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【一会】『七つの大罪 25』……3000年の過去で見るものは

      2018/07/20

七つの大罪(25) (講談社コミックス)

 伝説的騎士団〈七つの大罪〉と魔神王に従う〈十戒〉という2つのグループの戦いを中心に、物語の舞台ブリタニアをめぐって絡み合う各種族の思惑が描かれつつある『七つの大罪』。周回遅れ気味(既に次巻が出ています…)ですが、3月刊行の25巻について書きたいと思います。
 今巻の限定版は特製ウォールステッカー。思わず限定版を買いましたが、実際に貼ろうとするとちょっと躊躇われます。電灯やスマホ周りに貼ることを想定されたシールというのは、いいアイディアだと思いますが…。

 それはともかく本編の始まりは、〈嫉妬の罪(サーペント・シン)〉ディアンヌと〈怠惰の罪(グリズリー・シン)〉キングの裸の遭遇から。しばし楽しげな時間が流れますが、〈十戒〉のメンバーである「安息」のグロキシニアと「忍耐」のドロールが襲来。戦闘となります。
 先代妖精王と巨人の始祖という因縁浅からぬ相手に、2人も全力で抗しますが、桁違いの実力に早々と決着がつきます。しかし、〈十戒〉の2人が持ちかけたのは、まさかの提案でした。
 〈十戒〉となり、その瞳は漆黒に塗り潰されたものの、それは彼らなりに考えがあってのことのようです。それぞれの後裔であるディアンヌとキングに試練を与え、自分たちを超える力を持つようになって欲しい。彼らの本心はそういうことかと思えます。
 当然、試練には死の危険も伴うようですが、〈大罪〉の2人は一も二も無く承諾。グロキシニアが云うには「もう1人の友人から教わった」というドルイドの術により、2人の意識は過去へと向かいます。

 グロキシニアの身体にはキングの意識が、ドロールの身体にはディアンヌの意識が入る形で描かれるのは、3000年前の出来事です。物語の構造上、この漫画では結構な頻度で過去編が語られますが、それらは必ずしも時系列に沿っているわけではありません。なかなか混乱しますが、そこが魅力でもあると思います。
 さて、見知らぬ場所で見知らぬ肉体に困惑する(特にディアンヌinドロールの振る舞いはなかなか凄いものがあります…)2人の前に現れたのは、現在とほとんど変わらない容姿のメリオダスと、背中に翼を持ち、エリザベスと同じ容姿・同じ名前を有する女神族の少女でした。現在のエリザベスと同一の存在ということではなさそうですが、当然、何らかの繋がりがあることでしょう。
 この時代のメリオダス達もまた、人間を襲う魔神族たちと戦いを繰り広げている最中のようです。魔神族の勢力の強大さと、それに対抗し得るメリオダスの強さに驚くディアンヌとキングですが、彼ら自身もまた、この時代の〈十戒〉の一角、「敬神」のカルマディオスを圧倒する強さを発揮。意識こそキングとディアンヌですが、身体や強さは元のグロキシニアとドロールのもののようです。女神族エリザベスも、物理的な強さとは違うものの魔神族の大群を退ける活躍をみせてくれます。

 女神族を中心に、巨人族・妖精族が共闘する形で作られた反魔神族の連合〈光の聖痕〉(スティグマ)。それが、この時代のメリオダスやエリザベス、そしてグロキシニア、ドロールが所属する組織のようです。
 戦いで命を救った人間族のロウたちを加え、メリオダスたちは〈光の聖痕〉の本拠地である、この時代の妖精王の森へ。そこでメリオダス達を待っていたのは、デンゼルに憑依するようにして顕現しデリエリに倒された(23巻)ネロバスタと、その上官と思われる〈四大天使〉の一角リュドシエルでした。
 女神族の間では、魔神族を殲滅しようとする独善的な考え方が今も昔も変わらず主流の様子。エリザベスのような和平派は少数ということでしょう。
 逆に、現代では擦れた印象の妖精族ゲラードは、3000年前は何とも天真爛漫な性格だったようです。現在よりも若いのですから当然かもしれませんが。同時に、彼女はグロキシニアの妹であることも明かされています。
 彼女は、キングが気にしていた森の奥に何があるのか教えてくれます。それは、魔神族をおびき寄せるための“生き餌”でした。魔神族を滅ぼすべき対象としてしか見ない女神族の、手段を選ばない様が分かります。

 キングがそれを知るのと同時に、この時代の〈十戒〉と魔神族たちによる攻勢が始まりました。キングとディアンヌが考えるように、この局面を見て、切り抜けることが彼らに与えられた試練ということでしょうか。
 戦いを収めようと、メリオダス、キング、ディアンヌは魔神族たちと話をつけに行こうとします。彼らの留守を守ると申し出たのはロウ。現在のバンによく似た顔立ちをしている彼ですが、自分としては何だか信用し切れない気がするのですが…どうでしょうか。
 メリオダスたちよりも一足早く、魔神族たちの前に立ちはだかったのは、女神族エリザベス。戦闘によって双方に痛手が出るのを嫌う彼女は、単身〈十戒〉と交渉し、どうにか同意を取り付けそうになりますが、そんな彼女の独断専行すらリュドシエルの計算のうちでした。直接言葉を交わした〈十戒〉の一員、「純潔」のデリエリからしたら裏切られたも同然で、これが23巻で現在のエリザベスと相対した時に彼女が激昂した理由だったのだと思います。
 しかしリュドシエルのやり方はなかなか卑劣です。〈十戒〉と魔神族が登場したばかりの頃は彼らの非道ぶりが目に付きましたが、女神族もまた同じようなことをやっています。

 かくて〈十戒〉との対話は完全に決裂。上空から飛来したサリエルとタルミエルによる極大聖櫃(オメガアーク)によって、魔神族の多くが消滅する中、〈十戒〉と〈四大天使〉の戦いが始まりました。双方の戦力を整理しますと、〈十戒〉側はデリエリ・「沈黙」のモンスピート・「真実」のガラン・「信仰」のメラスキュラス・見習い〈十戒〉とでも云うべきフラウドリン、〈四大天使〉側はサリエル・タルミエルと、数の上では5対2です。数では〈十戒〉有利に思われましたが、実力的にはほぼ拮抗、というか〈四大天使〉側がやや優勢そうな印象です。
 さらにリュドシエルも後方から出てきそうなところですが、彼がネロバスタに守護するように云い置いた天界の〈門〉は、この戦いの趨勢を決める要素と思われます。ここが壊されれば、女神族は天界からの増援を得られず、戦いは一気に不利に傾くとのこと。そんな〈門〉を護るネロバスタに対し、精神攻撃を試みる存在がありました。〈十戒〉の一角だった「無欲」のゴウセルです。

 奮戦する〈十戒〉たちは、サリエルとタルミエルを追い詰めます。しかし、ここで現れたリュドシエルによって、再び戦いは〈四大天使〉の有利に傾きそうな気配。と、ここでデリエリとモンスピートがとった手段は、元の姿と理性を失うのと引き替えに自らに秘められた獣性を解放するという「インデュラ」化でした。3000年前のこの戦い、決着は如何に――というところで今巻は幕。既に5月に刊行されている26巻に続きます。

 例によって刊行順に読んで書いていますので、次巻について書くのはちょっと先になろうかと。なるべく早く追いつきたいところです。。

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