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【一会】『七つの大罪 21』……4戦4様、それぞれの大喧嘩

      2018/07/20

七つの大罪(21) (週刊少年マガジンコミックス)

 騎士団〈七つの大罪〉や聖騎士達と、〈十戒〉を筆頭とする魔神族との、中世イングランドを思わせる世界ブリタニアでの戦いを描いた『七つの大罪』。鈴木央先生アレンジによる“アーサー王と円卓の騎士”物語とも云われるこの漫画の21巻が出たのは、もう2か月弱前のことですが、読んで考える時間がとれましたので投稿します。
 今回の限定版付録は、描き下ろしのミニキャラクターがあしらわれたオレンジ色のペンケース。とりあえず入手しましたが、色々入れて持ち歩くにはちょっと小さめかも。家に置いてペンの整理に用いるなら良さそうです。

 さて今巻は、「バイゼル大喧嘩祭り」のいよいよ本戦の様子がメインです。優勝すれば願いを叶えるとうそぶく、主催者にして〈十戒〉の1人(?)グロキシニアの説明によれば、大喧嘩祭りのルールとしては、1.戦い方は何でもアリ2.勝利条件は相手組の殺害または無力化または場外落下3.試合放棄は厳禁、とのこと。うまく場外落下する以外は負けたら死亡確定な感じですが、勝手にエントリーされてしまったエリザベスやエレインはどうなるのでしょうか。なんと第1カードに選ばれてしまった彼女たち王女&聖女ペアの戦いを含め、今巻では計4つの勝負が描かれています。順に触れていきたいと思います。

 前述のとおり、初戦を戦うことになってしまったのは、エリザベスとエレインのペア。相手は道化師めいた見た目からして危険そうな〈マラキア暗殺団〉の2人です。あわや――と思われましたが、彼女たちも無力ではありません。ただ、慈愛溢れる決着と思いきや、〈十戒〉が勝負を穢すこととなり、後味の悪い幕切れに。
 しかしこの王女と聖女、そういえば直接会うのは初めてですね。すぐにお互い打ち解けた様子なのは、それぞれ重いものを背負っていそうだからでしょうか。
 そんな彼女らの戦いを気を揉んで見ていたのが、〈憤怒の罪(ドラゴン・シン)〉メリオダスと〈強欲の罪(フォックス・シン)〉バンのペア。相手は〈青色の魔神〉ペアです。この2人が組んでいれば、よほどのことがない限り劣勢になることはないと思っていましたが、予想通りの一方的な展開。気になったのは、メリオダスがエリザベスを指して云った「昔たった一人で魔神の軍勢を改心させた」という台詞。19巻あたりで明らかになった彼女の前世の話なのでしょうか。

 以上2組の戦いはページ数的にもあっさり風味でしたが、残り2組はじっくりと描かれています。まずはメリオダスとの戦いと並行していたと思われる一戦に目を向けます。
 戦っているのは、これも〈七つの大罪〉のメンバー、相変わらず記憶喪失気味の〈嫉妬の罪(サーペント・シン)〉ディアンヌと、〈怠惰の罪(グリズリー・シン)〉キングのペア。相手は〈十戒〉ドロールとグロキシニアが頭数を合わせるために作り出した、〈土人形〉ドロールゴーレムと〈花人形〉グロキシニアサーバントのペアです。
 それぞれ因縁の〈十戒〉が作ったとはいえ劣化コピー的なものを相手に、〈七つの大罪〉の2人が苦戦することもない、と思っていたのですが。序盤はキングが使い物にならず(だいたいディアンヌのせい)、戦いは長期化します。
 このままでは〈七つの大罪〉にして妖精王でもあるキングの面目丸つぶれになるところですが、さすがにディアンヌのピンチを見過ごすことはできません。彼の奥の手と思われる「真・霊槍シャスティフォル」の威力は絶大ながら、それだけに消耗が激しい様子。それでもディアンヌを守って限界を超えて戦うキングは男です。そんなキングの意気に応えたディアンヌも自ら作り出したゴーレムで敵を撃破、どうにか勝利を手にします。お互いに支え合って戦う姿は、自分にはかなり似合いのカップルに見えました。
 それにしても決定打になったディアンヌ製ゴーレムに、自分は初代『魔方陣グルグル』(100夜100漫第28夜)の序盤、イメージの特訓でククリが作り出した格好いいニケを思い出しました。いつでも最強なのは、女子が思い描く理想像なのかもしれません。

 聖騎士長ドレファス(の身体に入っている魔神フラウドリン)に破壊されたゼルドン、そこから逃れたフラウドリン、〈蒼天の六連星〉の1人デスピアスの(見ようによっては少々アブない)魔力の紹介、陥落した南の王都キャメロットといった幕間を挟み、物語は今巻で描かれた最後の対戦に進みます。登場するのは、渦中の存在〈色欲の罪(ゴート・シン)〉ゴウセルと聖騎士見習いのジェリコのペア。そして対するは、〈傲慢の罪(ライオン・シン)〉エスカノール(夜なので貧弱バージョン)と自称〈残飯処理騎士団〉の豚さんホークのペアです。
 ついに味方同士の対戦となってしまったわけですが、戦いたくないと訴えるジェリコやエスカノールに対し、ここのところ挙動が不審なゴウセルは、優勝して「心を手に入れる」という自分の望みを叶えようとやる気です。しかし、結果的にはそのゴウセルの攻撃こそが、エスカノールに力を与えることになったのですが。
 ゴウセルが見せた悪夢によれば、類まれな特異体質に生まれたエスカノールは、なかなか可哀相な生い立ちを送ってきたようです。そんな悪夢のラストシーンで絶望を突き付けられたかに見えましたが、それは転じて彼には希望だったということでしょうか。むかし学校で読んだ詩に「心に太陽を持て」というのがありましたが、エスカノールの魔力「太陽」とは、もしかしたら本当は、“絶望しない心”にその根源があるのではないか、と少し考えました。
 人間を「醜い」と嘲笑い、高みの見物を決め込んでいたグロキシニアたちにとって、力を増したエスカノールの行いはどう映ったでしょうか。そして、文字通り心の無いゴウセルには……といったところで、今巻は終わり、次巻に続きます。

 16ペアのうち8ペアの戦いが描かれたわけですが、残りの戦いはどうなるのか(それ以前にそのまま喧嘩祭りは続行されるのか)、続きが待ち遠しいところです。
 巻中の番外編「残飯処理騎士団の冒険」や、ベロニカとギーラの交流を描いた巻末番外編を箸休めにしつつ、8月17日まで発刊が迫った22巻を、楽しみに待ちたいと思います。

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