第136夜 エイリアンたちと、黒く楽しく異文化交流…『レベルE』 | 漫画のレビュー&随想 | 100夜100漫

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第136夜 エイリアンたちと、黒く楽しく異文化交流…『レベルE

      2014/01/17

「現在 地球には数百種類の異星人が飛来している/気づいていないのは地球人だけなのだ/彼らの目的は様々で 国家レベルの策略から個人レベルの研究・犯罪まで多岐にわたる/なかには/何のために地球に来たか忘れてしまった奴も いるだろう」


レベルE 1 (ジャンプ・コミックス)

『レベルE』富樫義博 作、集英社『週刊少年ジャンプ』掲載(1995年9月~1996年12月)

 補欠ながら中学野球で優勝経験もある筒井雪隆(つつい・ゆきたか)は、高校進学と同時に山形のマンションで一人暮らしを始める。しかし、訪れた彼の新居では既に勝手に生活している男がいた。記憶喪失の宇宙人だと云うその男と悶着の末、なんとなく同居し始める雪隆だが、その同居人をめぐって(というか同居人自身の厄介な性格の故に)騒動は巻き起こる。隣室に住み始めた雪隆の同級生の江戸川美歩(えどがわ・みほ)、人類側の宇宙人研究機関、同居人を探して飛来した護衛達、山形周辺を縄張りとした好戦的なディスクン星人などにより、事態は混迷していく――。
 雪隆たちと同じように、地球人類の中にこっそりと入り込んだ異星人たちと、幸か不幸かそのことに気づいてしまった人間たちの接触は続く。時にシビアに、時に優しく、彼方からの来訪者たちによって、地球はゆっくりと新しい時代を迎えていく。

“異なるもの”との邂逅と混交
 実は映画『ET』をまともに観たことがない。『NieA_7』(第79夜)、『成恵の世界』(第74夜)など、これまでここで言及してきた作品の主な宇宙人たちは、地球人的感覚として基本的に美少女で、自分が『ET』を未視聴のままなのは、恐らくはその辺に不純な理由がありそうだ。
 まぁ、それはそれとして、それでも宇宙人というテーマには惹かれる。“人間(地球人)と明らかに異なるもの”との出会い、という意味では、妖怪やロボットとも隣接するテーマだが、喚起されるイメージの時間的・空間的広がりは他の追随を許さないだろう。平たく云えば、スケールが大きな作品が多いのだ。この漫画においても多様な宇宙人が登場し、幾人かの地球人たちと個人的な関係が築かれていくが、作者の前作『幽☆遊☆白書』(第84夜)における妖怪と人間の関係に似通いながらも、地球上の観念が必ずしも通用しない宇宙人たちとの関わりは、前作に引き続いての打ち沈んだ画風との相乗効果で、やはり一段上の広がりを感じさせる。
 もちろん、彼らとの間には友情や友好もあるし、反対に悪意や敵意もある。ただ、地球人と宇宙人の善悪は必ずしも固定されていないし、1人の人物の中でさえそうなのだ。そのフラットさが、作品の自由な空気を醸成していると同時に、意表をつく展開に説得力を与えてもいる。「気まぐれでうそつき」とは、連載中の作者の次作『HUNTER×HUNTER』におけるヒソカの「オーラ別性格分析 変化系」の言葉だが、本作の各エピソードの展開はまさにその通りだ(かなりの確率で作者は変化系だと思う)。
 そうした展開によって、地球人と宇宙人たちとの出会い交わっていく様が、ぽっかりと描かれる。異文明間の接触には摩擦や差別や色々の面倒ごとが付き物と思うが、それらをすっ飛ばしての、この“ぽっかり”具合が、この漫画の何とも云えないいい味と云えるだろう。

幾つかの偏愛
 主題と物語から立ち上がってくる広大さを、脇で固めてアクセントを付与するのが、細かな設定へのこだわりだ。主要な登場人物や出身星の名前が国内外のSF・推理作家の名前のもじりであることは序の口で、文字情報のナレーションとして説明される異星人の種族の生態や婚姻・生殖方法、それに付随する宿業などは、読むだけで百科事典的な快感を感じる。こうした種族についての設定は、『HUNTER×HUNTER』のキメラ=アント編でも変奏されている辺り、収集癖のある作者お気に入りの要素なのだろう。
 こだわりは他にもみられる。やはりこれも前後の作品に通底するが、やはり作者が愛して止まないTVゲームへの愛だ。本作では作画レベルでの格闘ゲーム的な描写に加え、RPG的要素を持ったエピソードが登場する。キャラクターごとの属性や呪文をいちいち説明するなど余念がない。
 さらに本作独特なのが、作者の出身地である山形への郷土愛だろう。宇宙人が登場する物語は枚挙に暇が無いが、これほど明確に、舞台が地方都市だということを念頭に置いて創られたものがあっただろうか。一応の主人公と云える雪隆が野球部であることも、作者が中学時代に野球部だったことによるのだろう。そうしたことを把握して改めて本作を見渡すと、人知れず浸透しながら、その土地を愛し敬意を払う異星人たちの姿は、作者が愛着をもって郷土の未来を幻視した結果ではないかと思える。
 こうしたベクトルの違う偏愛が、宇宙人と地球人類との遭遇譚に組み込まれた本作のオリジナリティは比類のないレベルだと思う。分量的にやや小ぶりではあるが、満足のいく一作だ。

*書誌情報*
 通常版は絶版だが、古書で入手容易と思われる。
☆通常版…B6判(17.4 x 11.4cm)、全3巻。絶版(市場在庫はあり?)。
☆文庫版…文庫判(15.6 x 11.2cm)、全2巻。
☆コンビニ版…B6判(18 x 13cm)、全2巻。絶版。

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