第33夜 淋しさの記憶を抱え、彼らは奇跡と親和する…『浪漫倶楽部』 | 漫画のレビュー&随想 | 100夜100漫

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第33夜 淋しさの記憶を抱え、彼らは奇跡と親和する…『浪漫倶楽部

      2015/03/14

「だからこそ浪漫倶楽部の出番だろ!!/これから一緒に不思議な事件が起きたら一つ一つ解決していけばいーじゃないか!!」


浪漫倶楽部 1 (BLADE COMICS)

『浪漫倶楽部』天野こずえ 作、エニックス『月刊少年ガンガン』掲載(1995年5月~1998年2月)

 火鳥泉行(かとり・せんこう)は夢ヶ丘中学校の2年生。彼には幼い頃から他人には見えないものが見える不思議な力、「第2の瞳(セカンドサイト)」があった。それが何なのか確かめるため、夢ヶ丘中周辺で昔から続発している奇妙な出来事を解明すべく設立された「浪漫倶楽部」の部員となったのだ。しかし、今のところ部員は火鳥1人きりの弱小部活だった。
 ある日、設立者で部長の綾小路宇土(あやのこうじ・うど)と不思議事件を捜査していると、火鳥は裏山で彼にしか見えない小さな女の子と出会う。彼女は丘の上の丘神石(きゅうしんせき)から生み出された「石の精霊」であり、古来、霊的土地(パワースポット)である丘を鎮める役割を負っているという。精霊を目の当たりした2人は、彼女に浪漫倶楽部への入部を持ちかける。
 人間に接し過ぎることで石の封印が弱まり、動植物や物の願いによって不思議事件が発生することを恐れた彼女は拒絶するが、淋しさという感情を知り、葛藤する。火鳥は「不思議事件を一緒に解決しよう」と説得し、彼女にコロンという名前を贈る。かくして、部長に火鳥、精霊コロン、そして新たな入部希望者の橘月夜(たちばな・つくよ)も加わり、不思議事件を追う浪漫溢れる物語は始まる。

放課後の校舎にみる夢想
 本作をいつ愛読したのか、実はよく思い出せない。連載中の『少年ガンガン』本誌は確かに読んでいたので、恐らくそれほどに(自らの意識にとって異物と感じないほどに)思春期の自分との親和性が高かったのだろう。
 話の内容は甘いといえば甘い。「優しい奇跡」と云おうか、最終的には全てあるべき処に収まり「よかったね」となる1話完結のエピソードが大半だ。
 ただ、それだけにディテールに共感する読者を強く捉える。放課後、無人となった校舎で友人達と他愛もないこと(本作では不思議事件だけど)に熱中する様に自分は惹き付けられた。そうした時間の大切さはその時には感じないものだろうけれど、後になって顧みると、還らない時の綺麗さと儚さに茫洋とした気持ちになる。本作は水の流れのような清冽な絵で提示することで、そのことをしみじみと感じさせてくれる。

友達の作り方
 わざわざ書くのが無粋なほどに、そうした時間に友という存在は不可欠だ。しかし、コロンは別格とするにせよ、泉行、宇土、月夜、誰もが友達について不得手である。人と違った能力や感性ゆえに。不思議事件を介しての幽霊や器物とのコミュニケーションとは、意地悪く云えば、そうした学校社会からの逸脱者達の哀しい逃げ場所とも読み取れてしまう。
 が、心配は無用だ。人ならざるものとの交感を補助線として、翻って彼らは人との繋がりを見出だしていく。不思議事件がどうあれ浪漫は消えず、それゆえに、人と人の交感も消えはしない。処女連載作にして既に後作『ARIA』に繋がるスタンスを備えたこの物語は、「仲良くなるのに気負いなど不要」という信念を、穏やかな描写のうちに示唆しているように思える。

*書誌情報*
☆通常版…新書判(17.8 x 11.4cm)、全6巻。絶版。

☆新装版…B6判(18.2 x 12.8cm)、全6巻。絶版。

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