【一会】『少女ファイト 13』……やりかたは、1つじゃない | 漫画のレビュー&随想 | 100夜100漫

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【一会】『少女ファイト 13』……やりかたは、1つじゃない

      2016/06/26

ポストカードブック付き 少女ファイト(13)特装版 (プレミアムKC イブニング)

 裏表紙に配された「悪役を演じきれますか?」という警句も小気味よく、図らずも高校女子バレー界のヒール的役どころを引き受ける黒曜谷高校バレー部を中心に描かれるハイセンス&メンタルな女子高生バレー漫画『少女ファイト』。12巻の時の予想通りぴったり1年で、この5月末に最新刊の13巻が刊行となりました。
 今巻の特装版の付録はポストカードブック。表紙は黒曜谷が対戦している山吹矢高校チームより柴田このみ(しばた・――)と早乙女花子(さおとめ・はなこ)のコンビです。ちなみに通常版は、黒曜谷最強世代から村上環(むらかみ・たまき)。今巻後半では繭と一緒に楽しく(?)春高を観戦する様子が描かれています。また、毎度なにかしらのネタが仕込んである各話サブタイトルですが、今巻は新旧織り交ぜた映画のタイトルのパロディかと思います。

 中身に入りましょう。今巻では2つの試合とその間のエピソードが描かれていますが、ページ数的にメインは前巻から継続の黒曜谷VS山吹矢戦と云っていいかと思います。
 全員が元漫研、作中のバレー漫画『エドガワ排球団』へのファン心が高じて春高出場を果たしてしまったという異色の山吹矢高校ですが、彼女達に対するギャラリーの反応は結構辛辣だったり。バレー一筋に取り組んできた側からすると、「オタクチーム」呼ばわりしたくなる気持ちも解ります。
 しかし、彼女たちが実力でのし上がってきたことは紛れもない事実です。実際、チームの精神的支柱であるレフト・このみは、白雲山学園にいる姉・あかりに比肩する身体能力の持ち主ですし、同じくレフト・花子のスパイクは練を魅了してしまうほど。決して色物チームではなく強敵です。
 そんな山吹矢のプレーから、“なぜバレーをするのか”という根本的な問いにとらわれたルミは動揺しますが、これまでも何かと対話する機会が多かった志乃が力付けます。自分なりの答えを出した彼女の表情は、以前より晴れ晴れとしているような。

 山吹矢の要はこのみと見た黒曜谷は彼女を疲れさせる戦法をとりますが、これで足並みを崩したこのみ達への監督・幹弓弦(みき・ゆずる)の対応が、なかなか紙一重の凄味があると思います。彼が云う「バレーを楽しもう」というポリシーは、たぶん「楽しければ負けてもいい」ということではなくて、「揺らぐことなく戦え」という戦士の心構えを指しているのでしょう。前巻では“残念なイケメン”というイメージしかなかった幹監督ですが、実はかなり“分かってる”人と云えそうです。
 このみをフォローするため『エド球』のキャラクター・大門珊瑚を思わせる獅子奮迅の戦いぶりを見せる花子に、山吹矢は奮い立ちます。が、スタミナの無さゆえに2セット先取の短期決戦しか勝算がない彼女達。次第に敗色濃厚となっていきます。
 そんな山吹矢の状況にカットインするのは、漫研メンバーをバレーに引っ張り込んだこのみの回想とモノローグ。仲間たちと「楽しい」バレーを続けるため、チーム内の「誰よりも強うなる」と姉に誓った彼女の気持ちが胸に迫りますが、それに応えようと悪役を演じる練の心意気も素晴らしいです。さらに、ずっと1人でチームの「楽しさ」を背負おうとしていたこのみに寄り添う山吹矢のメンバーの言葉にも、熱いものが込み上げてきます。会場には、『エド球』の作者でルミが慕っている堺田町蔵(さかいだ・まちぞう)の姿もありますが、両チームの心が通ったこの試合は作者冥利に尽きるものだと云えるでしょう。
 やがて、そんな奇跡のような時間にも幕切れの時が。彼女たちの春高初戦は終わりを迎えます。

 様々な思いが交錯する練習日を挟んで春高3日目。全日本のメンツも応援に来て否が応にも盛り上がる中、黒曜谷と次に当たるのは、12巻で偵察に行った鏡子が「ドッペルゲンガー高校?」と云っていた、福岡の墨日野高校。学校の名前も何となく黒曜谷と似ていますが、チームの面々はもっと似ています。ただ、似てはいても同じではないというか、外見も性格も境遇も、個々には似ていても少しずつシャッフルされていると云えばいいでしょうか。
 そんな墨日野で目を引かれるのは、やはり練とそっくりなレフトの小岩素(こいわ・もと)。勉強優先な両親から、春高を敗退したらバレーを辞めるよう云われている彼女は、自己主張が強く協調性に乏しいこともあってチーム内の火種のようです。しかし、結果的にはそんな素によって墨日野のチームワークは強化されたとも云えそうな展開に。
 部活でも職場でも、巷では「チームワークが重要」の一言で事足れりとされてしまいがちですが、きっとそれを実現するプロセスは1つではないのだと思います。黒曜谷、山吹矢、墨日野が、それぞれのやり方でメンバーの気持ちが噛み合う様子をみて、自分はそんな風に考えました。
 別世界のチームワークに接して困惑する黒曜谷ですが、ここを切り替えるのは流石のキャプテン鏡子。そんな黒曜谷の戦いぶりに、素も何がしか感じるところがあるようで、墨日野のチームワークもまだ進化の余地がありそうです。

 スコアはほぼ同点、勝負はこれから――というところで今巻は終幕。およそ1年後の刊行と思われる14巻に続きます。鏡子の秘策(?)に倣って、たこ焼きのメニューを模索しつつ、次巻を楽しみに待ちたいと思います。

 - 一画一会, 随意散漫 , , , , , ,

 

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