漫画のレビュー&随想 | 100夜100漫

――夜毎、お話ししましょう。貴方が私を縊(くび)らぬ限りは。

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第28夜 描かれた円の中は、少女の心を映す混沌…『魔方陣グルグル

「これからあたしたちいよいよ世界を冒険するのね!/あたし世界中の町を見てみたいな/いろんな人に会ったり楽しい事もいっぱい…/どんな世界が待っているのかしら……/……ゆうしゃさまムーンストーンをつかうのよ……」「何考えてんだよ/なんだよムーンストーンって」


魔法陣グルグル (1) (ガンガンコミックス)

『魔方陣グルグル』衛藤ヒロユキ 作、エニックス『月刊少年ガンガン』掲載(1992年7月~2003年8月)

 魔王のいるファンタジックな時代。ジェムジャム大陸の小村、ジミナ村。「グルグル様」という守り神の伝説が残るこの辺境の地にも、大陸を納めるコーダイ国王による勇者募集の立て札が立てられた。勇者マニアのバドは、息子ニケを勇者として旅立たせることを決める。ラクして暮らしたいニケは旅立ちを渋るが、父母の熱心過ぎる説得についに観念する。
 旅立ちにあたり、しきたりに従って村の古老、魔法オババの家を訪れたニケは、オババから「グルグル」の真の意味を教えられる。それは、ミグミグ族という民族が見出した、魔方陣を描きその図形の持つ力を引き出す魔法のことだった。オババはニケにそれを授けると告げ、13年前にミグミグ族の生き残りから託され秘して育ててきた、民族最後の生き残りの少女、ククリを紹介する。かくして、勇者(?)ニケとグルグル使いククリの2人は、魔王を倒し、世界を救う旅に出る。
 父親に多少鍛えられたとはいえ基本的にやる気のないニケと、物覚えが極端に悪く、グルグルを失敗してはヘンなものを召喚してしまう上に妄想癖のあるククリ。不安この上ない2人だったが、大ボケを繰り返しながらも多くの人と出会い、戦いをくぐり抜け、修行を重ねて成長する。そんな中、いつしかククリはニケに恋心を抱く。そのときめきこそが、グルグル最強の魔法を復活させる手がかりともなるものだった。そうこうしているうちにも魔王ギリの侵攻は進む――。

陣の中の混沌
 初期の『ガンガン』には、先立ってエニックスの人気漫画シリーズだった『ドラゴンクエスト4コママンガ劇場』出身の作家が多く、本作の作者、衛藤ヒロユキもその例に漏れない。その出自の故か、本作もまたドラクエ的な世界観を下敷きにしたストーリーギャグ漫画だが、話が進むごとにドラクエ的な色合いは薄らいでいく。逆に割合を増してくるのは、コンピューターRPG以前を思わせる民間伝承的メルヘン、ハウスに代表されるダンスミュージック、そしてオヤジと褌(ふんどし)といった作者独自の世界観だ。
 まるで統一感のないそれぞれの要素が変な化学反応を起こし、“グルグル的”としか云いようのない空気を創り出している。それは作者の無意識を投影した夢想のようでもあるし、「あらゆる音楽の融合体」と形容されるハウスミュージックのようでもある。作中、ミグミグ族の残した魔法グルグルは色々なものが混淆した“よくわからないもの”として描かれるが、作品世界自体が既にそうなのだ。

乙女心の君
 そうしたカオスの世界にはしかし、確たる中心がある。他ならぬククリという1人の少女だ。全ては彼女に収斂する。表面上はドラクエ風世界観でオヤジや褌が乱舞するギャグ漫画ながら、その1つ奥にメルヘン的要素と現代音楽のモチーフが融合された物語があり、更にその最深奥に、ある女の子の、瑞々しく愛らしい、そして時に過激な乙女心がある。この極めて特異な構造を、少年漫画としてつづり、10年かけて最後まで描き切った作者は、まさに“偉大なるグルグル使い”と云えるだろう。
 後日譚として、作者は何を血迷ったか(あるいはそれが平常運転なのか)作中で最も有名なオヤジキャラ“キタキタおやじ”をスピンオフさせてハラハラさせられたが、現在は正伝の続編が連載中である。本作を堪能したら、彼らのその後を追うのもよいだろう。

*書誌情報*
☆通常版…新書判(17.6 x 11.4cm)、全16巻。電子書籍化済み。

☆新装版…B6判(18.5 x 13cm)、全8巻。

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第27夜 宵闇に燦然と燃えさかる“人間の姿”…『からくりサーカス

「何かあったら心で考えろ…/今はどうするべきか…ってな。/そうして…笑うべきだとわかった時は…/泣くべきじゃないぜ。」 『からくりサーカス』藤田和日郎 作、小学館『週刊少年サンデー』掲載(1997年7月~2006年5月)  両親の都合で中国で暮らしていた青年、加藤……

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第26夜 真のヒーローは、弱きを癒し強きも癒す…『オンセンマン

 2013/05/30  100夜100漫, ,

「それでもオンセン・イン!」 『オンセンマン』島本和彦 作、角川書店『月刊少年エース』掲載(1995年2月~1996年12月)  箱根の大涌谷(おおわくだに)から200年に1度の奇跡で生まれる伝説の勇者、オンセンマン。彼は病み疲れた都会の人々を自らの温泉パワーで癒……

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第25夜 読書の視覚化…『黄色い本 ジャック・チボーという名の友人

「実っコ/本はな/ためになるぞう/本はな/いっぺえ読め」 『黄色い本 ジャック・チボーという名の友人』高野文子 作、講談社『月刊アフタヌーン』掲載(1999年10月[表題作])  ロジェ・マルタン・デュ・ガール著/山内義雄訳『チボー家の人々』(白水社)。ハードカバ……

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第24夜 気高くも哀しい、非モテ系昭和男児の生き様…『男おいどん

「神もホトケもクソもあるもんかとは思うばってん/もしいらっしゃるなら天地・宇宙 万物の真理をつかさどる神サマ/おいどん男ばい! しあわせにしてくださいともたすけてくださいとも死んでもたのみません/おいどんはおいどんのやりかたでがんばるけん/見ていてください」 『男お……

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第23夜 “都落ち”により、少女は自由を知る…『丘の上のミッキー

 2013/05/27  100夜100漫, ,

「今日 新しい学校に行ってまいりました/森戸南女学館といいます/ここは蛮族の巣窟です!!」 『丘の上のミッキー』久美沙織 原作、めるへんめーかー 作画、白泉社『花とゆめEPO』掲載(1989年11月~1990年9月)  浅葉未来(あさば・みく)は、東京都心のカトリ……

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第22夜 明治という時代の狂騒と癒えない病…『『坊ちゃん』の時代

「あいつか/妙に赤い服を着てたなあ/あの野郎………欧州時代から反(そり)があわなかった/いけすかないが結局は………/……ああいうやつが勝ち残るんだろうなぁ/これからの日本じゃ」 『『坊ちゃん』の時代』関川夏央・谷口ジロー 作、双葉社『週間漫画アクション』掲載(198……

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第21夜 運命・意志・希望…『ジョジョの奇妙な冒険Part5 黄金の風

「大切なのは『真実に向かおうとする意志』だと思っている/向かおうとする意志さえあればたとえ犯人が逃げたとしてもいつかはたどり着くだろう? 向かっているわけだからな……………違うかい?」 『ジョジョの奇妙な冒険Part5 黄金の風』荒木飛呂彦 作、集英社『週刊少年ジャ……

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第20夜 闘いに臨む覚悟と、その果ての慈悲…『怪奇警察サイポリス

「汝の魂に、幸いあれ…!」 『怪奇警察サイポリス』上山道郎 作、小学館『月刊コロコロコミック』掲載(1991年12月~1995年6月)  新聞部の部長を務める中学2年生、鬼塚勇気(おにづか・ゆうき)。同級生の新聞部員、三原千夏(みはら・ちなつ)に押されつつも部を取……

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第19夜 ドタバタラブコメの舞台で、彼らは未来を掴む…『ラブひな

「浪人したって/遭難したって/どんなひどい目に遭ったって/全部全部幸せだった!!」 『ラブひな』赤松健 作、講談社『週刊少年マガジン掲載(1998年10月~2001年10月)  大学受験に失敗し、あえなく二浪目に突入した浦島景太郎。勉強はだめ、運動もだめ、外見は冴……

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