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【一会】『いちえふ 福島第一原子力発電所労働記 2』……高線量、重要現場に冴える職人技

      2015/03/10

いちえふ 福島第一原子力発電所労働記(2)

 昨年5月発刊の1巻から、8か月ちょっと空いて2巻の刊行となりました、『いちえふ 福島第一原子力発電所労働記』。作者の竜田先生が現地に働きに行く期間があるので、これくらいの刊行ペースになるのは当然といえば当然でしょう。

 原発作業の様子が入り組んだ時系列で語られているという点は、今巻も1巻と同じようです。各話で示されている年月表示をよく確認して読む必要がありますね。
 就業当初は原発内の休憩所管理員として働き始めた主人公(≒竜田先生)ですが、もっと高線量な現場で働きたいと色々と動くことに。なにやらスパイものめいたプロセスもありつつ、ついにその希望が叶い、初めて高線量の現場へ行って…という辺りが、今巻のハイライトかと思います。

 高線量といっても、打ち合わせ以外では現場の空気はそう変わらない様子。相変わらず時間的拘束は早朝から午後早い時間まで(しかも3班に分かれて交替しながらの作業なので、実際に作業に携わるのは正味1時間程度?)だし、ある意味では優雅な仕事という側面が描かれています。ただ、そうは云っても、1日当たりの被曝量は今までに比べて実に50倍。お気楽な雰囲気の中、初日の緊張が伺える一幕もあって現場の実感を伝えています。
 そんな現場ですが、高線量に加えて重要箇所でもあるので、そこで行われる工事には熟練した作業員の職人技が光ります。原発の現状や将来的な可否については、自分には確たることが云えないのですが、“いつか安全に壊す(廃炉にする)”ために、今巻で描かれたTIG溶接のように職人技を有する方々が現場で力を尽くしていることには、素直な感謝を捧げたいと思います。

 さて、そういった現場でのいわゆる“本筋”に加えて、今巻では、連載開始後にメディアから取材を受けて困惑したりちょっと頭に来たりした話とか、よく行っては先生自身も弾き語りしたライブバーの話とか、福島名物の食べ物の話なんかも盛り込まれていたりも。この辺りには、単なる潜入ルポ漫画とは一味ちがう、屈託のない空気が流れているのが面白いです。
 特にライブバーや音楽については、竜田先生が昭和歌謡&演歌好きで、福島自体も歌や音楽が盛んということもあって、深みのあるエピソードじゃないかと思いました。自分は『“文学少女"』シリーズなどを書かれたライトノベル作家、野村美月先生のプロフィール文で「知る人ぞ知る合唱王国」としての福島を知ったのですが、“原発が大変”という状況ですっかり忘れていたこの特色について、久々に読んだ気がしました。

 実は、1巻の巻末には今巻の発刊が昨秋と予告されていたので、今巻の巻末にある2015年冬(11~12月くらい?)という3巻の発刊予告も余りアテにはならないのかもしれません。それでも、遅くとも来年春頃には3巻の刊行がなされるんじゃないでしょうか。
 線量の関係上、急げるものでもないし、長く現地の状況を描いていくことも意義深いと思います。現場の感覚で、今後も世に問うて貰えればと思います。

 - 一画一会, 随意散漫 , , ,

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