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漫画の感想やレビュー、随想などをつづる夜

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【一会】『白暮のクロニクル 1』……お役所と人ならぬ者と眉毛

      2018/07/20

白暮のクロニクル 1 (ビッグ コミックス)

 ゆうきまさみ氏が漫画家になる前、地方公務員として働いていた(らしい)ことは、『機動警察パトレイバー』(100夜100漫第45夜)でも書いたし、そう認識されているファンの方も多いと思います。本作『白暮のクロニクル』の主人公は「地方」ではありませんが、厚生労働省で働く公務員であることには違いありません。

 物語の大筋は、“オキナガ”なる長命不死の種族を殺す事件が連続したことに端を発する、厚生労働省の夜間衛生管理課(やえいかん)に抜擢配属された伏木あかり(ふせぎ・−−)26歳と、その“オキナガ”の1人で、御年88歳ながら外見はあかりより年下に見える雪村魁(ゆきむら・かい)の凸凹タッグによる真相究明といったところ。さすがベテラン、“オキナガ”を始め、按察使(あぜち)文庫とそこを管理する按察使薫子、羊殺しなどの言葉と設定を散りばめて奥行きを出しつつ、辿り着く真相は意外性もあって楽しめます。
 けれども、自分が嬉しく思ったのは、全般にわたって発揮されている“お役所”感です。パラレルな日本という世界設定ながら、レバ刺しの禁止などの台詞から現代とほぼ同じ時代を舞台にしていることが知れる本作ですが、それでも『パトレイバー』の頃から変わらない、お役所の気楽なのかシリアスなのか今もって不明な、ともかくあの軽妙なノリが変わらず描かれていることに、思わず何かに感謝したくなるような気分で読み終えた次第です。
 特に主人公あかりの直属の上司となる久保園さんがいい味を出しています。上司といっても、あかりを夜衛管に配属させた厚労省の高級官僚、竹之内が鉄面皮な“いかにも”な上司であるのに対し、バーコード…いや、だいぶ頭頂部が寂しい状態でありながらも物腰やわらかな久保園さんはあかりにもあまり畏怖はされていない様子。けれど、そのおっとり具合と各方面への話の仕方が逆に公務員として酸いも甘いも噛み分けたオジサン加減を演出していて、何とも味があるのです。
 あかりとコンビを組む魁については、まだ伏せられているところが多く、どんな過去があり本心があるのかが明かされていくのが楽しみです。外見が若いけれども戦争に行ったことがあるくらいの年ですので、パソコンに疎かったりするギャップは面白く思いました。
 そして、最後に特筆すべきは、やはり眉毛かと。ゆうき漫画には眉毛が立派な女子が過去おおく登場しておりますが、この漫画でも、あかりはしっかりその遺伝子を受け継いでいます。見方によっては野暮ったいのですが、これが魅力的に映るから不思議です。明かりの性格も、外見を裏切ること無く適度に庶民的で正義感に溢れており、みていて気持ちの良い人物ですね。

 まだまだ顔見せといった感の強い1巻ですが(とはいえ多分、“オキナガ”って吸○鬼のことですよね…)、既にゆうき漫画としての特徴は十二分に煮出されていると感じた1冊でした。

 - 一画一会, 随意散漫 , ,

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