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第20夜 闘いに臨む覚悟と、その果ての慈悲…『怪奇警察サイポリス

      2014/02/01

「汝の魂に、幸いあれ…!」


怪奇警察サイポリス 第1巻 (てんとう虫コミックス)

『怪奇警察サイポリス』上山道郎 作、小学館『月刊コロコロコミック』掲載(1991年12月~1995年6月)

 新聞部の部長を務める中学2年生、鬼塚勇気(おにづか・ゆうき)。同級生の新聞部員、三原千夏(みはら・ちなつ)に押されつつも部を取り仕切る毎日だが、彼には別の顔があった。悪魔や妖怪を退治し人間を守る怪奇警察、サイポリス。勇気はその一員として戦う戦闘員なのだ。更に彼は鬼の血を引く半人半妖の身であり、敵との闘いにおいても鬼に現身(げんしん)することで超人的な戦闘力を発揮する。
 戦闘をサポートする金田博士、戦闘員の神和住京子(かみわずみ・きょうこ)らとともに幾多の妖怪と戦いを繰り広げる勇気。やがて彼の血筋が因縁となり、魔界をめぐっての闘いが始まる。

敵の幸いを願うということ
 1990年代前半の『コロコロコミック』において、比較的硬派なバトル漫画として本作は人気を博した。自分はそれをリアルタイムで読んでいたのだが、当事の『コロコロ』掲載作品としては垢抜けた画風で、ちょっと大人びたストーリー展開もあって引き込まれた。戦闘シーンには『ドラゴンボール』や『ジョジョ』の影響がみられるが、そうした点は当事のバトル漫画ならば別段珍しくもないし、当事20歳そこそこの若描きだった作者の試行錯誤とも取れて今となっては微笑ましい。
 独創的なのは、決め台詞にみられるように“倒した敵の幸いを願う”ところだと思う。妖怪や悪霊には救われない身の上の者が多い。そうした者をただ滅ぼすのではなく、その後の魂の救済を願うのだ。一歩間違うと独善的な物言いなのだが、主人公が持つ鬼(=超自然的な力の象徴)という属性によるものなのか、不思議と納得させられる(とはいえ、自分にとっての本作ベストバウトは関西弁の巫女風サイポリス京子VS無限の再生能力を持つ四柱王の西の将、夜玖沙(ヤクシャ)との闘いなのだが)。

思春期の終わり
 主人公の勇気は鬼の血を引く強者として描かれるが、一方で純然たる人間でないことへの引け目を若干ながら感じている。これは古今東西の変身ヒーローに共通のテーマと云えるだろう。
 第1部の終盤では、このことがフォーカスされるのだが、彼の場合、このことについて考えるとき、そこには自分の鬼の力の源である親との決別ないし精神的独立という通過儀礼が必要となってくる。中学2年生といえば『新世紀エヴァンゲリオン』を引くまでもなく、自己の確立の時期である。『コロコロ』の読者層としてはいささか早いテーマだったのかもしれないが、やがて来る時の予感として、彼の懊悩とは少年たちの心の深層に残ったのではなかったか。
 本作は第2部の序盤で打ち切られてしまったようだが、第1部の結果として自己が固着した主人公に、読者はそれほど共感できなかったのだろう。もう少し読者の年齢層が幅広い媒体に載っていれば、続きが読めたのかもしれない。自分と同じように懐かしむ人が多かったのか、2010年に漫画復刊サイト「コミックパーク」から復刊が成されている。

*書誌情報*
☆通常版…新書判(17.4 x 11.4cm)、全9巻。絶版。
☆復刊版…復刊サイト「コミックパーク」にて購入可能。

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