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漫画の感想やレビュー、随想などをつづる夜

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【一会】『猫瞽女―ネコゴゼ― 4(完)』……ここぞ胸突き八丁、けじめの刻

猫瞽女-ネコゴゼ- 4巻 (ヤングキングコミックス)

 戦後まもなくソ連に占領され、共産主義が台頭したパラレルな1950年代の日本を舞台に、擬人化された猫たちによる遊侠活劇を描いた『猫瞽女ネコゴゼ―』。完結巻となる4巻が、今春刊行されました。
 盲目の女芸能者・瞽女(ごぜ)にして三味線に仕込んだ暗殺剣の達人でもある夜梅(ようめ)と、ロシア正教に由来するらしい特殊能力“機密”によって対象の知覚を遮断する能力を持つ行者の鶯(うぐいす)という2匹の縁と、露わになった極左勢力「世界革命執行人」のナンバー1(アジーン)「二本尾っぽ」の革命への野望の行方はどんなものとなるでしょう。例によって遅きに失した感はありますが、内容と感想を織り交ぜつつ、語ってみたいと思います。

 前巻の後半で、夜梅の過去が明らかになるとともに、兄・梟(サヴァ)に彼女が刃を向けたことから、鶯は去っていきました。2匹が再びまみえるのは、共通の仇敵である「二本尾っぽ」が蹶起の気配を嗅ぎつけ向かった東京炭鉱・青梅収容所の他にないでしょう。
 今巻の冒頭は、そんな蹶起を見張る一本独鈷の建治とお辰の会話から。片や夜梅たちに助けられたやくざ者、片や高官向け娼館「時計屋」の女たちの姐さんといった体で、ともに物語の初期から登場している彼らですが、やり取りから察するに長年連れ添った仲のよう。しかも、話している内容からすれば、やくざ者や娼婦のリーダーとはまた別の顔を持っていそうです。
 彼らの会話から改めて分かるのは、横田から始まった第32狙撃猫師団の反乱は、秘密結社「善智なる盗賊(ラズボイニカ)」が世界革命に見せかけて蜂起するよう工作した反共クーデターである、ということ。夜梅や鶯を始め多くの者が探していた「二本尾っぽ」は、「善智なる盗賊」の罠に見事に引っかかったというところでしょうか。ともあれ、「二本尾っぽ」率いる「世界革命執行人」と、梟が鶯を引き込んだ「善智なる盗賊」および旧日本政府の依頼を受けた長岡瞽女座の連合勢力による激突は間近といったところ。前巻で鶯に去られ、その落胆からようやく立ち直った夜梅は、道案内の少年ロフとともに下水道を通じて因縁の「二本尾っぽ」の処へと向かっている真っ最中です。

(さらに…)

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