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第65夜 日常的な夢想に遊ぼう…『COJI-COJIコジコジ)』

      2013/09/13

「コジコジだよ/コジコジは/生まれた時からずーっと/将来も/コジコジは/コジコジだよ」


COJI-COJI 4 (りぼんマスコットコミックス)

『COJI-COJI(コジコジ)』さくらももこ 作、ソニー・マガジンズ(現エムオン・エンタテインメント)『きみとぼく』掲載(1994年11月~1997年4月)

 メルヘンの国でコジコジは暮らしている。メルヘンの国には、半魚鳥の次郎や、雪だるまのコロ助、光のつぶのペロちゃん、その他にも大勢の仲間がいて、学校で人間を楽しませるメルヘンの住人になるための勉強をしている。でも勉強よりも皆と遊んだり、悪者と遊んだり、知らない子達と遊んだりする方がコジコジは好きだ。
 特に目的もなく、メルヘンで非日常的な日常は淡々と続いていく。

特殊な理想郷
 さくらももこといえば『ちびまる子ちゃん』が最も有名だろう。自分も小学生の頃に従姉の蔵書として同作に出会い、呼吸困難になるほど笑ったものだが、ここでは本作を押したいと思う。
 とは云ったものの、とてもレビューに困る作品だ。物語の中心が存在しないようで、取っ掛かりが無いのだ。しかし、不可思議な面白さを湛えている。
 単純に、出てくるキャラクターに魅力がある。メルヘンの世界なので基本的には「○○の精」というような精霊だが、統一感なくジョニー(謎のブルガリア人)がいたり、蛙がいたり、あまつさえヤカンがいたりする。それらのキャラクターの発想と造形が、そしてそれらがだらだらと毎日を過ごす様子が、いかにもさくらももこ的としか云いようのない、ある種の理想郷を形作っている。このあらゆる種類のもの、善悪すらも混濁し、それが呑気に日々を過ごす様子は、様々な価値観の混在を受け入れる日本人によってしか生まれなかったタイプの理想郷と云えるのではないか。

コジコジは、元気
 かように不可思議な作品世界だが、最も不可思議なのは一応の主人公であり作品タイトルにもなっているコジコジだ。まず名前からして何の精だろうと思わされる。なにものにも起源を持たなさそうなこの存在は、裏を返せば全てを体現しているのかもしれない。作中でもそのように解釈できるシーンは一度ならずある。
 ふと、インド神話の維持神ヴィシュヌのことを思い出す。多頭の龍神アナンタを船として昼寝するヴィシュヌのみている夢が、この世界なのだという言い伝えがあるそうだ。本作に微かに感じ取れる、オリエンタルというかアジアンな幻想世界のような雰囲気は、コジコジが、そんな夢見の神の類であることを示唆しているのかもしれない。
 しかし、それもこれもどうでもいいことなのかもしれない。物語はそんな方向には進まない。この世界には、季節の変転はあっても物語としての時間経過はないようなのだ。
 書誌情報を調べると、本作はいちおう未完、ということになるらしい。が、こうした作品に始まりと終わりがあるものだろうか。そんなところも含めて、神の遊び場のような作品世界で、読者自身も住人となって遊ぶのが正しいのかもしれない。

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