漫画のレビュー&随想 | 100夜100漫

――夜毎、お話ししましょう。貴方が私を縊(くび)らぬ限りは。

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第36夜 踊りましょう、ご一緒に、最後まで…『さよなら絶望先生』

「♪ね――こ――の毛皮着る――/貴婦人のつくるスウプウウ―/お――ば――あさんの/いなくなぁた/住宅――街――に肉――」


さよなら絶望先生(1): 1 (少年マガジンコミックス)

さよなら絶望先生久米田康治 作、講談社『週刊少年マガジン』掲載(2005年4月~2012年6月)

 名前からして敗北感に溢れている高校教師、糸色望(いとしき・のぞむ)は、名前通りの超ネガティブ思考の持ち主。世間のあれやこれやを持ち出しては絶望し、首を吊ろうとしては本当に死にそうになって慌てるというような毎日を送っている。
 超ポジティブ思考の風浦可符香(ふうら・かふか)を始め、望が担任する“2のへ組”の主に女生徒は個性派ぞろい。引きこもりにネット弁慶、ストーカーに腐女子に帰国子女。加えて毎度出てくるヘンな集団、ヘンな場所、ヘンな催し。それらは現実社会を反映するゆがんだ鏡だ。そんな周囲のせいで、めんどくさい先生が余計めんどくさくなって、今日も今日とて絶叫する。「絶望した!」
 マンネリ化した彼と彼女たちのやり取りは続く。どこまでも。本当に? いつまでも――。

タフな風刺精神
 週間連載で10数ページにわたって風刺漫画を書くのはなかなかに大変な作業だと思う。時事ネタに通じていなければならないし、何よりそれらを的確にいじれなければ面白いものにはならない。数度にわたってアニメ化もされた本作はその両方が高いレベルで維持されている、稀有な例であろう。
 “原作通り”“進路絶望調査”などで社会の歪みを照らし出す独特の風刺精神は、作者の前作『かってに改蔵』から培われ、洗練されてきている。ジャ○ラッ○やディ○○ーの目を軽くかわす作画テクニック(というよりも表記の仕方のセンスと云うべきか)は名人の域である。
 作者自身、生前葬を済ませたというリアル絶望先生ぶりの根っこには、幾多の修羅場をかいくぐってきた者だけが持ち得る不屈の風刺精神が息づいているに違いない。恐らく、だが。

本気と見せかけて嘘と見せかけて本気
 基本的には1話完結型の風刺/ブラックコメディという体裁で作品は続いていくのだが、それだけと思って安心してはいけない。
 本作は、悲劇である。喜劇でもある。だが最も適切な言葉で云えば愛の物語である。絶望先生のモデルの1人と目され、“文学→自殺”という固定概念を打ち立てた偉大な先駆者、太宰治の表現を模して云うならば、“誰もが仮面をつけて、お道化を演じているようなものなのです。お気をつけなさい”とでも云うのだろうか。そこが劇物のような魅力である。表面的には社会風刺、その内奥に濃厚に漂う死の匂い。それらを併せ楽しんでこその本作だろう。コミックス30巻、全300話に及ぶ長期連載作品だが、序盤から終盤までは肩の力を抜いて古新聞で当時の時事ネタを拾い読むように、そして、最後の数話については、綺麗な悪夢を読むように、楽しまれたい。

*書誌情報*
☆通常版…新書判(16.8 x 11.6cm)、全30巻。電子書籍化済み。

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第35夜 目を逸らさず、歩みを止めないということ…『るろうに剣心』

「剣は凶器 剣術は殺人術/どんな綺麗事やお題目を口にしても/それが真実――けれども拙者はそんな真実よりも、薫殿の言う甘っちょろい戯れ言の方が好きでござるよ」 『るろうに剣心』和月伸宏 作、集英社『週刊少年ジャンプ』掲載(1994年4月~1999年9月)  明治初期……

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第34夜 困惑も諍いも一時の旅情も乗せて、列車は行く…『鉄子の旅』

 2013/06/07  100夜100漫, ,

「列車を乗り降りして、久留里線の駅、すべてを見て回るんだ!!」「なんだそりゃーっ!!」 『鉄子の旅』菊池直恵 作、小学館『週刊ビッグコミックスピリッツ増刊IKKI』→『月刊IKKI』掲載(2002年1月~2006年10月)  売れない女性漫画家キクチは、小学館の漫……

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第33夜 淋しさの記憶を抱え、彼らは奇跡と親和する…『浪漫倶楽部』

「だからこそ浪漫倶楽部の出番だろ!!/これから一緒に不思議な事件が起きたら一つ一つ解決していけばいーじゃないか!!」 『浪漫倶楽部』天野こずえ 作、エニックス『月刊少年ガンガン』掲載(1995年5月~1998年2月)  火鳥泉行(かとり・せんこう)は夢ヶ丘中学校の……

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第32夜 白球とバット(釘付き)にかけた青春…『たのしい甲子園』

「是非もない!」 『たのしい甲子園』大和田秀樹 作、角川書店『月刊少年エース』掲載(1998年5月~2000年9月)  県下一の不良高校、瓦崎工業高校。校舎内にバイクの改造屋があり、些細なことで乱闘が始まるワルの名門である。  瓦工をシメようと入学してきた桂ケン……

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第31夜 ビッグ・マイナーの“笑えるけど壮絶”な日々…『失踪日記』

「私は取材旅行にでていた(そーゆーことにしといてください)」 『失踪日記』吾妻ひでお 作、大田出版『夜の魚』掲載(「夜を歩く」のうち「夜の1」のみ;1992年10月)+コアマガジン『お宝ワイドショー』掲載(「街を歩く」;2002年)+書き下ろし  1989年11月……

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第30夜 霊とも敵とも共に歩む姿こそが強さ…『シャーマンキング』

「そのなんでも知ってる“精霊の王”って奴と友達になれば!!/なんの苦労もしないで毎日のんびり楽に暮らせるんだろ…!!」「ドバカモン」 『シャーマンキング』武井宏之 作、集英社『週刊少年ジャンプ』掲載(1998年7月~2004年10月)→完全版にて完結(2009年4月) ……

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第29夜 リミッター解除した男達の極限妄想…『妄想戦士ヤマモト』

「俺たちはたしかにクズだ/自分でもヒクぐらいのクズだ/だがっ/だからこそっ/俺たちは漢でありたいと願うのだ!」 『妄想戦士ヤマモト』小野寺浩二 作、少年画報社『アワーズライト』→『アワーズ増刊』→『ヤングキングアワーズ』掲載(2000年7月~2005年12月)  ……

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第28夜 描かれた円の中は、少女の心を映す混沌…『魔方陣グルグル』

「これからあたしたちいよいよ世界を冒険するのね!/あたし世界中の町を見てみたいな/いろんな人に会ったり楽しい事もいっぱい…/どんな世界が待っているのかしら……/……ゆうしゃさまムーンストーンをつかうのよ……」「何考えてんだよ/なんだよムーンストーンって」 『魔方陣グ……

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第27夜 宵闇に燦然と燃えさかる“人間の姿”…『からくりサーカス』

「何かあったら心で考えろ…/今はどうするべきか…ってな。/そうして…笑うべきだとわかった時は…/泣くべきじゃないぜ。」 『からくりサーカス』藤田和日郎 作、小学館『週刊少年サンデー』掲載(1997年7月~2006年5月)  両親の都合で中国で暮らしていた青年、加藤……

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