100夜100漫

漫画の感想やレビュー、随想などをつづる夜

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「 100夜100漫 」 一覧

第167夜 誰もが旅人で、だから帰る処が必要だ…『ホテルポパン』

「客室は10/でも1日に予約をいれるのは8組まで/夫婦かカップル/女性同士のみ/そんなんでもやっていけた時代の話だ」


ホテルポパン(1) (KCデラックス)

ホテルポパン有間しのぶ作、竹書房『まんがくらぶ』掲載2003年12月~2008年11月)+書き下ろし

 スキー客すら寄り付かない山奥に建つ小さいながらも瀟洒な宿泊施設、ホテルポパン。大人びて見える少年ナツは、このホテルのオーナーである富士威(ふじい)の甥。とある事情から親元を離れてここで暮らしている。
 そんな彼を取り巻くのは、ホテル住み込みのスタッフたち。オーナーを始め、ナツが慕って止まないメイド兼みんな(含オーナー)の元締め前舞ヤヤ(ぜんまい・――)、もう1人のメイドで酒豪の木更みちる(きさら・――)、見かけは怖いが料理は上手いコックのトビこと飛石正宗(とびいし・まさむね)、飄々とした優男のバーテンダー流紅(リウフェイ)と、曲者ぞろいのメンバーだ。
 1人何役もこなしつつ、お客様にサービスする毎日はてんてこ舞い。24‐7(24時間ぶっとおしで7日間働きづめ)でも、スタッフたちはそれぞれの仕事に誇りを持ちつつ、適当にだらだらもしつつ毎日を過ごしていく。
 そんなスタッフたちもナツも、誰もが苦い過去を持っている。ホテルを訪れる者たちはそんな各人の過去を揺り起こす。それは、やがて彼らに幾つかの転機をもたらすこととなるのだった――。

(さらに…)

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第166夜 ひと皿ひと皿に込められた、“本当の私”…『寿司ガール』

「寿司ごときに私の生き方が変えられるなんて/認めたくないけどね!!」 『寿司ガール』安田弘之 作、新潮社『月刊コミック@バンチ』掲載(2011年1月~2012年5月)  深夜の回転寿司で、ふと入った寿司屋で、行きつけの店のカウンターで。それぞれの人生を抱えつつも、……

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第165夜 かつてこの国が経験した、凄絶な季節に…『夏のあらし!』

「それでも/夏の間だけでも/生きて再びこの世界に居られることを感謝したいわ/だから精一杯/楽しく生きるわ/命短し/恋せよ乙女/紅き唇/褪せぬ間に…ってね/生きてるあなたは/恋をしなよ!」 『夏のあらし!』小林尽 作、スクウェア・エニックス『月刊ガンガンウイング』→『……

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第164夜 10代は背伸びし、20代は首をすくめる…『たまりば』

「なんでハルオもまたアイス買ってんの?/さっき食べたじゃん」「オトナは1日にアイス2本食べてもいいんだよ」「いいなぁ〜/オトナ……」「そうでもねーよ」 『たまりば』しおやてるこ 作、エンターブレイン『Fellows!』掲載(2008年10月~2012年2月)  「……

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第163夜 菌と人間、遠いけれども楽しい学びの道…『もやしもん』

「この学校はスゴいよ/いろんな人がいろんな意志で支えあってみんなで遊んでるんだね」 『もやしもん』石川雅之 作、講談社『イブニング』→同『月刊モーニングtwo』掲載(2004年7月~2014年1月)  この春、晴れて東京の某農業大学(これが正式名称)に入学した沢木……

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第162夜 憎しみと受容と愛をもって全天を仰げ…『ほしにねがいを』

「私達みんなひとつだったんです」「あ! もしかして……ビッグバンの前の事?」「今もひとつです/私達みんな違うけどひとつ−−/ここの宇宙もその他の宇宙も/草木も虫も/鳥も魚も海も土も/マグマも時間も/空間も暗黒も/私も輝くんも/有るのはみんなひとつ−−/ただ/それを言葉で分けている……

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第161夜 ネタの嵐がもたらす奇妙な詩情…『平成義民伝説 代表人』

「魚権(ウォーケン)は自分に誓った/イガラシのために命をかけて「シャクレル」と/そして/イノキとイノチは/ちょっと似ている/と思った」 『平成義民伝説 代表人』木多康昭 作、講談社『週刊少年マガジン』掲載(2002年2月~同5月)  国民的男性アイドルユニットIG……

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第160夜 少女の帰還を導くのは、凄惨な楽園の幻視…『クーの世界』

「今日もまた/クーの世界で目覚めるんだろうなあ/どうせ夢がつづくなら/ずっとクーの村で暮らしたいなあ/家捜しの旅なんて無駄だよって/夢の中の私に言ってあげられたら……」 『クーの世界』小田ひで次 作、講談社『月刊アフタヌーン』掲載(1999年11月~2000年11月……

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第159夜 ともあれ、二人、生きていくのだ…『娚(おとこ)の一生』

「……私は……昔…」「もうええわ/君の過去のなんのは/つまらん/幸せの話をすると君は下を向くんや/過去には戻れへんのに/どうして目の前のぼくを見いひんのや?」 『娚の一生』西炯子 作、小学館『月刊フラワーズ』→『フラワーズ増刊 凛花』(スピンオフ)掲載(2008年7……

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第158夜 狂わざれば、その時代を生きること能わず…『シグルイ』

「士(さむらい)の命は/士の命ならず/主君のもの/なれば/主君のために死場所を得ることこそ/武門の誉れ/封建社会の完成形は/少数のサディストと多数のマゾヒストによって構成されるのだ」 『シグルイ』南條範夫 原作、山口貴由 作画、秋田書店『月刊チャンピオンRED』掲載……

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