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【一会】『進撃の巨人 16』……突きつけられた選択肢を突っ撥ねろ

      2018/07/21

DVD付き 進撃の巨人(16)限定版 (講談社キャラクターズA)

 前巻から語り始めた『進撃の巨人』。前巻での予告通り4か月後の16巻刊行となりました。
 今巻は、誘拐されたエレンとヒストリアを奪還せんとするミカサたちの動きと、ヒストリアと彼女の実父であるロッド・レイスの対話が主な内容と云えるでしょう。新たな情報が明かされ、物語の様相はまたも変貌しようとしているような(そういえば「現在公開可能な情報」って最近みなくなってきた気がしますね)。

 それはともかく、読みながら思い浮かべていたのは宮崎駿監督による漫画版『風の谷のナウシカ』でした。考えてみれば、“衰退した人類”、“おおむね前近代の辺りまで後退した文明”、“人類の力ではあらがうことの困難な存在”と、そもそも重なる要素は結構あるなと思ったり。

 さらに、今巻で語られたのは、たった1人の人間が人類を統べ、その歴史を導くというシステム。“ヒストリア”という“歴史”を思わせる名前には、そういう意味があったということでしょうか。
 ヒストリアとロッドとの対話は、もちろん細部は異なるけれど、“老獪(少なくともそう見える)な大人と少女の対峙”という、やっぱり『ナウシカ』の最終盤と通じるものがあるでしょう。“真っ当”であるかに見えた大人はしかし、“正統であること”に濁っている、というところも相似的です。
 それと、これまで凶悪な敵キャラとして認識されることが多かった「切り裂きケニー」ことケニー・アッカーマンが、意外な振る舞いを見せるところにも注目したいです。いわゆる“ちゃんとした大人”であるロッドに対して、普通に考えれば“ダメな大人”“危険な大人”とみなされるだろう彼ですが、少なくともアッカーマン家に対しては帰属意識を持ち、自分を見失うヒストリアに対して「オイオイオイオイ」とダメ出しする姿は、若者を見守るそれなりにちゃんとした大人なんじゃないか、と云ったら云い過ぎでしょうか。

 そんな大人たちが描かれながらも、今巻の主役はやっぱりヒストリアです。
 どうしても周囲に翻弄され流されがちだった彼女ですが、自分の意思で「最低最悪の超悪い子」を選び取ります。彼女だって訓練を潜り抜けてきた身ですし、その気になればそこらの大人よりは強いですしね。
 「反抗期」というと、自我の発達に伴って現れる“自立したい”という欲求の現れというのが定説で、ヒストリアの行動はまさしくそれだと云えるのかもしれません。そう捉えると、彼女の行動はいかにも無軌道に思えます。
 けれども自分は、エレンをどつきながら、叩きつけるように自分の胸中を語る彼女を見て、「お前はこうしなければならない」と突きつけられた時、それを突っ撥ねて自分の答えを出す強さは、多分こういうところから出てくるんじゃないか、とも思いました。過酷な境遇なヒストリアですが、頑張って欲しいです。

 一皮剥けたヒストリアと仲間たちに助けられ、長らく打ちひしがれていたエレンが何とか立ち上がり駆けだした、というところで今巻はお開き。次巻へと続きます。
 謎の新(?)キャラ“腰ばき(こしパン)のレオン”が登場する嘘予告は相変わらずとして、次巻17巻は8月7日に刊行予定です。限定版を買ったのでDVDも観てアッカーマン家とレンズ家を考察しつつ、次も楽しみに待ちたいと思います。

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