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【一会】『Spotted Flower 2』……“攻略法”と、(ある意味)危険な後輩が夫に迫る

      2018/07/20

Spotted Flower 2

 二次元ヲタクな夫と、“一般人”で妊娠中の妻。名前こそ明らかにされていませんが、どこかで見たような(具体的には作者の代表作『げんしけん』[100夜100漫第3夜]の斑目さんと春日部さん方面)夫婦の、割と赤裸々な欲求と不満な日々を軽妙に描いた『Spotted Flower』の2巻が先日発刊されました。1巻の時に「次巻は3年後くらいかも」と書きましたが、それよりは少し早く、およそ2年半でのリリースです。
 刊行から少し経ってしまいましたが、概要と感想を記しておきましょう。前巻の時は作品の位置付けみたいなものに終始してしまいましたので、今巻は内容に重点を置いてみます。

 依然として夜の没交渉が続く夫と妻ですが、そうこうしているうちに妻は臨月。お腹も相当おおきくなりました。
 それでも出産までに一度は致したい妻は、色々と策をめぐらせますが、なかなか夫はその気にならない様子です。まぁ、斑目さんと同系統のヲタクなので、ポチったエ〇ゲーが届けば夫はそっちが気になって仕方がありません(しかも男の娘モノのようで、なんとも業が深い…)。
 色々と模索した結果、妻はついに夫の“攻略法”を見出します。それは「妻が嫌がったり羞恥を感じる様子が好き」という夫の習性を利用したもの。夫の気持ちは割と分かるのですが、改めて字面にすると、なかなかに鬼畜な感じがしますね。
 “攻略法”に従い、わざわざ自分が嫌がるアイテムをネットで注文したり、旧友のコスプレ好きな奥さんに協力を要請したりと、妻は涙ぐましい努力を重ねます。“妻が「許容」としているコトを夫には「嫌」と思わせておかないとダメ”という、何だか『頭の体操』みたいな話になってきたりもしていますが。
 そんなこんなで、どうにかお膳立てを整え、いざ勝負! と思いきや、半ばお約束のように訪れた陣痛発来。結局、夫婦の営みは産後に持ち越しという形になりました。
 1巻からの流れを読むと、なんだか妻が可哀想にもなってきますが、ここまで夫の趣味に歩み寄れ、同時に自分を失わない妻は、何だかんだいって凄いとも思います。「夫としたい」というのは利己的な欲求に違いありませんが、妻が「夫と」を望むという罪のなさが、いじましいです。パラレルな存在である『げんしけん』の春日部さんと同じく、しっかり者でありながら根は素直という、魅力的な方だと思います。

 本編である夫婦のやり取りは上記のような感じなのですが、今巻の物語には、もう1つ別の流れが存在します。それが夫の学生時代の後輩にあたる、美人な漫画家さんを巡るエピソードです。
 美人と書きましたが、周囲やご自身の言葉から、過去において男性であったことは明らかでしょう。そして夫に対しては、単なる先輩に対する以上の思慕の念を抱いていることもまた明白かと。マネージャー兼アシスタントを勤める、言葉は荒くも世話焼きな眼鏡の女性ともども、『げんしけん 二代目』の女装子さんと生真面目な腐女子さんを思い出します。
 今巻収録の本編では2度にわたって登場し、夫を淫靡っぽい世界に誘わんとする漫画家と、それを横目で見つつも〆切に向けて漫画家を叱咤するマネージャーですが、今巻後半に収録されている「楽園」Web増刊版では、そんな2人の日常が綴られています。夫と妻もそうですが、この2人もまた、何だかんだと多忙ながら割と楽しい日々を過ごしているようで。『げんしけん』の直接の未来ではありませんが、こんな未来もまた、アリというものでしょう。
 この漫画のタイトル「Spotted Flower」の意味は“「斑」と「花(咲く)」”ととるのが通説と思います。が、これを「特異な花」くらいに超々訳して、ちょっと変わった愛の形を色々と描いていくスタイルにするのも面白いかな、と考えたりもします。

 あとがきを読む限り、木尾先生ご自身も2巻で完結していないことを意外に感じられている様子。いよいよ次で完結するのか? するとしたら、ラストはどんな形で? など、その辺りも気になる3巻の刊行は、やはり2年半~3年くらい先と予測されます。初代『げんしけん』から読み直しつつ、まだ未登場な人々のパラレルな未来を思い描きつつ、気長に楽しみに待ちたいと思います。

 - 一画一会, 随意散漫 , , , ,

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