【一会】『少女ファイト 12』……成長、決意、暗躍、そして本番開始 | 漫画のレビュー&随想 | 100夜100漫

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【一会】『少女ファイト 12』……成長、決意、暗躍、そして本番開始

      2015/06/03

少女ファイト(12)特装版 (プレミアムKC イブニング)

 前巻の予告では今夏とのことでしたが、かなり早めの刊行となりました『少女ファイト』12巻。今巻も恒例の特装版があり、特製パスケースが付いてきます。ちなみに通常版の表紙は黒曜谷高校の現コーチ由良木政子の高校時代、特装版は朱雀高校のキャプテン寺沼理香(てらぬま・りか)と今巻で初登場の副キャプテン有栖川幾重(ありすがわ・いくえ)です。

 今巻の内容をざっくりと云うと、全日本チームの合宿から戻った練を含む黒曜谷高校や各地の強豪校の春高直前期の動向、そして黒曜谷の初戦の様子というところでしょうか。毎度いろいろな趣向を凝らしてくれる各話サブタイトルは、今巻では芥川賞作家である安部公房の作品名のパロディで統一されているようです。

 相変わらず多くの人物がそれぞれの意思で動く様子を楽しめる今巻ですが、黒曜谷の中では、一緒に九州まで偵察に赴いた犬神鏡子(いぬがみ・きょうこ)と千石雲海(せんごく・うんかい)のリーダーコンビ、全日本合宿で心身ともに進化を遂げた練とそれが眩しいシゲル、バレンタインを巡っての伊丹志乃(いたみ・しの)と長谷川留弥子(はせがわ・るみこ)といった面々がクローズアップされて描かれています。手放しで万事オーケーというわけにもいきませんが、互いを大切に思うが故のおずおずとした態度や言葉が、青春群像を感じさせてくれます。

 目を転じて各地の強豪校では、広島の琥珀学園の荒っぽさとか、九州の墨日野高校の“どっかで見た人たち”感、大阪の山吹矢高校のバレー愛も見どころではあるでしょう。しかし、ここで特に主軸になってくるのは、やはり朱雀高等学校の寺沼理香(てらぬま・りか)と有栖川幾重(ありすがわ・いくえ)、そして何かを目指して画策を続ける青磁学園の雨宮摩耶(あまみや・まや)だと思います。特に摩耶と今巻が初登場となる幾重が、遠隔的な策の打ち合いで丁々発止を演じ渡り合う様子は、今巻のハイライトと云えるでしょう。
 鏡子や黒曜谷の監督である陣内笛子(じんない・ふえこ)、練の幼馴染でもある唯隆子(ゆい・たかこ)、そして摩耶と、“策士”的な側面をもつ人物の多様さが、この漫画の一つの持ち味だと自分は思っています(そういえば9巻でシゲルは学に「策士になれ」と云っていますね)。幾重もそうした“策士”の1人であることは間違いないのですが、彼女には、策に巻き込まれた人を嫌な気持ちにさせないところがあるようです。これがリーダー的存在(というと『世紀末リーダー伝たけし!』みたいですが)の資質というものなのでしょうか。

 リーダー的存在と云えば、今巻ではもう1人、新たにリーダー的存在であることを求められる人物が出てきます(帯にも書いてあるので誰かバレバレなのですが)。彼女に与えられた助言は「嫌われる勇気を持つこと」。これは10巻あたりからコミックスの裏表紙に大書されている「悪役を演じきれますか?」に通じる言葉だと思います。
 開花してきた“人たらし”な特性を始め、色々と天与のものを持っている彼女が更に策を用いたのは、外界に向き合って自分の思う方向に変えようという覚悟だと、自分は感じました。率直に、頑張って欲しいです。

 ともあれ、これで春高の役者は揃い、本戦の開始です。
 黒曜谷の春高初戦の相手は矢吹矢高校。彼女達がバレーを始めた入り口が異質なために観客は冷ややかですが、さて、勝負の行方も含めて、この試合はどうなるか…といったところで、今巻はお開き。次巻もおそらくは1年後くらいになるかと思われます。
 再読し、この漫画における“悪役”観について考えつつ、今後も同時進行するだろうコート内外の展開を楽しみに待ちたいと思います。

 - 一画一会, 随意散漫 , , ,

 

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