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第51夜 ふたりでいるって、割と素晴らしいこと…『くらしのいずみ

      2013/10/08

「俺らももう長いし/そろそろする? 結婚」


くらしのいずみ (ヤングキングコミックス)

『くらしのいずみ』谷川史子 作、少年画報者『YOUNGKING アワーズ増刊アワーズプラス』『YOUNGKINGアワーズ』掲載(2006年4月~2008年1月)

 世の中には色々な夫婦がいる。友達のような夫婦、文科系優男と体育会系女の夫婦、20歳の歳の差夫婦、仮面っぽい夫婦、編集者の夫婦――。
 それぞれに恋をし、夫婦となって、少しばかりの問題をかかえつつも、それでも二人、生きている。そんな夫婦たちの日常を描いたオムニバス連作集。

爽やかな日常譚
 谷川史子の名前を初めて知ったのは、たぶん妹が読んでいた『りぼん』に乗っていた作品によってだったと思う(『愛はどうだ!』だったかと思う)。その時からその清らかな画には魅せられて、後年、一時期こうの史代(第5夜参照)がアシスタントをしていた漫画家であるということを知って、余計に興味を掻き立てられた。そんな折に偶々見つけたのが本作である。
 本作が一時は『HELLSING』(第39夜)と同じ雑誌に掲載されていたということに衝撃を受け、夫婦ものといっても非常にドロドロしたものになっているのかと変な妄想をしたが、作風は少女漫画時代から大きくは変わっていないのでひと安心だ。日常の中で起きた小さな事件を乗り越えつつ、純粋に思いあう夫婦の姿が、あの清冽さを醸し出す画風で描き出されており、一服の清涼剤のような読後感を覚える。全6組の夫婦のエピソードと、同じく結婚がテーマながら少し毛色の違う短編が1篇収録された本であるが、自分としての白眉は1軒目だろうか。他と比べてもあまり起伏のない、本当に素朴な物語だが、それ故に純化された恋情(夫婦だってお互いに恋をする。何と罪のないことだろう)が心に沁みる。このご夫婦の日常を、もっと読んでみたいと思った。

結婚が分からなくなった人へ
 一方で、キレイすぎて本作の物語はリアリティが無い、という声はあると思う。特に既婚者の諸姉諸兄からは「本当の夫婦はこんなものじゃない」とか「結婚は我慢のし合いなんだよ」等々の台詞が聞こえてきそうだ。
 例えそれが現実であっても、憧れを描くのは物語の大切な役割だ。本作を読んで、素敵な結婚に憧れた読者が、いわゆる“結婚の現実”を知らないままに幸せな家庭を築けたならば、それはとてもいいことではないだろうか。少なくとも、大人の読者が憧れるのに無理がないくらいには、本作はリアルさを持ち合わせている。
 ちなみに本作は、知人に「結婚したくなる本を教えて欲しい」と相談され、自分が思わず勧めた1冊でもある。もしも結婚について深く考えすぎて、何が何だか分からなくなってしまった人がいたら、一度頭をまっさらにして、本作を読んでみるのもいいかもしれない。

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