでしょうか。
 対して現在の方は、眉毛がトレードマークな伏木あかり(ふせぎ・−−)が、夜間衛生管理課(やえいかん)の通常業務として地域に住まう“オキナガ”の人々を訪問していく様子を描きます。歳をとらず、殺されなければ死なない“オキナガ”ですが、その暮らしぶりは独居老人のそれと同じ。来訪者が政府の人間だとしても、たまのお客だから無駄話をしたくなる。割と現実世界でも聞くような話が、ここでも展開されています。

 「死なない」とはいっても、それは「感情がない」とはまた違うことのようです。“オキナガ”というネーミングに、自分は『からくりサーカス』(100夜100漫第27夜)に登場する不死者“しろがね”と似たイメージを持っていましたが、今巻で明らかになったその由来も含め、だいぶ毛色の違う存在と捉えた方がいいようです。
 こうして書いてくると暗鬱とした物語のように思われるかもしれませんし、じっさい戦争中や戦後にかなり絶望的なシーンもあるのですが、どっこいそこはネアカ(もう死語でしょうか。「根が明るい」の略です)の作者。前巻に引き続いて“お役所のお仕事”的なノリの軽さがあります。あかりたち普通の人間も、魁や他の“オキナガ”も感情たっぷりですし。少年誌では無理だったであろう、「繋がった」「繋がってない」等、ちょっと艶のあるネタなんかも差し込んで読者の緊張をほぐしてくれます。
 日の光を弱点とし、生肉や血液を好む“オキナガ”という存在について、少し輪郭が見え始めた感じではありますが、まだまだ正体が明かされたわけではなさそうです。が、それでも“オキナガ”に“なりあが”った(ってしまった)者の困惑とか諦めといった感情を、明るく乾いたタッチながらも印象深く描きつつ、政府というものの恐ろしさを匂わせ、更にあかりと魁を結ぶ線上に棗(なつめ)という人物を置いたりして、物語は深みを帯びていきます。
 魁たち“オキナガ”の来歴や今後には、さらに過酷な出来事がありそうな気もしますが、それを受け入れつつも軽妙さを失わない、大人のファンタジーとして展開されていくといいな、と思います。

 - 一画一会, 随意散漫 , ,

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