第70夜 シリーズ屈指の異色作に宿る勇気の力…『ジョジョの奇妙な冒険Part4 ダイヤモンドは砕けない』 | 漫画のレビュー&随想 | 100夜100漫

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第70夜 シリーズ屈指の異色作に宿る勇気の力…『ジョジョの奇妙な冒険Part4 ダイヤモンドは砕けない

      2014/01/04

「この人は35年間 この町のおまわりをしてきた/出世はしなかったけど 毎日この町を守るのがこの人の仕事だった/今さっきもアンジェロの仕業と思われるニュースをきいたとき/この人は『町を守っている男』の目になった/……/おれが この町とおふくろを守りますよ/この人の代わりに……/どんなことが起ころうと…」


ジョジョの奇妙な冒険 第4部 カラー版 13 (ジャンプコミックスDIGITAL)

『ジョジョの奇妙な冒険Part4 ダイヤモンドは砕けない』荒木飛呂彦 作、集英社『週刊少年ジャンプ』掲載(1992年4月~1995年11月)

 1999年、日本国M県S市杜王町(もりおうちょう)。高校生の東方丈助(ひがしかた・じょうすけ)は不思議な力を持っていた。彼は、かつてディオと闘ったジョセフ・ジョースターの隠し子。空条承太郎(くうじょう・じょうたろう)の年下の叔父にあたる。
 承太郎は、丈助に彼の血縁と財産の相続権について説明するため杜王町を訪れる。だが、彼にはもう1つ目的があった。何者かによって杜王町に危機が迫っている。それが何なのかを見極めることだ。
 スタンド使いはスタンド使いと惹かれ合う。その言葉をなぞるように、街には奇妙な出来事が頻発するようになる。丈助とスタンド使い達は、町を護るために行動を開始する。

町をめぐる冒険
 『ジョジョ』全パートの中でも異色作であろう。「冒険」という言葉には、何らかの形をとっての旅というニュアンスがあると思う。それ故に『ジョジョ』の1部から3部まで、また5部(第21夜)以降でも、何らかの旅という形を取っているが(最新の『ジョジョリオン』については後述)、本編だけはM県S市(恐らくは作者の出身地である宮城県仙台市)の杜王町という1つの町を舞台とし、その場所の特色や由来を掘り下げることで「冒険」たらしめている。
 異色なのはその点だけではない。日本国内を舞台としたことで立ち現れてくるミスマッチさだ。荒木飛呂彦の絵柄(というかセンス)は、海外的なものを多分に含んでいる。そのキャラクターデザインも立ち姿も欧州的なエレガントさを旨としているし、筋肉やスタンドの描き方はアメリカンコミックス的、台詞回しも洋画の吹き替えを髣髴とさせる。そうしたセンスそのままのアイロンパーマをかけて奇抜な制服姿の丈助や、3部から続投の承太郎が、杜王町にいるというミスマッチには、その違和感に快ささえ覚える。同じように、海外的なセンスを持ちながらも純日本的な環境で育った作者が描く日本家屋など“日本的なもの”の姿は、不思議な折衷具合をみせ、新鮮さに満ちていると云えるだろう。
 さらに、作者自身の故郷を舞台としたことで、作中から作者の郷土愛を感じられるという点も特異だ。物語に挿入される“杜王町名所案内”は、荒木飛呂彦による“世にも奇妙な地元紹介マップ”なのだ。それ以上に、杜王町を護る者たちの闘いは、そのまま郷土愛の表現なのだと思え、スタイリッシュさだけが印象として残っていた作者の別の顔を現しているようで嬉しくなる。

“無かったことにする力”と“何度でもぶつかって進む勇気”
 異色作とはいえ、シリーズが湛える正義というテーマについてはいささかのてらいもない。本編での最後の敵として立ちふさがるのは、自分に不都合な事象を“無かったことにする力”の使い手だ。狡猾で、なかなか尻尾を掴ませないが、いざ対峙することになれば、手段を問わずに排除にかかる冷酷さを兼ね備えるこの敵に、“治す力”を持つ丈助を中心としたスタンド使いたちは立ち向かう。
 それは、“無かったことにする”という甘ったれた思想に対する、起こったことが悲劇であろうともそれを受け入れ、更に前に進もうとする凛然たる勇気の挑戦とみなすことができる。どちらに分があるかは明らかだろう。が、どちらがより格好いいかもまた、明らかだ。
 そしてその勇気とは、別にスタンド使いだけが持っているものとは限らない。本作で最も勇敢だったと自分が思うのは、スタンド使いでも何でもない「11歳のちっぽけな少年」だ。彼の、そして丈助たちの勇気に、大いに熱中するだろう。
 本編と直接関係はないものの、作者が現在連載中の『ジョジョリオン』は、パラレル世界とも云える杜王町を舞台としている。本編と表裏一体を成すような物語となるのか、あるいはどこかで流れを違えていくのか、見守りたい。

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Comment

  1. はるさめ より:

    100夜100漫さま、こんにちは。ブログにコメントいただき、ありがとうございました。

    私の友人のジョジョファンも言っていたのですが、4部は『異色』ですよね。
    突如イタリア料理を食べに行ってみたり(^_^;)
    ジョジョには珍しく、一つの街で全ての出来事が起こるという、非現実的でありながら日常的なところがまさに「奇妙」です。
    私は「狩りに行こう!」の回が好きです。妙に動物に詳しい承太郎が新鮮でした。

  2. 100夜100漫 より:

    はるさめ様
    こちらこそ、コメントを迅速に記事に組み込んで下さってありがとうございました。

    4部は外伝的な位置づけなのかな、と読み始めた頃は思っていました。けれど、ラストはすごくジョジョ的でしたね。

    承太郎さんは、ヒトデの研究で博士号を取るくらいですから、生物全般に詳しいのでしょう。いつどこでそんな勉強をしたのか分かりませんけれど。。

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