第41夜 豪華で特濃。中華をめぐる仁義なき戦い…『鉄鍋のジャン!』 | 漫画のレビュー&随想 | 100夜100漫

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第41夜 豪華で特濃。中華をめぐる仁義なき戦い…『鉄鍋のジャン!

      2013/09/13

「料理は勝負だ! 勝てばいいんだ!! 」


鉄鍋のジャン 01 (コミックフラッパー)

『鉄鍋のジャン!』西条真二 作、秋田書店『週刊少年チャンピオン』掲載(1994年12月~2000年3月)

 国内最高峰といわれる東京銀座の五番町飯店に、謎の挑戦者がやってきた。飯店のものよりも美味しい炒飯を手際よく作った、まだ10代の挑戦者の名前は秋山醤(あきやま・ジャン)。“中華の覇王”と呼ばれた料理人、秋山階一郎(――・かいいちろう)の孫だという。既に世を去った階一郎の友人にしてライバルだった飯店オーナーの五番町睦十(ごばんちょう・むつじゅう)は、ジャンを五番町飯店に雇ったのだ。
 祖父のライバルを前に、ジャンは「数か月のうちにあんたを追い越してみせる」と言い放つ。しかしその前に、“最低の性格と最高の舌”を持つ料理評論家の大谷日堂(おおたに・にちどう)を始め、国内外の中華料理界の曲者たちが立ちはだかるのだった。
 「料理は勝負」と言い張り、勝つためには手段を選ばないジャンと、オーナーの孫娘で「料理は心」が信条の五番町霧子(――・キリコ)はことあるごとに衝突する。いがみ合う2人を中心に、若手料理人が参加するトーナメント形式の料理バトル、全日本中華料理人選手権大会が開会する。

誠実な悪童
 まず断っておきたいのだが、本作の料理勝負におけるジャンのライバルには、まともな性格の人間がほとんど登場しない。金と名誉欲に溺れた評論家を皮切りに、金持ちで上から目線の御曹司、危険な効能を引き出したがる薬膳マニアなど、性格の悪い卑劣な人間ばかりである。それをさらに卑劣なやり方で屈服させるのがジャンのやり方だ。ここにある種のピカレスクロマン(悪漢小説)的なカタルシスを感じることができるだろう。
 また、卑劣といっても、ジャンは料理そのものは真面目に作る。この“食べる人に最大限の美味いものを”という点においては、ジャンは誠実この上ないのだ。労力的に全く見合わず常人なら断念するような手法を、料理トーナメントでも迷わず選択し、それによって自ら手傷を負うこともある。また毒舌ではあっても暴力を振るうことはほとんどない。微妙なバランスながら、これによって本作はアウトロー的な作品によくある下品さを消し去ることに成功している。

この乱雑さが中華だ
 キリコという清廉さを湛えた人物はいるものの、どぎつい人物が次から次へと群雄割拠する作品世界は、常に獄彩色に照り輝いているように見える。本物の中国や横浜などの中華街に行ったことがある人は分かるかもしれないが、このギラギラした感じが中華なのだと思う。宇河弘樹に『朝霧の巫女』の前日(前時代?)譚を描いた作品を収録した『妖の寄る家』という短編集があるが、その中に「龍門亭的姑娘」という掌編が収められている。ぎゃあぎゃあやかましい中華料理屋で観光客が料理を食べるというだけの話なのだが、まさにこの感じを全体でやっているのが本作と云えるだろう。あらゆるものが主張するカオスの中から、極上の美味が立ち上がってくる。それが中華料理というものなのだろう。

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Comment

  1. ふう より:

    100夜100漫さん、こんにちは。遊びにきました。
    「鉄鍋のジャン」面白いですよね!
    審査員がおいしいものを食べるたびに「ほゎぅお!」とか変な声を出すため、ジャンを読み終わっておいしいものを食べると、つい自分でも「ほゎぅお!」とか言ってしまいます。
    ジャンの料理を再現してくれるお店があったらいいのに…と、いつも思います。

  2. 100夜100漫 より:

    返事が遅くなりすみません。
    ようこそ100夜100漫へ。

    審査員が「ほゎぅお!」と言ったのは、確かジャンが牛か豚の骨髄を使った料理を作ったときでしたね。
    ジャン料理のお店いいですね。私は“飲めるラー油”を使った“真紅の炒飯”をぜひ食べてみたいです。

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