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第7夜 シュールギャグが描く時代の気分…『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん

      2014/04/21

「お前のパンチを喰らって倒れなかったのは…オレが初めてだぜ…!!」


セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん』うすた京介 作、集英社『週刊少年ジャンプ』掲載(1995年12月~1997年8月)

 県立わかめ高校に転校してきた藤山起目粒(ふじやま・おこめつぶ)は、同じクラスの花中島マサルと親しくなる。が、マサルは「普通の格闘技における『フェイント』なんかの技術を『技』として極めた」とてつもなくヘンな格闘技“セクシーコマンドー”を実践する部活の設立を目論む怪しい高校生だった。
 マサルの親友でダブりの小話大王マチャ彦、虚弱体質だけど筋肉の神様が憑いてるキャシャリン、元めがね君のアフロ君、古参セクシーメイツ(セクシーコマンドーをたしなむ人のこと)で黄門様のさかきばらのぶゆき校長といった部員に加え、ヒゲマニアが高じてマネージャーになったモエモエ、マスコットの“めそ…”らが巻き起こす、シュール、脱力、ファジー、青春、狂気のグラフィティ。

みんなでもきゅー
 90年代半ば、高校生だった自分の周囲では、普段は漫画を読まないような人も含め、誰も彼もがマサルさんに言及した。セクシーコマンドーはもちろん、“めそ…”の鳴き声「もきゅー」に異常に人気が集まったのは、その語感が斬新で、かつ可愛かったからだと思う。
 影響を受けたのは高校生だけではなかったようで、その後の漫画・アニメ作品には、本作に影響を受けたと思われる“過剰なデフォルメ絵”や“キュピーンと光る目”などの描写が散見された。
 本作ではおおむね、概要に記したようなヘンな格闘技を巡っての高校生の不思議にハイテンション(一部ローテンションもあり)な日常が描かれる。自分は「意表を突く」という言葉が大好きなのだが、まさに本作では「意表を突く」ことが爆発的なギャグになっている。セクシーコマンドーの理念自体がそうであるし、話の展開そのものについても同様のことが言える。一体だれが、ロボピッチャが空の彼方へ飛んでいくことを想像できるだろうか。できるか、そんなもん。

せいいっぱいの、う○こ
 一方で、吾妻ひでおを愛読していたらしい我が父親が云っていたことだが、「ギャグ作家は命を削ってギャグを書くが故に短命である」ことが多いらしい。本作もご多分に漏れず、作者のうすた京介は深夜にテンションを無理やり上げて制作していたという(そのせいでアシスタントが定着しなかったという話も聞いたが、本当だろうか)。ヘンテコながら、恐らくは作者の育った熊本の県立高校をモデルにした高校生活の描写の向こうに、そんな勢いに任せて制作する作者のライブ感が仄見える。この感覚は、ほぼ同時期にテレビ放映されていた『新世紀エヴァンゲリオン』の最終話付近の感じに近い。創るもののために血を流し、その時の気分を定着させる。それが、あの頃の空気だったのかもしれない。
 ちなみに、タイトルに『~外伝』とあるのは、恐らく作中で語られる室町時代におけるセクシーコマンドーの成立を描いた一篇が正伝だからなのだと自分は思っているのだが、どうだろうか。

*書誌情報*
☆通常版…新書判(17.6 x 11.4cm)、全7巻。作者の言葉、写真などあり。一部絶版。出井氏書籍化済み。
☆ウ元ハ王版…A5判変型(19.2 x 14.6cm)、全5巻。蛍光1色彩色、紙上オーディオコメンタリ、最終巻に書き下ろし「第三部」あり。

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