100夜100漫

漫画の感想やレビュー、随想などをつづる夜

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「 100夜100漫 」 一覧

第197夜 孤独の夜を越えて、愛しい風よ吹け…『神風怪盗ジャンヌ』

私は強い/だからひとりで大丈夫/だけど 「……っ」 だけどね/ほんとうは―――… 「ずっと“勇気がほしかった”…/逃げ出さずに朝を待つ勇気…/自分の心と向き合う勇気…/誰かを信じて頼れる勇気が/ほしかった…」


神風怪盗ジャンヌ (1) (りぼんマスコットコミックス (1100))

神風怪盗ジャンヌ種村有菜 作、集英社『りぼん』掲載(1998年1月~2000年6月)

 容姿端麗にして成績優秀、新体操部でも活躍する高校生、日下部まろん(くさかべ・――)。彼女には秘密があった、夜ごと巷を騒がす絵画専門の怪盗ジャンヌとは、すなわち彼女の変身した姿なのだ。
 しかし、彼女の盗みは私欲ではない。準天使を名乗るフィン・フィッシュから、自分がかのジャンヌ・ダルクの生まれ変わりだと告げられた彼女が盗むのは、魔王によって絵画の中に潜まされた悪魔たち。遥か昔から世界を手に入れようとしてきた魔王が、神の命の源たる人間の「美しいと思う心」を蝕むために放ったそれら悪魔を“チェックメイト”して回収し、失われつつある神の力を取り戻すことが、彼女の使命なのだ。
 マンションの隣室に住む親友にして刑事の娘、東大寺都(とうだいじ・みやこ)に追われつつ使命をこなすジャンヌ=まろん。そんな彼女の前にある日、名古屋稚空(なごや・ちあき)と名乗る少年が現れる。「俺とつきあわない?」と軟派な態度をとる稚空に、まろんは困惑する。さらに、ジャンヌの前には黒天使アクセス・タイムと行動を共にする謎の怪盗シンドバッドが現れ“チェックメイト”勝負を挑んできて、彼女の日々は俄かに波乱含みに。
 徐々に稚空に惹かれ、「君に怪盗をやめさせたい」と云うシンドバッドと共闘することもありながら、まろんは他人を信じきれない。そこには彼女の哀しい生い立ちが影を落としていた。さらに、高校教師、紫界堂聖(しかいどう・ひじり)や悪魔騎士ノインの登場により、まろんとしてもジャンヌとしても彼女は動揺を深めていく。
 そして明かされる真実。打ちひしがれた彼女を、彼らはそれぞれの在り方で見守る。ある孤独と愛をめぐる戦いの、最終局面が近づいていた。

(さらに…)

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第196夜 世界を憂う躁状態に、笑って唖然…『エクセル・サーガ』

「出たな権力の手先!」「……いいけどよ」「ええと!/とりあえず名を名乗れっ」「個人情報は答えられないわ/市役所の方から来た者よ」「ほんに胡散臭いな/わしら」 『エクセル・サーガ』六道神士 作、少年画報社『ヤングキング アワーズ』掲載(1996年6月~2011年7月)……

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第195夜 個人教授は軽く甘く、しかし数値的には厳密に…『マンガ 化学式に強くなる さようなら、「モル」アレルギー』

「プラスの電荷を持つナトリウムイオンとマイナスの電荷を持つ塩化物イオンは静電気の力でお互いに近づいて……/引き合って結合する」「結合……」「うん」「そして……/白いものができる」「まあ……」「塩だ」「塩? 塩を出してどうすんのよ/ああもう! ムードもへったくれも!」 ……

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第194夜 可憐な悪夢と、凄惨な現実を、その日記に…『アノネ、』

「誕生日にもらった鍵つきの日記帳は/秘密の扉みたい/床におくと鏡にもなるの/のぞきこむと/未来がみえる」「花子/花子/どうしてこんなことに」「太郎さん/太郎さん/あのね――」 『アノネ、』今日マチ子 作、秋田書店『エレガンスイブ掲載(2011年2月~2013年4月)……

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第193夜 拙くのぼる、大人の階段…『やさしい子供のつくりかた』

「ずっとずっと/さきのことだけど。/どっからが大人なのか/全然わかんないけど/「大人になったら」って思ってる/おれは/きっとまだ子供なんだろうな」 『やさしい子供のつくりかた』丘上あい 作、講談社『デザート』掲載(2002年6月~2005年10月)  小学6年生の……

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第192夜 その“ヘンなの”と過ごした日々を忘れない…『のらみみ』

「やっぱりアレですか。/居候するならドジでメガネでひとりっ子の男の子ですか?」「そりゃあもちろん。/キャラならみんなが憧れる環境じゃないですかね。」「僕、ひとりっ子とドジっていうのはなんとなくわかるんですけど、/メガネの理由がわかんないんですよね。」「さあ…おいらにも説明はできな……

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第191夜 逆巻く風雪は、ふたりのために…『千年万年りんごの子』

「留まる力と/変わる力/それでも/すべてのものは無慈悲に終わる/小さな切欠によって/朝日/君だけが確かだ」 『千年万年りんごの子』田中相 作、講談社『ITAN』掲載(2011年12月~2014年2月)  1970(昭和45)年。一組の夫婦が誕生した。  東京の大……

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第190夜 海を渡った会津者たちの夢の果て…『White Tiger〜白虎隊西部開拓譚〜』

「黄金を夢見た者も/故国で行き場をなくした者も/覚悟して海を渡りここに行きついた/ここで生きていくほかないのだ/異国で生きるとはそういう事だ」 『White Tiger〜白虎隊西部開拓譚〜』夏目義徳 作、集英社『グランドジャンプ』→「GRAND JUMP WEB」掲……

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第189夜 霊との日々、それが“少年”を了えさせる…『花田少年史』

「いいからちんちんしまえよ/いい大人が・・・・!/おばけだからってナニしてもいいと思ったら大間違いだぞ!」「へへへ―――/おいちゃんは裸がいち~~ばん好きなの!」 『花田少年史』一色まこと 作、講談社『ミスターマガジン』掲載(1993年9月~1995年8月)、のち『……

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第188夜 独りで穏やかに生きていける、つもりだった…『ヒミズ』

「ねぇ・・・・何かないの? ・・・・有名になりたいとか/お金持ちになりたいとか・・・・若者らしいフレッシュなヤツは」「ないね」「オレはモグラのようにひっそりと暮らすんだ・・・・・・・・」 『ヒミズ』古谷実 作、講談社『ヤングマガジン』掲載(2001年1月~2002年……

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