漫画のレビュー&随想 | 100夜100漫

――夜毎、お話ししましょう。貴方が私を縊(くび)らぬ限りは。

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第53夜 やせ我慢上手な“恐るべき子供たち”…『こどものおもちゃ

「…さあ…2人きりよ…私らも子供じゃないんだし…ケツ割って話そうじゃない? ん?」「…「腹」だろ/ケツはもうわれてんだよ」


こどものおもちゃ 1 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)

『こどものおもちゃ』小花美穂 作、集英社『りぼん』掲載(1994年7月~1998年10月)

 小学6年生の倉田紗南(くらた・さな)は青木賞作家の倉田実紗子(――・みさこ)を母に暮らすジュニアタレント。学校に仕事に邁進する元気者だ。
 が、最近の学校生活では悩み事を抱えていた。クラスメイトの羽山秋人(はやま・あきと)がクラスの男子達を扇動し、クラスは半ば学級崩壊を起こしているのだ。
 堪忍袋の緒が切れた紗南は、羽山を懲らしめようと彼の弱みを握ろうと行動を開始する。が、張りこんだ羽山の家で見たのは荒廃した家庭環境だった。心を痛めた紗南は羽山の家族に働きかけることで円満家庭を取り戻そうとする。そうするうち、紗南は羽山に、紗南は羽山に、次第に惹かれていく。
 小学校から中学へと移ろう時の中、2人の周囲には出生の秘密、芸能界とマスコミ、級友の家庭問題など、どうにもならないこともあるし、紗南の仕事のために心がすれ違うこともある。それでも2人は、互いに寄り添い歩んでいく。

家庭のかたち
 むかし安達祐実(あだち・ゆみ)という子役の主演で『家なき子』という連続ドラマがテレビ放映されていた。そのドラマと同じ頃に連載されていたためか、個人的にはイメージが被る。作者によると紗南のモデルは全く別の人物のようだが、ジュニアタレントという要素と、『家なき子』の壮絶な内容が、主要な登場人物の誰もが家族について重いものを抱いている本作と、自分にとっては地続きなものに感じられたのかもしれない。
 そう、本作は“前向き元気印の少女と世に倦んだ不良少年による恋愛”を、不思議と陰を含みつつも端正な絵柄で描いた紛れもない少女漫画だが、それと同等かあるいはそれ以上に家族と家庭のかたちを描いた漫画と云える。親との死別や離婚、孤児、片親が服役中など、作中の家族はほとんどが事情を抱えている。そんな家庭がどう変わっていけるのか、という点が本作の大きなテーマになっていると云えよう。

その背中に
 無論、主人公たる紗南の事情も大変なのだが、自分としては彼女以上に羽山の生い立ちと、作中での顛末に読むたびに目がいってしまう。今となっては作者の最近作『Honey Bitter』の特別編『Deep Clear』にて未来の2人(と主要人物のもう1人)の様子を確認できてしまうが、それでも本作で描かれる少年期の彼は硝子の針のようで、1人で思い悩み傷つく姿にいらぬ心配をしてしまう。
 つまり、紗南も羽山も、本作の子どもたちは虚勢を張るのがとても巧いのだ。「空元気の効用」とは『機動警察パトレイバー』(第45夜)の後藤隊長の言葉だが、それを体現するかのような虚勢ぶりで、それ故に孤独を深めていってしまう。
 告白すると、本作の第一印象は「小学生がこんなこと考えたり言ったりするかよ」というような若干すれたものだったのだ。しかし今思えば、そこで既に作者の術中にはまっていたような気がする。さも大人びたように描くことで、それがやがて本人たちが痛感する、「子どもであること」のどうしようもなさを助長するのだ。子どもであるが故に動かしようのないことを前にした、彼ら彼女らの背中はとても小さい。
 そんな本作が人気を博したことは、読者と作者が同じ良識を分かち合ったことと捉えられ、幸福を感じる。読み継がれて欲しい作品である。

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第52夜 誰も彼も汗にまみれて一生懸命にバカだった…『柔道部物語

「「「俺ってストロングだぜぇ~!」」」 『柔道部物語』小林まこと 作、講談社『週刊ヤングマガジン』掲載(1985年9月~1991年7月)  地元の岬商業高校に入学した寿司屋の息子、三五十五(さんご・じゅうご)は、中学では吹奏楽部でサックスを吹き、成績はトップクラス……

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第51夜 ふたりでいるって、割と素晴らしいこと…『くらしのいずみ

「俺らももう長いし/そろそろする? 結婚」 『くらしのいずみ』谷川史子 作、少年画報者『YOUNGKING アワーズ増刊アワーズプラス』『YOUNGKINGアワーズ』掲載(2006年4月~2008年1月)  世の中には色々な夫婦がいる。友達のような夫婦、文科系優男……

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第50夜 王への道を征く破天荒元王子の大騒動…『余の名はズシオ

 2013/06/23  100夜100漫,

「愚民愚民愚民愚民愚民愚民愚民がァアア!!/もっと余を頼れ! 無様にひれ伏せ! 余が怖がっているだと!!!?/余の辞書に撤退の文字わない!!/……/化け物っ! 貴様を倒す者の名をよく憶えておけ!!/余の名はズシオ」「ファイヤー!」「散ったァ!!」 『余の名はズシオ』……

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第49夜 愛のため正義のため、少年達は神々に挑む…『聖闘士星矢

「いくぞ!!/地上の愛と正義のために!!/命と魂のすべてをそそぎ込んで!!/今こそ燃えろ黄金の小宇宙よ!!/この暗黒の世界に…/一条の光明を!!」 『聖闘士星矢』車田正美 作、集英社『週刊少年ジャンプ』→『Vジャンプ』(完結編のみ)掲載(1985年12月~1990年……

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第48夜 バブル期を映し、同時に諭す両義性…『おぼっちゃまくん

「これで時価3億でしゅ!/ぽっくんは小さいころから誘拐にそなえて、からだじゅうに貴金属を身につけてるのでしゅ!/歩く身代金と呼ばれとるとぶぁい!」 『おぼっちゃまくん』小林よしのり 作、小学館『月刊コロコロコミック』掲載(1986年4月~1994年8月)  田園調……

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第47夜 お笑いに彩られた、意外とマジな演義…『SWEET三国志

「天下とって♥」 『SWEET三国志』片山まさゆき 作、講談社『ヤングマガジン増刊海賊版』掲載(1992年~1995年)  ワンス・アポン・ア・タイム、イン・中国、漢の国。劉備玄徳(りゅうび・げんとく)は豪傑の関羽(かんう)、張飛(ちょうひ)と桃園にて義兄弟の契り……

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第46夜 淡々と、ただならない日常は過ぎゆく…『あずまんが大王

「そんなんじゃありませんのだ」 『あずまんが大王』あずまきよひこ 作、メディアワークス(現アスキー・メディアワークス)『月刊コミック電撃大王』掲載(1998年12月~2002年3月)  恐らくは関東にある、どこかの共学高校。そこで繰り広げられる、とも、ちよ、よみ、……

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第45夜 新鋭機と“お役所的仕事”の流儀…『機動警察パトレイバー

「よくみとくといいや。/志望がかなえばこいつに命預けることになる。」「じゃ……じゃあこれが……/新型の警察用レイバー!?/こ…これは…/趣味の世界だねえ……」「とかいいながらわりと気に入ってるだろ。」 『機動警察パトレイバー』ゆうきまさみ 作、小学館『週刊少年サンデ……

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第44夜 恋と夢と。彼らが選んだのは…『部屋(うち)へおいでよ

「ねェ……/これから……/いっしょに…/観よっか…/部屋(うち)においでよ…」 『部屋においでよ』原秀則 作、小学館『週刊ヤングサンデー』掲載(1990年月~1994年月)  東京、阿佐ヶ谷のとあるパブ。ピアノを弾く水沢文(みずさわ・あや)と、客なのに店の手伝いを……

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